株式会社ギブリーは、株式会社ニトリと共に推進してきた生成AIを活用した「コンタクトセンター改革プロジェクト」の成果を発表しました。
ニトリのコンタクトセンター改革プロジェクトの概要
株式会社ニトリは、人とシステムの役割を再構築し、顧客対応の満足度を最大化することを目的に、株式会社ギブリーと共同で2024年5月より「コンタクトセンター改革プロジェクト」を推進してきました。生成AI技術と次世代ナレッジベースを活用し、24時間・365日(有人対応できない時間帯でも)解決できる未来型のカスタマーサービス構築を目指すプロジェクトです。株式会社ギブリーは、構想設計から基盤構築・業務オペレーションの設計を担当しています。
株式会社ギブリーは、社外(お客様)向けのFAQやチャットボット、ビジュアルIVR、メール・問い合わせフォームの回答参照データとなるQ&Aや商品データベースを整備しました。あわせて、社内(従業員)向けのQ&A・業務ルールを一元管理する「ナレッジベース」を構築しています。従来分散していたナレッジを整理・統合したことで、一度の更新で複数チャネルの回答を変更できる状態です。
生成AIチャットボットが対応する2つの問い合わせ領域
生成AIチャットボットは現在、「ニトリネット(購入・サービス)」および「会員・ログイン関連」の問い合わせを対象に、「ロングテール問合せ」と「商品問合せ」の2つの領域に対応しています。RAGで使用されるナレッジをフォルダ階層化やタグ付けによって適切に制御し、ハルシネーション(生成AIが事実に基づかない不正確な回答を生成する現象)リスクを抑制する設計が採用されました。
ロングテール問合せ(発生頻度は低いものの、FAQでは対応しきれない多様な問い合わせ)への対応では、お客様がチャットボットを通じて気軽に質問できる環境を整備しました。ナレッジを一度整備するだけで、以降は生成AIが回答できる仕組みとなっています。
商品問い合わせへの対応では、ニトリネットで表示している商品の商品コードを自動で取得する仕組みです。取得した商品コードをもとに、商品マスタ・カテゴリナレッジ・共通ナレッジの順にナレッジを参照することによって、特定商品から一般的な問い合わせまでを幅広くカバーしています。
AIによる事前振り分け機能は、ロングテール問合せ領域ではクレーム対応などの生成AIによる回答が適切ではない問い合わせをAIが事前に判別して適切な窓口へ誘導する設計です。商品問合せ領域では、商品提案などの対応が難しい問い合わせについて同様に誘導します。
また、回答ログの解析によって、お客様の質問から不明点を洗い出し、ニトリネットのUI・UXの改善にも活用されました。
コンタクトセンター改革プロジェクトの主な成果
一連の取り組みにより、以下の成果が報告されています。
- 電話・メール・有人チャットの有人化対応件数を前年比10%削減
- 生成AIチャットボットによる24時間365日の問い合わせ対応を実現
- 約30人分の業務工数を削減し高付加価値業務へ再配置
- お客様の自由入力の質問を基にニトリネットのUI・UXを改善
有人対応件数の削減と同時に創出されたリソースを、遠隔接客などの高付加価値業務へ再配置したことで、お客様の利便性向上と業務生産性向上の両立を実現したとのことです。
夜間を含め、お客様が自己解決できる状態を実現したとしています。
ギブリー・ニトリ両社のプロジェクト担当者コメント
株式会社ニトリ 札幌コールセンターマネジャー 岩谷 博通氏は、「ニトリはお客様に『お、ねだん以上。』の価値を提供するため、24時間365日対応できる体制にまた一歩近づくことができました」と述べています。
調べて回答するといった簡単な問い合わせはシステムで回答できるようになった反面、人間は高付加価値を提供する仕事の割合が増えてきたと語っています。次のステップでは、人間が対応すべき業務の効率化に向けた仕組みづくりへの支援を期待するとしました。
株式会社ギブリー 取締役CMO 兼 マーケティングDX部門COO 吉田 将輝氏は、「生成AIとナレッジマネジメントを組み合わせることで、従業員の生産性向上と顧客満足度向上を両立し、人とAIがそれぞれの強みを活かせる顧客対応を実現できると考えています」とコメントしました。今後もニトリと共に、デジタル技術を最大限に活用した新しい顧客体験の創出を進めるとしています。
ニトリのコンタクトセンター改革プロジェクト概要一覧
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 推進企業 | 株式会社ギブリー/株式会社ニトリ |
| プロジェクト名 | コンタクトセンター改革プロジェクト |
| 開始時期 | 2024年5月 |
| 対象領域 | ロングテール問合せ/商品問合せ |
| 主な成果 | 約30人分の業務工数削減・有人化対応件数前年比10%削減 |
| 対応商品数 | 16万点以上(ニトリネット) |
| 対応時間 | 24時間365日 |
| 株式会社ギブリー所在地 | 東京都渋谷区南平台町15-13 帝都渋谷ビル8F |
| 株式会社ギブリー設立 | 2009年4月28日 |
| 株式会社ギブリー資本金 | 50,000,000円 |
| 株式会社ニトリ設立 | 1972年3月 |
| 株式会社ニトリURL | https://www.nitori.co.jp/ |
| 株式会社ギブリーURL | https://givery.co.jp/ |
trends編集部の一言
約30人分の業務工数を削減しつつ、そのリソースを高付加価値業務へ再配置したという成果は、単なる削減効果を超えた設計です。業界全体としては、生成AIの導入効果を「削減」だけで語りがちですが、このプロジェクトは削減したリソースの行き先まで設計に組み込んでいる点が際立っています。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、チャットボットや生成AI回答の導入は広がりつつあるものの、ナレッジの分散や更新コストが課題として実務上の障壁になりやすい傾向があります。一度のナレッジ整備で複数チャネルの回答を一括更新できる仕組みは、コンテンツ運用の効率化という観点から業界横断的に注目される動きです。
16万点以上の商品を抱えながら商品ごとのQ&Aを個別整備せずに対応できた点は、多品種の商品・サービスを扱う企業における問い合わせ対応の取り組みとして、業界全体の動向としても示唆を含む事例です。
References
- ^ PR TIMES. 「ニトリの「人と生成AIの協働によるコンタクトセンター改革」、プロジェクト成果を発表 | 株式会社ギブリーのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000395.000002454.html, (参照 26-07-07).
