バーチャレクス・コンサルティング株式会社は、コンタクトセンター向け次世代AIエージェント「CC-ExpAI(コンタクトセンター・エキスパートAI)」のチャット版βの提供を開始しました。
CC-ExpAI開発の背景とAIが解消できていない「2つの壁」
コンタクトセンター領域では「顧客応対の80%はAIで担える」と謳われてきました。しかし、同社が実施した調査(2026年3月)では、顧客対応領域でAIを高度に活用し大部分の自動化を実現できている企業はわずか4.5%にとどまっていました。同社は「AI回答の精度・品質への不信感」が自動化拡大を阻む壁になっていると分析しています。
同社はこの停滞の背景に、コンタクトセンター業務特有の構造的な課題が2つあると指摘します。ひとつ目は「入り口の壁」です。問い合わせが発生した時点で、その内容が「定型」か「複雑」かを事前に判別することは不可能であり、従来のルール・シナリオベースのAIでは複雑な問い合わせや感情的な応対に十分対応できず、有人チャネルへのエスカレーションが生じてきました。ふたつ目は「判断の壁」です。顧客の曖昧な表現や感情的な訴え、複数意図が混在する問い合わせに対し、AIが状況を判断して、対話を通じて、解決へ導くことは、従来技術では困難でした。
CC-ExpAIが実装する2つの核心能力
「CC-ExpAI」は、バーチャレクスグループが25年以上にわたりコンタクトセンター現場で培ってきた知見をもとに、通話録音や応対履歴から熟練オペレーター特有の思考プロセスと行動様式を抽出・移植する特許出願中の独自の技術を採用しています。「何を知っているか(ナレッジの量)」だけではなく「どう考え、どう動くか(熟練者の思考と振る舞い)」を設計の核に置いている点が最大の特長です。
実装される核心能力は次の2点です。
- 問いの確定力:顧客の曖昧な発言や複数の用件が絡み合った問い合わせから、対話を通じて「本当のお困りごと」を特定する
- 伝達の最適化力:顧客の感情・理解度・対話のフェーズをリアルタイムに把握し、「感情鎮静モード」「納得深化モード」など9つの対話モードを動的に切り替えて応答する
「マニュアル通りに振る舞う新人」と表現される従来AIに対し、CC-ExpAIは「状況を自ら判断して解決に導く自走する同僚」として位置づけられています。問い合わせの複雑さ・リスク・感情の度合いを判定し、自ら解決にあたるかルールベースボットや人間オペレーターへ差配するかを即座に特定する「司令塔」機能も備えています。同社によれば、理想的な無人化にはこうした司令塔機能が必要だと説明されています。
CC-ExpAIの四段階アプローチによる導入ステップ
CC-ExpAIの導入には、大規模な初期投資による失敗リスクを回避するため、各ステップにGo/No-Goを判断できる「四段階アプローチ」が用意されています。主なステップは次の通りです。
- STEP 1 簡易PoC:ヒアリングとデモ環境確認を数時間程度で実施
- STEP 2 価値検証(PoV):実データで完結率向上の効果を定量検証
- STEP 3 パイロット導入:限定業務での実業務運用と本番向け最終調整
- STEP 4 本番導入・継続改善:段階的に対応範囲を拡大し、バーチャレクスが伴走
今回のチャット版βリリースに合わせ、実際の運用環境でAIエージェントを試験導入し実運用化を共同推進する「先行導入企業」の募集も開始しています。なお、先行導入企業は約1,000名以上の規模を想定しています。電話応対を想定した音声チャネル対応版の開発・検証も進めており、順次提供が予定されています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | バーチャレクス・コンサルティング株式会社 |
| 代表取締役社長 | 丸山勇人氏 |
| 本社 | 東京都港区 |
| サービス名 | CC-ExpAI(コンタクトセンター・エキスパートAI) |
| 対象 | コンタクトセンター向け次世代AIエージェント |
| リリース形態 | チャット版β(音声対応版は開発・検証中) |
| 核心技術 | 熟練オペレーターの思考プロセス・行動様式をAIへ実装する独自の技術(特許出願中) |
| 対話モード数 | 9つ |
| 導入ステップ | 四段階アプローチ(簡易PoC〜本番導入) |
| 展示会デモ | コールセンター/CRMデモ&コンファレンス2026 in大阪(2026年5月27日(水)・28日(木)、マイドームおおさか) |
| グループ上場 | 東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場)、2016年6月 |
trends編集部の一言
顧客対応領域でAIを高度に活用できている企業がわずか4.5%という数字は、インパクトがあります。「80%はAIで担える」という触れ込みと現実の大きな乖離は、マーケティングの現場でも他人事ではなく、チャットボットや自動応答ツールを導入しても、結局は有人対応に切り替わるケースを繰り返してきた企業は多いのではないでしょうか。
マーケティングの文脈に置き換えると、「定型の問い合わせはAIで、複雑なものは人で」という分業設計そのものの限界が指摘され始めている状況とも読み取れます。CC-ExpAIが「入り口の壁」と「判断の壁」を単一システムで同時に解消しようとする設計は、その課題への一つの応答として、注目しておく価値がありそうです。
特許出願中の独自の技術で熟練者の思考プロセスをAIへ移植するアプローチは、ナレッジベースの拡充とは異なる方向性であり、業界全体としての次の一手として、議論が広がりそうです。四段階アプローチで初期リスクを抑えた導入設計にしている点も、業界全体としての意思決定コスト低減に向けた動きとして注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「バーチャレクス、熟練者の“思考と振る舞い”を実装したコンタクトセンター向け次世代AIエージェント「CC-ExpAI」チャット版βを公開 | バーチャレクス・コンサルティング株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000000699.html, (参照 26-05-23).
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