カラクリ株式会社は2026年4月、三井ダイレクト損害保険株式会社のお客さまセンター部にボイスエージェント「KARAKURI voice agent」を提供し、本格稼働を開始しました。
三井ダイレクト損保におけるログイン問い合わせ急増とデジタルデバイドという2つの課題
契約件数100万件を突破した三井ダイレクト損保では、お客さまとの月間総接点数が約8万〜9万件にのぼります。そのうち約65%(月5万〜6万件)を電話チャネルが占めており、電話応対体制の強化が急務の状態でした。
2024年7月のウェブサイトリニューアルによるパスワード要件変更の際、ログインに関する問い合わせが2〜3倍に急増しました。当時のログイン関連の問い合わせは月約5,000件に達し、1件あたりの平均応対時間は10分に及んでいます。さらに、2026年9月に予定されている二段階認証(2FA)の本格導入により、入電数のさらなる増加が見込まれる状況です。
応対現場では、お客さま層の特性に応じた丁寧なサポートも求められています。ログインに関する問い合わせの対象となるお客さまは平均年齢が61歳、最頻値が72歳です。
スマートフォンの操作に不慣れなお客さまにとって電話は最も安心できる相談手段であり、ご案内が丁寧になるほど1通話あたりの応対時間が長くなる傾向にありました。三井ダイレクト損保は、入電数増加への備えとすべてのお客さまへのデジタルシフト支援という2つの課題を解決するため、カラクリのボイスエージェント導入を決定しました。
KARAKURI voice agentの特徴として挙げられる技術的な強み
「KARAKURI voice agent」は、ハルシネーションリスクの低減と音声品質の滑らかさが特徴として挙げられています。回答精度の担保に寄与しているのが、カラクリのRAG(検索拡張生成)アーキテクチャです。三井ダイレクト損保が「KARAKURI chatbot」の運用を通じて長年整備してきたデータをナレッジソースとして参照し、回答範囲を確認済みの社内情報に限定することによって、誤情報を音声で案内するリスクを構造的に低く抑えています。
主な特徴は、以下の3点です。
- RAG(検索拡張生成)による回答精度の担保
- speech to speech方式による自然な音声対話
- 途中発話・話題の脱線に対応するリカバリー能力
speech to speech方式はテキスト変換を介さずに音声で直接入出力を処理します。顧客の発話を文脈ごと把握し、途中で「ちょっと待って」と言えば待機し、話が脱線しても会話の流れを自然に戻す設計です。従来のシナリオ型ボイスボットで課題とされていた自然な会話への対応を目指した構造と言えます。
KARAKURI voice agentの導入概要と構成
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 導入先 | 三井ダイレクト損害保険株式会社 お客さまセンター部 |
| 提供元 | カラクリ株式会社 |
| サービス名 | KARAKURI voice agent |
| 本格稼働 | 2026年4月 |
| 対応内容 | マイページへのログイン問い合わせ(24時間365日) |
| 営業時間外の問い合わせ解決率 | 52.7%(営業時間外・2026年5月時点) |
| 自動解決率目標 | 60〜70% |
| 稼働後苦情件数 | 0件(2026年5月時点) |
| 設立 | 2016年10月3日 |
| 所在地 | 東京都中央区築地2-7-3 Camel 築地 II |
| URL | https://about.karakuri.ai/ |
三井ダイレクト損保 和田 英典氏のコメント
お客さまセンター部 品質・業務グループ グループマネージャーの和田 英典氏は、導入の経緯について、次のように述べています。「お客さまがマイページの入口に立っているのに入れない——その状況をなんとかしたかったのが、すべての出発点でした」。カラクリを選んだ決め手として、音声の滑らかさ、ハルシネーションリスクの低さ、そして長年の関係から業務を一から説明しなくていいという安心感の3点を挙げました。
和田 英典氏は苦情ゼロの結果についても言及しています。IVRを経ずに直接AIへ繋ぐ設計を採用したため、ある程度の苦情を覚悟していたとのことです。高齢のお客さまでも違和感なく会話してくださっており、「カスタマーサポートにAIを導入する際に顧客体験を下げては意味がない——品質がそこまで到達しているからこそ踏み切れた」と語っています。
詳細インタビューは、こちらから参照できます。
trends編集部の一言
稼働後約2ヶ月(2026年5月時点)で営業時間外の問い合わせ解決率が52.7%(前年同期比527%)に達し、150社以上への導入実績を持つカラクリのボイスエージェントが、夜間・休日に「つながらない」状態だったチャネルをゼロから機能させた点はインパクトが大きいです。業界全体としては、AIボイスエージェントの導入はまだ「苦情リスクへの不安」が先行しやすい局面にありますが、今回の苦情0件という実績はその懸念に対する一つの回答になりそうです。
平均年齢61歳・最頻値72歳という顧客層でも拒否反応が少ないという点は、マーケティング業界の文脈に置き換えると、デジタル接点の設計において「音声」が持つポテンシャルを改めて見直す材料になるのではないでしょうか。チャットボットやアプリ誘導が難しい層へのアプローチとして、ボイスエージェントは今後のデジタルシフトにおける有力な選択肢として業界全体で注目されていきそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「三井ダイレクト損保、コールセンターAIで「デジタルデバイド解消」へ苦情ゼロ・夜間の問い合わせ52.7%を自動完結 | カラクリ株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000025663.html, (参照 26-06-19).
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