地域交通で自治体やタクシー事業者が配車と運行を拡充、住民と観光客の移動の利便性向上をめざす
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地域交通でタクシーが足りない時間帯や区間を補おうとして、限られた車両と運転手の使い方に迷っていないでしょうか。対象とする時間帯や事業者どうしの連携、予約の受け方を先に整理しておけば、地域に合う運行の形や配車の仕組みを選びやすくなります。
この記事では、地域交通を支える公共ライドシェアや相乗りタクシー、地域のタクシー配車アプリについて、対象の時間帯や事業者の連携から予約の方法まで詳しく解説します。地域の移動手段の確保に取り組む自治体の交通担当者やタクシー事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:株式会社NearMe、株式会社電脳交通 ほか1件
- 出典の最終掲載:2026.10.02
SOURCESこの記事がまとめた発表
目次
地域交通の空白時間を補うタクシーの運行
地域交通の空白時間を補う運行には、タクシーが減る週末夜間に絞った例と、既存の広域交通の運行時刻から外れる早朝に出る例があります。対象の時間帯ごとに見た運行の例は、以下の通りです。
- 上天草市の週末夜間に走る公共ライドシェア
- 珠洲を早朝に出る金沢直行の相乗りタクシー
上天草市の運行はタクシーで受けきれない予約を補う仕組みで、スズ交通の相乗りタクシーは既存の広域交通を補う直行便として設計されました。
上天草市の週末夜間に走る公共ライドシェア
熊本県上天草市とNearMeは、週末夜間の「交通空白時間」の解消をめざして、市内全域で公共ライドシェアの実証運行を2026年10月2日から始めるとしています。公共ライドシェアとは、自治体や非営利団体が主体となり、自家用車(白ナンバー)で有償の運送をする仕組みです。[2]
上天草市で夜間に市内全域を走る公共交通は、台数の少ないタクシーに限られ、週末の夜はタクシーがつかまりにくい時間が生じています。さらに、令和5年の上天草市地域公共交通計画では、市内で運転免許を持たない人の約6割が、移動手段がなく外出をあきらめた経験があるとされました。
実証運行の主な条件は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運行期間 | 2026年10月2日〜2027年1月30日 |
| 運行日時 | 金・土・祝前日の19時〜24時に出発 |
| 年末年始の運休 | 2026年12月29日〜2027年1月2日 |
| 運行エリア | 上天草市内全域 |
| 料金 | 走行予定の距離で乗車前に確定 |
| 乗り方 | シェア乗りにも対応 |
配車は既存のタクシー事業者が優先して受注し、タクシーで対応しきれなかった予約に限ってライドシェアのドライバーが受ける「相互補完」の形を取ります。NearMeの髙原幸一郎社長は、公共ライドシェアはタクシーに代わるものではなく、需要があふれる時間帯を支える補完機能だと述べました。
珠洲を早朝に出る金沢直行の相乗りタクシー
石川県珠洲市のスズ交通は、2026年9月30日から、珠洲市中心部と金沢駅を乗り継ぎなしで結ぶ長距離の相乗りタクシーを運行しています。既存の広域交通がカバーしない運行時刻を求める住民の声を受けて、グループの恋路観光バスが国土交通省や石川県、珠洲市などと協議を重ねて設計しました。[4]
運行と料金の主な条件は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運行本数 | 1日1往復が基本 |
| 珠洲の出発 | すずなり館を5時30分 |
| 金沢の出発 | 金沢駅西口を9時 |
| 所要時間 | 片道3時間(休憩込み) |
| 途中の乗降 | 金沢医科大学病院で可 |
| 料金 | 片道37,500円を人数で割り勘 |
| 定員 | 運転手を除き9名 |
| 9名乗車時 | 1人あたり4,167円 |
| 便数 | 利用状況を踏まえ柔軟に対応予定 |
スズ交通は、運賃に公的資金を充てることを前提とせず、予約の受付や集金、運送を自社で一貫して担います。ただし、予約システムを含むホームページの構築などの初期費用は、観光庁の補助事業に採択されました。
国土交通省北陸信越運輸局への報告状況に基づくと、2026年9月時点で北陸3県では初の相乗りタクシーです。スズ交通は、金沢を訪れる観光客の一部を能登方面へ誘導し、地域住民の移動の利便性向上と能登半島への人流回復をめざすとしています。
地域交通のタクシーを複数社で配車するアプリ
地域交通のタクシーを呼びやすくする方法として、複数のタクシー事業者の車両を1つのアプリから手配できる配車アプリがあります。地域で導入が始まった配車アプリの例は、以下の通りです。
- 16社が共同で配車する今治タクシー
- 電脳交通のDSとつながる広島県のS.RIDE
今治タクシーは地元の組合が運用する地域密着型のアプリで、S.RIDEは他の都道府県で提供しているアプリの対象を広島県にも広げました。
16社が共同で配車する今治タクシー
愛媛県今治市では2026年10月1日、今治タクシー事業協同組合が運用する配車アプリ「今治タクシー」の提供が始まりました。市内陸地部で運行するタクシー事業者16社(約100台)が参加する共同運用型のアプリで、電脳交通の「DS配車アプリ」を活用しています。[3]
アプリの主な機能と開始に合わせた割引は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配車の依頼 | 地図上で乗車場所を指定 |
| 待ち時間 | 複数社の待ち時間を確認 |
| 到着まで | 迎えの車両の現在地を確認 |
| 空車がない時 | 空車予測時刻の表示と予約 |
| 割引額 | 乗車1回につき500円 |
| 割引の条件 | 先着6,000回・2027年2月28日まで |
アプリの利用料と登録料は無料ですが、タクシー運賃と迎車料金は通常どおり必要です。今治市と組合は、割引によってアプリを使ったことがない人にも便利さを体験してもらい、タクシーを身近な移動手段として定着させることをめざしています。
組合の野間史仁理事長は、人材不足でタクシーがつかまらない現状を挙げ、共同配車を「タクシー業界の悲願だった」と述べました。また、電脳交通の北島昇取締役COOは、全国展開する配車アプリが地域外からの来訪者を含む幅広い利用者を支えるのに対し、今治タクシーは地域住民の日常的な移動を担うと説明しています。
電脳交通のDSとつながる広島県のS.RIDE
S.RIDE株式会社は2026年9月14日から、広島県でタクシーアプリ「S.RIDE」の提供を始めました。同社にとって広島県への導入は初めてで、県内のタクシー事業者16社と提携し、合計約540台の車両へ順次広げるとしています。[1]
導入は、電脳交通のクラウド型タクシー配車システム「DS」とS.RIDEの配車システムを連携させて実現しました。
広島県でのサービスの概要は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供エリア | 広島交通圏と佐伯交通圏 |
| 含まれる地域 | 広島市・廿日市市・安芸郡など |
| 法人向け | 法人契約プランS.RIDE Bizに対応 |
| 提供地域の数 | 14都道府県(10月1日時点) |
S.RIDE株式会社は、地域住民の日常利用に加え、出張などのビジネスや観光に伴う移動の需要も見込んでいます。広島市には中国地方を統括する企業の拠点が集まり、県内には世界遺産をはじめとする歴史・文化資源が点在するためです。
地域交通のタクシーを予約する方法の違い
地域交通のタクシーを予約する方法は、受け付ける窓口と呼ぶタイミングの点で、サービスごとに異なります。予約の窓口と呼ぶタイミングを比べた表は、以下の通りです。[1][2][3][4]
| サービス | 予約の窓口 | 呼ぶタイミング |
|---|---|---|
| 上天草市の公共ライドシェア | NearMeのWebサイト | 出発時間を指定して事前予約 |
| 珠洲・金沢の相乗りタクシー | スズ交通のホームページ | 完全予約制 |
| 今治タクシー | 今治タクシーのアプリ | 乗りたい時に配車を依頼 |
| S.RIDE | S.RIDEのアプリ | いますぐ呼ぶか予約 |
上天草市の公共ライドシェアは、アプリ不要で多言語に対応したWebで仮予約を入れ、到着予定時刻などがメールで届いた時点で予約が完了します。支払いはキャッシュレスの事前決済に限られ、車内での現金払いと電話予約は受け付けない仕組みです。
電話での手配を残す例もあり、今治タクシーは従来の電話配車を続け、珠洲・金沢の相乗りタクシーはホームページを使えない利用者の電話予約を受け付けます。また、S.RIDEでは、クレジットカードの事前登録によるネット決済と、流しからの乗車でも車載タブレットで決済できるS.RIDE WALLETが紹介されています。
地域交通のタクシー施策を自地域に当てはめる観点
地域交通のタクシー施策を自分の地域に当てはめるときに先に整理したいのは、補いたい時間帯や運行の担い手、予約の受け方です。確認する点と参考になる例は、以下の通りです。[1][2][3][4]
| 確認すること | 見る点 | 参考になる例 |
|---|---|---|
| 補う時間帯 | 週末夜間か早朝か | 上天草市、スズ交通 |
| 補う区間 | 市内全域か遠方への直行か | 上天草市、スズ交通 |
| 既存タクシーとの関係 | タクシーを優先する補完か | 上天草市の公共ライドシェア |
| 事業者の連携 | 複数社の配車を1つにまとめるか | 今治タクシー、S.RIDE |
| 配車システム | 既存の配車システムとつなぐか | S.RIDEと電脳交通のDS |
| 電話での手配 | 電話の配車や予約を残すか | 今治タクシー、スズ交通 |
| 運賃の財源 | 公的資金を前提にするか | スズ交通は前提とせず |
| 利用の後押し | 自治体が割引で支えるか | 今治市の乗車割引 |
上天草市と今治市の取り組みでは、既存のタクシーの優先や電話配車の継続によって、従来の手段を残したまま新しい手段を加えています。新しい運行やアプリを検討するときは、地元の事業者や電話で頼む利用者をどう組み込むかも確かめておくと判断しやすくなります。
References
- ^ PR TIMES. 「タクシーアプリ「S.RIDE®」、広島県でサービス提供を開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000270.000036935.html, (参照 26-10-05).
- ^ PR TIMES. 「上天草市全域で「公共ライドシェア」の実証運行を10月2日より開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000257.000031733.html, (参照 26-10-05).
- ^ PR TIMES. 「「タクシーがつかまらない」をアプリで解決。今治市で16社連携の地域密着型配車アプリ『今治タクシー』始動【愛媛県今治市】」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000118.000136949.html, (参照 26-10-05).
- ^ PR TIMES. 「珠洲・金沢直行 北陸初*の相乗りタクシーが運行開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000192140.html, (参照 26-10-05).











