クラウド各社が国産クラウドとソブリンクラウドの選定材料を公表、情報システム部門の比較軸が増える
公開:
国産クラウドやソブリンクラウドを調達の候補に挙げたとき、社内を説得する材料が足りずに手が止まっていないでしょうか。選定の場で問われるのはセキュリティやコスト、安定性といった実務の要件であり、国内でデータを管理できるという意義を示すにとどまると、決裁の根拠にはなりにくいのが実情です。
この記事では、国産クラウドとソブリンクラウドの選定に使える判断材料を、政府の調達制度への登録や第三者機関による評価、利用者側の理解度という面から詳しく解説します。国産クラウドの選定と調達を担当する情報システム部門の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:株式会社ネットアシスト
- 出典の最終掲載:2026.09.28
SOURCESこの記事がまとめた発表

画像:株式会社ネットアシストの発表資料より(PR TIMES)
[1] 国産クラウドを選ぶ意義に共感する人は7割超、理解している人は2割弱 --- セキュ リティ・コスト・安定性で選ぶ国産クラウド選定視点を公開
株式会社ネットアシスト / 掲載 2026.09.28
発表を見る
[2] Cloudera、2026年IDC MarketScapeのアジア太平洋地域ソブリンAIプラットフォーム部門で「リーダー 」に選出
掲載 2026.09.28
発表を見る
[3] IIJクラウドデータプラットフォームサービスなど3サービスが、政 府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に登録
掲載 2026.09.28
発表を見る
[4] IIJの3サービス、デジタル庁の「デジタルマーケットプレイス」に 登録
掲載 2026.09.28
発表を見る
目次
国産クラウドへの共感が選定に結びつかない実態
国産クラウドを選ぶ意義への賛同と、実際の選定で使われる基準の間には開きがあります。調査で示された状況を、2つの面から確かめます。
- 国産クラウドへの共感は7割超で理解は2割弱
- 選定基準はセキュリティとコストが上位
共感の広がりと理解の深さには差があり、基準の順位にも同じ傾向が出ていました。それぞれの数字を追うと、社内で示すべき材料が見えてきます。
国産クラウドへの共感は7割超で理解は2割弱
ネットアシストは、クラウドサーバーの選定や導入に関わる会社員・役員500人への調査をまとめた資料を公開しました。国産クラウドを認知している419人のうち72〜74%が、国内法制への対応や国内でのデータ管理、海外大手に依存しない選択肢を持つ意義に共感したと説明しています。[1]
調査から分かる国産クラウドの認知と理解の状況は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 母数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 何らかの形で知っている | ― | 83.8% |
| 理解 | 特徴やメリットまで分かる | ― | 19.6% |
| 共感 | 国産を選ぶ意義に賛同 | 国産クラウド認知者419人 | 72〜74% |
| 信頼 | 国産事業者の採択で信頼性向上 | ガバメントクラウド認知者354人 | 73.8% |
特徴やメリットまで理解している人は2割弱にとどまりました。ただし、ガバメントクラウドを知る354人のうち73.8%は、国産事業者の採択によって信頼性が高まると答えています。
選定基準はセキュリティとコストが上位
ネットアシストの調査では、クラウドの選定で重視する基準も尋ねました。上位に挙がったのはセキュリティやコスト、安定性で、国産クラウド事業者であることを挙げた割合は12.4%でした。[1]
選定で重視されている基準の割合は、以下の通りです。
| 基準 | 割合 |
|---|---|
| セキュリティ | 40.2% |
| コスト | 39.2% |
| 安定性 | 34.6% |
| 国産クラウド事業者 | 12.4% |
国産であること自体を決め手に挙げた担当者は、1割強にとどまっています。ネットアシストは、共感を選択につなげるには実務の要件で判断できる材料と、導入から運用までを支えるパートナーの存在が欠かせないと説明しています。
クラウドの導入でパートナー企業を利用したい層は59.2%でした。運用を任せる相手を決められるかどうかも、選定の検討に含まれます。
国産クラウドの調達で使う政府の登録制度
IIJは、政府と行政機関がそれぞれ使う登録の枠組みに、自社サービスが登録されたと公表しました。
- ISMAPに登録されたIIJの3サービス
- デジタル庁のDMPに登録された3サービス
登録の意味と対象になるサービスは、制度ごとに異なります。順に確かめておくと、候補を絞る段階での迷いが減ります。
ISMAPに登録されたIIJの3サービス
IIJは、3つのサービスがISMAPのクラウドサービスリストに登録されたと公表しました。ISMAPは、政府が求めるセキュリティ要求に基づいてクラウドサービスを評価し、基準を満たしたサービスを登録する制度です。[3]
登録された3つのサービスと登録日は、以下の通りです。
| サービス | 登録日 |
|---|---|
| IIJクラウドデータプラットフォームサービス | 2026年8月28日 |
| IIJマネージドデータベースサービス | 2026年8月28日 |
| IIJセキュアMXサービス for Government | 2026年4月24日 |
政府機関等は原則として、ISMAPのリストに登録されたサービスの中から調達を行います。官公庁向けの案件で候補に残れるかどうかは、登録の有無に左右されます。
デジタル庁のDMPに登録された3サービス
IIJは、3つのサービスがデジタル庁の運営するデジタルマーケットプレイス(DMP)に登録されたと公表しました。DMPは、行政機関向けにクラウドソフトウェア(SaaS)を調達するためのプラットフォームです。[4]
DMPに登録された3つのサービスの内容は、以下の通りです。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| IIJ IDサービス | 認証の統合と多要素認証 |
| IIJ IDガバナンス管理サービス | アカウントと権限の一元管理 |
| IIJクラウドデータプラットフォームサービス | データの収集や加工と連携 |
IIJは、行政機関や地方公共団体がDMP上でセキュリティ情報や機能、価格などを比較しながら調達手続きを進められると説明しています。価格や機能を同じ条件で見比べられる点は、候補を絞る初期の作業で役に立ちます。
国産クラウド選定で見るソブリンAIの評価
ソブリンクラウドの選定で見落としやすいのが、事業者の説明以外から得られる評価です。調査会社による位置づけと、利用する企業が直面している課題を確かめます。
- Clouderaが選ばれたソブリンAI評価
- AI導入を止めるデータガバナンス課題
第三者による評価と利用側の調査は、データの置き場所と統制という同じ論点に触れています。判断の軸として使えるのは、環境をまたぐ展開と監査への対応の2点でした。
Clouderaが選ばれたソブリンAI評価
Cloudera株式会社は、IDC MarketScapeのアジア太平洋地域ソブリンAIプラットフォーム部門でリーダーに選出されたと発表しました。評価の対象は、プライベートやハイブリッド、エッジ、エアギャップを含む環境で、ソブリンAIのワークロードを安全に扱える能力です。[2]
Clouderaが監査への対応として挙げた機能は、以下の通りです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| アクセス制御 | Apache Rangerを利用 |
| データリネージ | Apache Atlasを利用 |
| メタデータ収集 | Cloudera Data Lineage |
Clouderaは、ソースデータからデプロイしたモデルまでを可視化し、厳格な監査要件に対応できると説明しています。機密データを企業の管理領域の外へ持ち出さずに、構築したモデルを別の環境へ展開できるとしています。
AI導入を止めるデータガバナンス課題
Clouderaが最近実施した調査では、アジア太平洋地域の企業の約92%が、データガバナンスやコンプライアンス上の問題を理由にAIプロジェクトを延期または中止したと回答しました。データへの統制を取り戻すため、63%はAIのワークロードをプライベートクラウドまたはオンプレミス環境へ移しています。[2]
Clouderaの発表から読み取れる論点は、以下の通りです。
- 規制を理由としたAI計画の停止
- 自社の管理下へ戻す移行
- 監査に耐える履歴の可視化
データの置き場所と統制の方法は、AIの計画そのものを左右する条件です。ソブリンを掲げる基盤を見るときは、監査で求められる履歴の残り方まで確かめておくと迷いが減ります。
国産クラウド選定で確認するソブリン要件
国産クラウドやソブリンクラウドの選定に使える材料として、ISMAPやDMPへの登録、ソブリンAI部門での選出、調査で示された理解の状況が挙がっています。
選定で確認したい観点と、確かめる内容は、以下の通りです。[1][2][3][4]
| 観点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 政府調達の可否 | ISMAPリストへの登録 |
| 行政向けの比較 | DMPでの価格と機能 |
| 第三者の評価 | ソブリンAI部門での選出 |
| 社内の理解 | 特徴の理解は2割弱 |
| 運用の支え | パートナー利用は59.2% |
IIJクラウドデータプラットフォームサービスのように、ISMAPとDMPの両方に登録されたサービスもあります。
References
- ^ PR TIMES. 「国産クラウドを選ぶ意義に共感する人は7割超、理解している人は2割弱 --- セキュ リティ・コスト・安定性で選ぶ国産クラウド選定視点を公開」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000173071.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「Cloudera、2026年IDC MarketScapeのアジア太平洋地域ソブリンAIプラットフォーム部門で「リーダー 」に選出」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000124537.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「IIJクラウドデータプラットフォームサービスなど3サービスが、政 府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に登録」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000165540.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「IIJの3サービス、デジタル庁の「デジタルマーケットプレイス」に 登録」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000165540.html, (参照 26-09-30).







