Asana(日本法人:アサナジャパン株式会社)は、人とAIエージェントが単一の業務基盤上で協働する新たなオペレーティングシステム「Agentic Work Management」を発表しました。
Asanaが特定したAIの生産性ギャップを生む4つの構造的課題
Asanaは、企業がAIの価値を十分に引き出せていない背景として、4つの構造的要因を特定しています。第一は「導入のハードル」で、自社業務に最適なAIエージェントの判断や既存ワークフローの可視化が困難な点です。第二は「チームへの統合不足」で、多くのAIエージェントが個人単位の利用にとどまり、チーム全体での協働環境が整っていない点でした。
第三は「組織コンテキストの欠如」で、現在のAIエージェントがチームの業務進め方や過去の意思決定、優先事項を把握できていない点となっています。第四は「ガバナンスの未整備」で、データアクセス管理やセキュリティ確保、利用コストの統制に対する懸念が根強い点です。Asanaは、この4点を解消するための業務基盤として「Agentic Work Management」を位置づけています。
今回の発表の根拠として、Microsoft・LinkedInによる「Work Trend Index Annual Report: AI at Work Is Here. Now Comes the Hard Part」(2024年5月8日)と、Boston Consulting Group(BCG)の「The Widening AI Value Gap」(2025年9月30日)が引用されました。
Agentic Work ManagementのAIチームメイトとAsana Dashの主な機能
個人向けには、ユーザーの目標や優先事項、チームやツールを横断した業務を理解するAI参謀「Asana Dash(ダッシュ)」を提供します。Asana Dashは、会議での決定事項やSlackでのやり取り、メールに埋もれたアクションアイテムを自動的に把握し、Work Graph®データモデル上で管理可能な業務として整理する仕組みです。タスクやプロジェクトの内容に応じて最適なAIチームメイトと連携し、業務の推進を支援するのが特徴です。
チーム向けには、AIチームメイトを大幅に進化させました。チャットベースの操作環境に加え、定型業務を再利用可能な形で体系化する「Skills Library(スキルライブラリー)」を提供します。
Gmail、Outlook、Slack、HubSpot、Figma、Canvaなど主要な業務ツールとの連携により、AIチームメイトを迅速に業務へ組み込めます。また、チームの過去の意思決定や業務プロセスを共有コンテキストとして蓄積・活用するため、各ワークフローはより深い文脈を踏まえて実行される設計です。
さらに、StackAIとの統合により、Agentic Work ManagementはWork Graph®の枠を超え、企業全体の業務システムへと拡張できます。CRMやERP、コラボレーションツール、契約管理プラットフォームなど、複雑なマルチステップ型ワークフローを統合的に自動化・運用できるようになります。
Agentic Work Managementの今後提供予定の新アプリケーション
Asanaは、部門横断での業務変革を支える新アプリケーションを順次提供予定です。主な新アプリケーションは次の3種類です。
- Asana Service Management:IT・人事・総務向けに問い合わせ対応から業務実行まで一元化
- Command by Asana:プロダクト企画・開発向けの計画管理と仕様書・要件定義書の自動生成を提供
- Asana Client Management:代理店・プロフェッショナルサービス向けにクライアント業務の全工程を統合管理
Asana Service Managementは、AIによる問い合わせの自動解決と自己学習型ナレッジベースを備えています。他部門との連携が必要な場合でも、問い合わせ対応からプロジェクト管理へとシームレスに移行できる設計です。
Command by Asanaでは、過去のチケットやプルリクエスト、会議内容などをもとに、仕様書や要件定義書を自動生成します。スプレッドシートに依存した計画管理からの脱却を支援するのが特徴です。
Asana Client Managementでは、SOW(Statement of Work)作成やリソース計画など定型業務を自動化し、プロジェクトリスクを事前に把握できるのが強みです。
Agentic Work Management導入企業における成果事例
FedExは、AIスタジオとAIチームメイトをマーケティングおよび営業部門に導入し、市場投入までのスピードを9倍向上させるなどの成果を挙げるとともに、年間で数十万ドル規模の運用コスト削減を実現しました。マーケティング部門では、24種類以上に分散していた申請・依頼プロセスをAIスタジオによって単一のワークフローへ統合し、GTM(Go-to-Market)戦略やクリエイティブブリーフの作成支援により年間1,200時間以上の業務時間を創出した点も成果です。
営業支援部門では、案件受付レビューにかかる時間を90分から30分へ削減し、手作業による調整や情報共有に費やされていた300時間以上の業務時間も削減し、より迅速な意思決定を可能にしたのも特徴です。
COS(H&Mグループ傘下のグローバルファッションブランド)は、キャンペーン立ち上げに要する時間を90%削減するとともに、1キャンペーンあたり1,000点を超えるクリエイティブアセットの制作を可能にし、年間約3,000時間に及ぶ手作業を削減しました。COSは「Asanaは私たちの業務プロセスを改善しただけではありません。働き方そのものを変革したのです」と述べました。
AsanaのCEOであるDan Rogers氏は、今回の発表について、次のように述べています。「Asanaは18年間にわたり、ビジネスにおける最も難しい課題の一つである、目標や意思決定、業務の引き継ぎなど大規模なチームや組織間での業務遂行の実現に取り組んできました。Enterprise Work Graph®データモデルと共有されたコンテキストは、複数メンバーによる同時協働の仕組みを支え、そしてガバナンスの基盤は、まさにAIエージェント時代に必要とされるものです」。
アサナジャパン株式会社 代表執行役員社長の立山 東(たてやま あきら)氏は、日本企業固有の課題に触れ次のように述べました。
「日本企業では、部門間の調整や承認プロセス、関係者との合意形成、そして業務の引き継ぎに多くの時間と労力が費やされています。AsanaのAgentic Work Managementは、人とAIエージェントが共通の計画と共通のコンテキストのもとで協働できる環境を提供します。統合されたガバナンスの基盤により、この課題の解決を支援するのが本ソリューションの特徴です」。
「Agentic Work Management」のサービス概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | Asana(日本法人:アサナジャパン株式会社) |
| ソリューション名 | Agentic Work Management |
| カテゴリ | 人とAIエージェントの協働を支える業務基盤 |
| 主な機能 | AIチームメイト・Asana Dash(ダッシュ)・Skills Library(スキルライブラリー) |
| 連携ツール | Gmail、Outlook、Slack、HubSpot、Figma、Canva、StackAI、CRM、ERP 他 |
| 新アプリケーション(予定) | Asana Service Management、Command by Asana、Asana Client Management |
| 提供状況 | AIチームメイト・AIスタジオは提供開始済み。Asana Dash他は今後数か月で順次提供予定 |
| 詳細情報 | asana.com/ai |
trends編集部の一言
ナレッジワーカーの75%がAIを業務活用している一方、有意な生産性向上を実現できている企業はわずか5%という数字は、業界を問わずインパクトのある現実です。業界全体としては、個人単位のAI活用から組織単位の活用への移行が進みつつあるものの、ツールを導入してもチームとして使いこなせているかは別の話であり、「AIの生産性ギャップ」という課題は多くの企業に共通しています。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、キャンペーン管理やコンテンツ制作の現場では、部門間の調整コストが依然として大きく、「誰が何を決めたか」の文脈が共有されないまま業務が進むことが多いのではないでしょうか。Work Graph®によってその文脈をAIが蓄積・活用する設計は、単なる自動化ツールとは異なる方向性として注目されます。
FedExやCOS(H&Mグループ)の事例に示されるような数値——9倍の市場投入スピード向上や90%のキャンペーン立ち上げ時間削減——は、大規模組織での実装の手応えを感じさせます。StackAI買収によってCRMやERPとの統合まで視野に入れた展開は、今後の業務変革の広がりを占う上で、注目しておく価値がありそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「Asana、人とAIエージェントの協働を実現する新たなオペレーティングシステムを発表 | Asana Japan 株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000052000.html, (参照 26-06-09).
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