AI活用の実態調査を各社が企業規模ごとに公表、DX推進担当者に人材面の課題が浮かぶ
公開:
自社のAI活用を進めるとき、他社の実態調査の数字をそのまま自社の目標にしてよいか迷うことはないでしょうか。調査ごとに対象の企業規模や業種、回答者の立場が異なるため、数字を比べる前に誰に聞いた調査なのかを確かめる必要があります。
この記事では、大企業や中小企業、小売・外食業界のAI活用について、戦略の策定状況から導入を阻む課題、人材育成の時間不足まで詳しく解説します。自社のAI活用戦略や人材育成を検討しているDX推進担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:株式会社アハハナ、サイボウズ株式会社
- 出典の最終掲載:2026.09.30
SOURCESこの記事がまとめた発表

画像:株式会社アハハナの発表資料より(PR TIMES)
[1] AI活用が進む一方、約6割が「人材育成の時間不足」を実感――マーケティング世界会議2027の来場者・関係者158名に調査
株式会社アハハナ / 掲載 2026.09.24
発表を見る

画像:発表資料より(PR TIMES)
[3] 〈2026年度第1回 中小企業経営実態調査〉政府が「日本AX」を掲げるなか、中小企業のAI活用に「理解から実践」への壁 AI活用への理解は66.5%、業務活用は36.9%にとどまる
掲載 2026.09.28
発表を見る

画像:サイボウズ株式会社の発表資料より(PR TIMES)
[4] サイボウズ「大企業におけるAI活用実態調査」第1弾を公開―大企業の63%がAI活用戦略を策定済み
サイボウズ株式会社 / 掲載 2026.09.30
発表を見る
目次
AI活用の実態調査ごとに異なる回答者層
AI活用の実態調査は、回答した企業の規模や回答者の立場によって、読み取れる内容が変わります。回答数は、サイボウズの大企業調査が551社、フォーバル GDXリサーチ研究所の中小企業調査が1,653人でした。[3][4]
各調査の対象と主な回答者、調査の時期は、以下の通りです。
| 調査主体 | 対象 | 主な回答者 | 調査時期 |
|---|---|---|---|
| サイボウズ | 従業員1,000人以上の企業 | 経営層、IT・DX部門 | 2026年7月 |
| フォーバル GDXリサーチ研究所 | 全国の中小企業 | 経営者 | 2026年6月 |
| Store Guide(プロガイド) | 小売・外食業界 | 業界で働く人 | 2026年9月 |
| アハハナ | マーケティング世界会議2027 | 経営者・代表、個人事業主など | 2026年9月 |
Store Guideの小売・外食業界の調査は各調査350名、アハハナの来場者調査は158名の回答をもとにしています。割合を比べる際は、回答者の立場を先に確かめておくと、大企業と小規模事業者の数字を取り違えずに済みます。[1][2]
AI活用の進み具合を企業規模で比べる
AI活用の進み具合は、大企業の調査が組織の推進状況を、中小企業の調査が経営者の理解と利用状況を尋ねているため、同じ物差しでは比べられない点に注意が必要です。企業規模ごとの状況は、以下の2つで確かめます。
- 大企業のAI活用戦略の策定状況
- 中小企業のAI業務利用の状況
大企業では戦略の有無と経営層の関わり方、中小企業では理解の深さと業務での利用が、それぞれ読み取れる軸です。
大企業のAI活用戦略の策定状況
サイボウズの調査では、AIを全社的に推進・活用している大企業が60%を占め、一部部門での活用や試験導入を含めると9割超が何らかの形で取り組んでいました。AI活用戦略は63%が何らかの形で策定済みで、内訳は以下の通りです。[4]
| 戦略の状況 | 割合 |
|---|---|
| 全社に共有されている | 37% |
| 全社に浸透している | 12% |
| 一部の担当者のみ把握 | 14% |
| 現在策定中 | 14% |
| 特にない | 17% |
経営層がAI活用を主導し意思決定している企業では90%が全社的に推進・活用していましたが、経営層がほぼ関与していない企業では23%でした。ただし、成果は「一部の業務で効果は出ているが全社には広がっていない」が31%で最多となり、組織全体の変革に直結している企業は21%です。
用途は「文書作成・メール作成・議事録作成」が83%で最も多く、今後の拡大領域には「業務自動化・プロセス自動化」を61%の企業が挙げました。
中小企業のAI業務利用の状況
フォーバル GDXリサーチ研究所の調査では、事業でのAI活用を理解している中小企業経営者が66.5%に達しました。理解度と活用状況の内訳は、以下の通りです。[3]
| 項目 | 割合 | 母数 |
|---|---|---|
| 深く理解し適用法も把握 | 22.7% | 回答者1,653人 |
| 概要のみ理解 | 43.8% | 回答者1,653人 |
| 既に業務で活用 | 36.9% | 理解している層1,099人 |
| 導入に向け検討・試験運用 | 20.1% | 理解している層1,099人 |
業務で活用している割合は理解している層を母数にしているため、回答全体に占める割合として読まないよう注意が必要です。さらに、深く理解している企業に限ると8割以上が既に業務で活用しており、理解の深さと利用状況の結び付きがうかがえます。
AIの活用・導入を検討している業務は「文書作成・要約・校正」が71.9%で最も多く、導入するつもりのない企業を除いた推進意向は83.2%が前向きでした。
AI活用の課題で最多となった回答
AI活用の課題は大企業や中小企業、小売・外食業界の調査で尋ねられていますが、最も多く選ばれた回答は調査によって異なりました。最多の回答を比べる対象は、以下の3つです。
- 大企業は使いこなせる人材の不足
- 中小企業は専門知識を持つ人材の不在
- 小売・外食は活用方法と始め方
大企業と中小企業では人材に関する回答が最多となり、小売・外食業界では活用の方法や始め方が最多でした。
大企業は使いこなせる人材の不足
サイボウズの調査では、AI活用の課題・不満として「使いこなせる人材が少ない」が49%で最も多く選ばれました。2位以下の回答は、以下の通りです。[4]
| 課題・不満 | 割合 |
|---|---|
| 回答精度・信頼性への不安 | 40% |
| セキュリティ上の懸念 | 37% |
| 社内データや業務コンテキストと未連携 | 34% |
サイボウズは、課題のうち内部要因を「人材」「ノウハウの蓄積」「費用対効果」の3点に集約できると分析しています。ただし、KPIを設定して定期的に測定・評価している企業は28%で、効果を数字で確かめる仕組みには企業間でばらつきがあります。
中小企業は専門知識を持つ人材の不在
フォーバル GDXリサーチ研究所の調査で、AIが必要だと思いながら導入できていない企業に理由を尋ねると、「専門知識・ノウハウを持つ人材がいないため」が53.7%で最多でした。2位以下の理由は、以下の通りです。[3]
| 導入できていない理由 | 割合 |
|---|---|
| どの業務に使えるかわからない | 47.9% |
| 具体的な進め方がわからない | 47.3% |
フォーバル GDXリサーチ研究所は、導入を後押しする方法として、費用面の支援に加えて活用業務の提示や導入手順の整理、社内人材の育成、外部専門人材による伴走支援を挙げています。
小売・外食は活用方法と始め方
Store Guideの調査では、DX・AI推進の課題として小売業界は「活用方法が分からない」18.9%、外食業界は「何から始めればよいかわからない」32.9%が最多でした。続く回答は、以下の通りです。[2]
| 業界 | 2位の課題 | 3位の課題 |
|---|---|---|
| 小売 | セキュリティへの不安18.3% | 導入コスト・システム連携各16.0% |
| 外食 | 導入コスト25.1% | 費用対効果が見えない21.7% |
期待する効果は、小売業界で「業務効率化」33.4%、外食業界で「コスト削減」30.0%が上位となり、両業界とも「人手不足解消」が3割近くを占めました。Store Guideは、課題が「導入する」段階から「どう活用し、どう成果につなげるか」へ移りつつあると見ています。
AI活用の調査で見る人材育成の状況
AI活用の課題として人材が挙がるなか、管理職の人材育成の時間や大企業のAI人材育成の取り組みも調べられています。人材育成の状況を確かめる観点は、以下の2つです。
- 管理職による人材育成時間の実態
- 大企業のAI人材育成研修の実態
育成時間の不足は経営者や管理職層を含む来場者への調査で、研修や推進体制の整備状況は大企業への調査で示されました。
管理職による人材育成時間の実態
アハハナの調査では、従業員2名以上の組織に所属する回答者97名のうち62.9%が、管理職・リーダーが人材育成に十分な時間を使えていないと答えました。関連する設問の結果は、以下の通りです。[1]
| 設問 | 割合 | 集計対象 |
|---|---|---|
| 人とAIの役割分担が明確ではない | 47.4% | 従業員2名以上の組織 |
| 活かし切れていない資産に人材の強み | 51.3% | 全回答者 |
| 最終意思決定と責任は人間が担う | 76.6% | 全回答者 |
別の調査では、Store Guideの小売・外食業界向けHR調査で、最大の課題に「次世代リーダー・管理職の育成」24.0%が挙がり、「店舗スタッフ採用」20.6%を上回りました。[2]
アハハナは、AIで生まれた時間を部下との対話やフィードバック、育成にどう配分し直すかを考える材料になると説明しています。
大企業のAI人材育成研修の実態
サイボウズの調査では、AI人材の育成に取り組む企業が76%に上り、「特に取り組んでいない」企業は24%でした。育成と推進体制の内訳は、以下の通りです。[4]
| 取り組み・体制 | 割合 |
|---|---|
| 全社員向けAIリテラシー研修 | 46% |
| IT・DX担当者向けの専門研修 | 31% |
| 専任のAI推進チーム・組織 | 34% |
| 兼任担当者がいる | 41% |
| 活用ノウハウを組織的に共有 | 44% |
推進の担い手は、兼任担当者がいる企業が41%で、専任のAI推進チーム・組織がある企業の34%を上回っています。
AI活用の調査結果を自社に当てはめる観点
アハハナの調査は無作為抽出による全国代表調査ではなく、同社は日本企業全体の状況として一般化できないと説明しました。生成AIを利用・試行している89.9%も、個人利用と試行段階を含む数字です。[1]
さらに、サイボウズの大企業調査は対象から情報通信業を除き、フォーバル GDXリサーチ研究所の業務活用率はAI活用を理解する層を母数にしています。自社の状況に当てはめるときの確認点は、以下の通りです。[3][4]
| 確認点 | 自社で確かめること | 関係する調査結果 |
|---|---|---|
| 調査の対象 | 自社の規模・業種と近いか | 回答者の立場が調査ごとに違う |
| AI活用戦略 | 戦略が全社に共有されているか | 浸透まで進んだ大企業は一部 |
| 活用する業務 | 使う業務と手順を決めたか | 外食で始め方が最多の課題 |
| 担い手の人材 | 使いこなせる人材がいるか | 大企業・中小企業で最多の課題 |
| 育成の時間 | 管理職が育成に時間を割けるか | 時間不足とする回答が約6割 |
| 人とAIの分担 | AIに任せる仕事を決めたか | 不明確とする回答が半数近く |
人材に関する回答は大企業でも中小企業でも最多だったため、自社のAI活用を見直すときは、使いこなす人材と育成の時間を最初に確かめると判断しやすくなります。
References
- ^ PR TIMES. 「AI活用が進む一方、約6割が「人材育成の時間不足」を実感――マーケティング世界会議2027の来場者・関係者158名に調査」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000152947.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「「人が足りない、AIは使いたい」小売・外食のリアル――DX・AI、人材、バックオフィ スの実態調査2026を公開」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000150113.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「〈2026年度第1回 中小企業経営実態調査〉政府が「日本AX」を掲げるなか、中小企業のAI活用に「理解から実践」への壁 AI活用への理解は66.5%、業務活用は36.9%にとどまる」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000096.000117855.html, (参照 26-10-07).
- ^ PR TIMES. 「サイボウズ「大企業におけるAI活用実態調査」第1弾を公開―大企業の63%がAI活用戦略を策定済み」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000027677.html, (参照 26-10-07).
















