病院の廊下で、名札を下げた担当者が青い雲形のケースを載せた台車を押して奥の扉へ向かう場面のイラスト。

ヘンリーなどがクラウド電子カルテを認証制度に対応へ、病院情報システム担当者の選定に国の基準が加わる

公開:
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電子カルテの更新を控えた病院では、厚生労働省の標準仕様と認証制度に合う製品をどう見極めるかが判断の分かれ目です。クラウド上で動くことを前提に設計された電子カルテには、すでに稼働している製品と開発中の製品があり、認証への備え方も事業者ごとに異なります。

この記事では、ヘンリーが示した認証制度の評価項目に加え、ヘンリーと富士通Japanの対応や普及協議会の設立、導入先を比べる観点まで詳しく解説します。電子カルテの導入先を検討している病院情報システム担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

  1. この記事の材料:発表3件
  2. 発表主体:株式会社ヘンリー
  3. 出典の最終掲載:2026.10.28
SOURCESこの記事がまとめた発表

[1] 厚生労働省の電子カルテ標準仕様および認証制度に対応したクラウドネイティブ型電子カルテシステムの提供について

掲載 2026.10.16
発表を見る

画像:株式会社ヘンリーの発表資料より(PR TIMES)

[2] ヘンリー、厚労省「電子カルテ標準仕様に係る認証制度」受付初日に申請へ

株式会社ヘンリー / 掲載 2026.10.20
発表を見る

[3] ヘンリー、病院向けクラウドネイティブ型電子カルテを提供する3社で「クラウドネイティブ病院情報システム普及協議会」を設立

株式会社ヘンリー / 掲載 2026.10.28
発表を見る

目次
  1. 電子カルテ認証制度が求めるクラウドネイティブ型
  2. 国が示したクラウドネイティブ型の標準仕様
  3. ヘンリーが示す認証制度の評価項目
  4. 電子カルテの認証制度に向けたベンダーの対応
  5. 稼働中のHenryで受付初日に申請するヘンリー
  6. 開発中の電子カルテを強化する富士通Japan
  7. 電子カルテ普及を国に提言する事業者の協議会
  8. クラウド電子カルテの導入先を比べる観点

電子カルテ認証制度が求めるクラウドネイティブ型

電子カルテの認証制度は、中小病院向けの標準仕様に製品が適合しているかを、製品ごとに評価して認証する制度です。国の方針と評価項目を、以下の2つに分けて整理します。

  • 国が示したクラウドネイティブ型の標準仕様
  • ヘンリーが示す認証制度の評価項目

標準仕様は認証の基準となる国の文書で、評価項目は、ヘンリーが示した要綱別表1の主な項目で、稼働率などの数値を含みます。

国が示したクラウドネイティブ型の標準仕様

2025年12月に公布された改正医療法は、2030年末までに電子カルテの普及率を約100%とし、その手段にクラウド技術を含めることを条文に明記しました。厚生労働省は2026年3月31日に、中小病院向けの電子カルテ・レセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)1.0版を公開し、クラウドネイティブ型を標準としています。[2]

国は2026年4月から、令和7年度補正予算に基づいてクラウドネイティブ型電子カルテを導入する病院への支援策を進めてきました。今後も大病院向けのクラウドネイティブ型電子カルテについて、普及や開発の支援を行うこととしています。[3]

標準仕様が挙げた病院側の課題と定めた方向は、ヘンリーの説明では以下の通りです。

病院側の課題 標準仕様が定めた方向
改定ごとのカスタマイズと費用 カスタマイズを廃したSaaS
他社と価格や機能を比べにくい 価格の公開
独自規格でデータを移せない データ移行規格の標準化
セキュリティ対策が病院の責任 クラウド上での一括更新

標準仕様は、マルチテナント方式のSaaSによって、システムを病院ごとの「所有」から複数の病院による「共同利用」へ変える内容です。ヘンリーは、病院にとって次の電子カルテを選ぶ基準が国の側から示されたと位置づけています。

クラウドネイティブ型電子カルテをめぐる国の動き

図1 クラウドネイティブ型電子カルテをめぐる国の動き

ヘンリーが示す認証制度の評価項目

厚生労働省は2026年10月16日に、「医科診療所及び中小病院向け電子カルテの標準仕様に係る認証制度」の要綱を公表しました。ヘンリーによると、認証制度は11月1日に施行され、同日から申請の受け付けが始まる予定です。[2]

ヘンリーの発表にある主な評価項目(要綱別表1)は、以下の通りです。ただし、要綱の全項目かどうかは発表からは分かりません。

評価項目 求められる内容
システムの方式 単一コードベースのマルチテナント方式
カスタマイズ 個別カスタマイズの禁止
レセプトコンピュータ 機能の内包または接続
提供の形態 パブリッククラウド上のSaaS
データの保管 国内での保管
稼働率 99.9%以上
稼働実績 直近1年間で30施設以上

示された評価項目には、システムの設計に加えて、稼働率や稼働実績のように運用の結果を示す数値も含まれています。直近1年間の稼働実績が問われるため、申請の時点で病院に導入されて動いている製品であることが前提です。

電子カルテ認証制度がつなぐ相手

図2 電子カルテ認証制度がつなぐ相手

電子カルテの認証制度に向けたベンダーの対応

電子カルテの認証制度に向けたベンダーの動きは、稼働中の製品で申請する例と、開発中の製品を標準仕様に合わせて強化する例に分かれます。取り上げる対応は、以下の2つです。

  • 稼働中のHenryで受付初日に申請するヘンリー
  • 開発中の電子カルテを強化する富士通Japan

両社はデジタル庁・厚生労働省の「病院情報システム等の刷新に向けた協議会」に参画してきましたが、製品の段階と提供の時期には違いがあります。

稼働中のHenryで受付初日に申請するヘンリー

ヘンリーは、申請受付が始まる2026年11月1日に、中小病院向け電子カルテ「Henry」の認証申請を行うとしています。Henryは電子カルテやオーダー、レセコン(レセプトコンピュータ)を一体化した病院向けの基幹システムで、2023年に正幸会病院から提供が始まりました。[2]

ヘンリーは、認証制度が求める要件の多くを提供開始時からの設計で備えているため、新たな開発をせずに稼働中のHenryで認証を取得できる見通しだと説明しています。標準仕様の公開以降、同社には数百の病院から問い合わせが寄せられました。

ヘンリーが示すHenryの状況は、以下の通りです。

項目 Henryの状況
提供の方式 全導入病院に同一バージョン
稼働率の実績 直近1年間で99.943%
稼働施設 30施設以上(約8割が地方)
対象の規模 2026年9月に中・大規模向けを拡充

導入事例として、ヘンリーは、そのべ病院で電子カルテとレセコンが一体になり転記作業がなくなったと説明しています。同院の病床稼働率は90%近くまで回復し、月間の診療報酬収入は導入前の1.3倍になったと同社は述べました。

数字で見るHenryの導入状況

図3 数字で見るHenryの導入状況

開発中の電子カルテを強化する富士通Japan

富士通Japanは要綱の公表を受けて、開発中のクラウドネイティブ型電子カルテシステムを標準仕様に対応させる機能強化に着手しました。同社は、診療所や中小規模病院が電子カルテを導入する際に、製品の選定や費用の確保、IT人材の不足などへの不安の声が多いとしています。[1]

富士通Japanは、国が推進する医療DXサービスとの連携も予定しており、電子処方箋サービスに加えて、厚生労働省が展開予定の電子カルテ情報共有サービスともつなぐとしています。電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有するための仕組みです。

富士通Japanが示す対象別の提供計画は、以下の通りです。

対象 提供の時期 開発の状況
中小規模病院向け 2027年4月から提供予定 2026年10月16日に強化着手
大規模病院向け 2028年度中の提供をめざす 国との連携のもと開発中

大規模病院向けでは、AIなどの外部サービスや他の医療システムとの柔軟な連携をめざすとしています。病床数400床以上の病院を対象に算出した大規模病院向け市場のシェアは、富士通Japanによると47%です。

富士通Japanのクラウド型電子カルテがつながる先

図4 富士通Japanのクラウド型電子カルテがつながる先

電子カルテ普及を国に提言する事業者の協議会

ヘンリーは2026年10月に、病院向けにクラウドネイティブ型電子カルテを提供する事業者とともに「クラウドネイティブ病院情報システム普及協議会」を設立しました。同社は、事業者が経験や知見を持ち寄り、提言や発信を行う場が必要と考えて設立を呼びかけたとしています。[3]

同社は、クラウドネイティブ型電子カルテがセキュリティ対策や災害時の事業継続(BCP)、システム運用を担う人材の確保といった病院の課題に応えうる選択肢として期待されていると説明しています。

設立時の体制と今後の予定は、以下の通りです。

項目 内容
参加企業(設立時) ヘンリー、レスコ、亀田医療情報
幹事社(事務局) ヘンリー
要望書 厚生労働大臣宛てに提出へ
公開イベント 12月に開催予定

協議会は、国や関係者への提言活動に加えて、普及に向けて協調して取り組むべき活動や広報・発信活動を行うとしています。ただし、具体的な活動内容は、今後協議会から改めて知らせる予定です。

普及協議会が掲げる活動

図5 普及協議会が掲げる活動

クラウド電子カルテの導入先を比べる観点

クラウドネイティブ型電子カルテの導入先を比べるときは、認証の見通しと提供の時期を軸に、稼働の実績や移行の体制も確かめます。

ヘンリーと富士通Japanの対応に当てはめた比較の観点は、以下の通りです。[1][2]

観点 確かめる点 対応の例
認証の見通し 申請の時期と要件の充足 ヘンリーは11月1日に申請予定
提供の時期 稼働中か開発中か 富士通Japanは2027年4月予定
稼働の実績 稼働率と稼働施設の数 Henryは稼働率99.943%
国との連携 医療DXサービスとの接続 富士通Japanは連携を予定
移行の体制 現場を止めない切り替え ヘンリーは人員を拡大

認証制度の申請受付は2026年11月1日に始まる予定で、製品ごとの認証の結果は今後の発表で確かめる段階です。また、富士通Japanの大規模病院向けは2028年度中の提供をめざす段階で、2027年4月を予定する中小規模病院向けとは時期が異なります。

製品の段階と対象の規模で見る位置づけ

図6 製品の段階と対象の規模で見る位置づけ

References

  1. ^ PR TIMES. 「厚生労働省の電子カルテ標準仕様および認証制度に対応したクラウドネイティブ型電子カルテシステムの提供について」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000623.000093942.html, (参照 26-10-29).
  2. ^ PR TIMES. 「ヘンリー、厚労省「電子カルテ標準仕様に係る認証制度」受付初日に申請へ」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000102549.html, (参照 26-10-29).
  3. ^ PR TIMES. 「ヘンリー、病院向けクラウドネイティブ型電子カルテを提供する3社で「クラウドネイティブ病院情報システム普及協議会」を設立」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000102549.html, (参照 26-10-29).
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