企業が基幹システムのクラウド移行を進める事例、情報システム部門がAI活用の基盤整備をめざす
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人事給与や財務会計を支える基幹システムのクラウド移行を検討する際、他社の事例を集めても自社の計画と比べにくいと感じていないでしょうか。移行の範囲や業務を止める期間、AI活用の位置づけは事例ごとに異なるため、観点を分けて整理すると自社に当てはめやすくなります。
この記事では、人事給与や財務会計のシステムをオンプレミスからクラウドへ移す事例と、SAPの稼働基盤をクラウド間で移した事例に加え、移行先となるSaaSの提供形態まで詳しく解説します。基幹システムのクラウド移行を検討している情報システム部門や経営企画、人事・経理の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:日本電波工業株式会社、NECネクサソリューションズ株式会社 ほか1件
- 出典の最終掲載:2026.10.06
SOURCESこの記事がまとめた発表

画像:日本電波工業株式会社の発表資料より(PR TIMES)
[1] 日本電波工業が「SuperStream-NX Cloud」への移行を週末2日間で完了 人事 給与基盤のクラウド化と運用負荷の軽減を実現
日本電波工業株式会社 / 掲載 2026.09.25
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[2] 基幹システム「RISE with SAP」の稼働基盤をAWSから Google Cloud へ移行完了
掲載 2026.09.30
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[3] クラウド環境で企業独自の業務プロセスに対応する基幹業務シス テム「EXPLANNER/Ax SaaS」販売開始
NECネクサソリューションズ株式会社 / 掲載 2026.10.05
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[4] 矢崎総業、財務業務の変革にOracle Fusion Cloud Applicationsを採用
日本オラクル株式会社 / 掲載 2026.10.06
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目次
オンプレミスから脱却するクラウド移行の事例
最初に取り上げるのは、オンプレミスで運用してきた業務システムを、クラウドで提供される製品へ移す形のクラウド移行です。人事給与と財務会計の事例は、以下の通りです。
- 人事給与を週末2日間で移した日本電波工業
- AI活用に向け財務会計を移す矢崎総業
移す業務の領域に加えて、移行を決めた理由や発表時点の進み具合も事例ごとに異なるため、自社の状況に近い事例から読み進めてください。
人事給与を週末2日間で移した日本電波工業
キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)によると、日本電波工業は人事給与システムをオンプレミス環境から「SuperStream-NX Cloud」へ移しました。移行は週末の2日間で終わり、期間中も業務への影響を抑えながら運用を続けたとしています。[1]
同社は2014年から「SuperStream」で独自の人事・給与制度を運用してきましたが、法改正に伴うパッチ適用やサーバの運用管理の負担を減らす必要がありました。製品選びで重視した点と評価した点は、以下の通りです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 重視した点 | 独自の人事・給与制度への対応力 |
| 重視した点 | 導入・運用コストの最適化 |
| 評価した点 | 標準機能での柔軟な運用 |
| 評価した点 | SuperStreamの運用実績 |
| 評価した点 | 長年のサポート体制 |
移行後は、サーバ保守やバックアップ作業の負担が軽くなったとキヤノンITSは説明しています。SuperStream-NX Cloudでは、バージョンアップやパッチ適用、バックアップをキヤノンITSが受け持ちます。
AI活用に向け財務会計を移す矢崎総業
日本オラクルによると、矢崎総業は財務会計システムの刷新に「Oracle Fusion Cloud Applications」を採用しました。グローバルなデータ分析とAIの活用を目的に、経営判断を支えるデータ基盤を整えるとしています。[4]
ワイヤーハーネスを主力とする同社は、事業環境の変化に応じて自動化や効率化を進められるよう、オンプレミスの財務会計システムから拡張性の高いクラウドへ移る必要がありました。AI・デジタル室長と情報システム統轄室長を兼ねる丹下博氏が挙げた採用の理由と、新しい基盤で取り組む内容は以下の通りです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 評価した点 | 既存の財務会計体系との親和性 |
| 評価した点 | 将来のAI活用を見据えたデータ基盤 |
| 取り組む内容 | 財務会計業務の効率と生産性の向上 |
| 取り組む内容 | コスト最適化と内部統制の強化 |
丹下氏は、グローバルに分散する財務会計データを集約・可視化し、分析力を高めることが変化に対応した経営判断につながるとしています。矢崎総業はOracle Fusion Cloud ERPで業務領域の将来の拡張にも対応できる基盤を築き、財務会計基盤の刷新を起点にデータ活用を進めるとしています。
SAPの稼働基盤を替えるクラウド移行
次に取り上げるのは、業務システムには手を加えず、システムが動くクラウド基盤のみを別の事業者へ移す形のクラウド移行です。丸紅I-DIGIOグループが取り組んだ移行前の準備と本番切り替えは、以下の通りです。
- 9領域を可視化した移行前の準備
- 業務停止を1営業日に抑えた本番切り替え
準備と本番切り替えを分けて見ると、基盤のみを替える移行で時間や体制を割いた工程を具体的に確かめられます。
9領域を可視化した移行前の準備
丸紅ITソリューションズは、グループ会社の丸紅情報システムズが使う「RISE with SAP」の稼働基盤を、AWSからGoogle Cloudへ移しました。2026年9月に完了したプロジェクトの期間は約5ヶ月で、要件整理から本番切り替えまでを同社が担いました。[2]
丸紅I-DIGIOグループは、稼働先をGoogle Cloudへ変えることによって、将来のデータ分析基盤や生成AIサービスと連携しやすい体制をめざしたとしています。移行に先立って現行環境を可視化した領域と、RISE with SAPの環境で生じる制約は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 可視化した領域 | 契約スコープ・システム構成 |
| 可視化した領域 | 外部インターフェース・運用監視 |
| 可視化した領域 | データ量など計9領域 |
| インフラなどの作業 | SAP社へのサービス依頼(SR) |
| データの転送 | 基盤間で直接転送できない |
移行方式には、実績があり切り戻しの手順も確立しているSAP社の標準ツール「SWPM」によるシステムコピーを採用しました。SRの起票と進行はSAP社の窓口担当と連携して管理し、回線とファイアウォールの切り替えはグループ会社が担いました。
業務停止を1営業日に抑えた本番切り替え
丸紅ITソリューションズは、開発機と検証機で移行リハーサルを2度行い、業務を止める時間を事前に実測しています。本番の切り替えには秋の連休期間を使い、移行作業3日間と後処理1日間で終えて、業務の停止を1営業日にとどめました。[2]
業務への影響を抑えるために、変えなかった部分と版数を更新した部分は以下の通りです。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 変更しない | SAPアプリケーションのバージョン |
| 変更しない | データベース |
| 版数を更新 | OS・分析基盤 |
アプリケーションとデータベースを据え置いて基盤のみを刷新したことによって、業務への影響を最小限に抑えたと同社は説明しています。
丸紅I-DIGIOホールディングス情報システム部の古塩英之部長は、今回の移行によって将来のデータ分析や生成AI活用に向けた基盤を構築できたと述べています。あわせて同グループは、Google CloudのAI・データ活用サービスと基幹データの連携に先行して取り組む方針です。
EXPLANNER/Ax SaaSへのクラウド移行
NECネクサソリューションズは、上場企業から中堅企業に向けた基幹業務システム「EXPLANNER/Ax SaaS」の販売を2026年10月に始めました。「会計」と「給与」の各サービスは、2027年1月から提供する予定です。[3]
同社は、企業独自の業務プロセスを保つアドオン開発がクラウド環境で制限される点と、セキュリティ脅威への不安を、基幹システムのクラウド移行の障壁に挙げています。そのため、オンプレミス版の「EXPLANNER/Ax」で培った機能と柔軟性を保ちながら、運用負荷を軽くするサービスとして提供します。
専用基盤にはOracle Cloud Infrastructure(OCI)を採用しており、提供形態と保守の内容は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Public型 | マルチテナント・標準機能 |
| Public型の料金 | 1ユーザー月額9.8万円から |
| Private型 | シングルテナント・アドオン可 |
| 保守・法改正対応 | サービス側で実施 |
| 基盤の設計 | 日本オラクルが参画 |
AIについては、生成AIや検索拡張生成(RAG)を支えるベクトル検索機能を持つOracle Databaseを、将来のAIビジネスの拡大を見据えて採用しました。なお、Public型の料金は発表時点の金額です。
基幹システムのクラウド移行を判断する観点
事例を自社の計画に当てはめる際は、移行の範囲や業務の停止、保守の受け持ち、AI活用の位置づけを観点ごとに確かめると判断しやすくなります。事例から分かることと自社で確かめることは、以下の通りです。[1][2][3][4]
| 観点 | 事例から分かること | 自社で確かめること |
|---|---|---|
| 移行の範囲 | 業務システムごとか基盤のみか | 業務システムを替える必要性 |
| 業務の停止 | 週末や連休に切り替えた例 | 止められる日程と長さ |
| 準備の進め方 | 現行環境の可視化とリハーサル | 影響範囲と停止時間の実測 |
| 独自の業務 | 標準機能での対応やアドオン可の型 | 独自制度やアドオンの量 |
| 保守の受け持ち | パッチ適用や法改正対応を提供側が担う | 社内に残る保守作業 |
| AI活用 | 目的に置く例と基盤の備えの例 | 移行の目的にAIを含める範囲 |
AI活用の位置づけには幅があり、矢崎総業は移行の目的にAIを置き、EXPLANNER/Ax SaaSは基盤側の備えとしてAIを示しています。丸紅I-DIGIOグループは基盤の移行を先に終え、AI・データ活用との連携をその後の取り組みに位置づけました。
日本電波工業が挙げた移行の理由は運用管理の負担軽減などで、AI技術の活用はキヤノンITSが今後の製品開発の方針として示しています。
References
- ^ PR TIMES. 「日本電波工業が「SuperStream-NX Cloud」への移行を週末2日間で完了 人事 給与基盤のクラウド化と運用負荷の軽減を実現」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001049.000001375.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「基幹システム「RISE with SAP」の稼働基盤をAWSから Google Cloud へ移行完了」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000078.000145332.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「クラウド環境で企業独自の業務プロセスに対応する基幹業務シス テム「EXPLANNER/Ax SaaS」販売開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000161.000104608.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「矢崎総業、財務業務の変革にOracle Fusion Cloud Applicationsを採用」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000499.000057729.html, (参照 26-10-07).














