株式会社グラファーは、個人情報や機密情報をインターネット経由で他社サーバーに送信することなく、組織内の環境でAIによる書類処理を完結させる「ローカルLLM活用技術」を確立したと発表しました。
高性能な専用サーバーを前提とせず、一定の計算資源を備えたPC環境でも動作可能な構成を用いて、技術的な実現可能性を確認しています。
グラファーのローカルLLMが解決するクラウドLLMの課題
ChatGPTをはじめとするクラウドLLMは、入力情報をインターネット経由でサービス提供事業者のサーバーに送信して処理する仕組みです。行政や金融、医療、BPO、法務、人事などの現場では、個人情報や機密情報を自組織の管理下にない事業者のサーバーに送ることができないという制約があります。この制約から、生成AI活用を見送らざるを得ないケースが多くありました。
たとえば自治体の窓口では、申請書に記載された氏名や住所、口座番号などを職員が一件ずつ目視で確認・入力しています。個人情報を組織外のサーバーに送信できないという制約から、業務効率化への期待があっても導入を見送らざるを得ないケースが少なくありませんでした。
クラウドLLM利用時の従量課金による「コストの見通しが立てづらい」という課題も、大量書類を継続処理する現場には共通の悩みでした。
グラファーが確立したローカルLLM活用技術の4つの特徴
株式会社グラファーが確立した本技術は、以下の4点を主な特徴としています。
- 個人情報・機密情報を社外に送信せず処理を完結
- クラウドLLMの従量課金を前提としない運用
- テンプレート登録なしで書類内容を理解して項目抽出
- AIによる確認優先度の分類で人の確認作業を軽減
特に注目される点は、処理をローカル環境で完結させる構成により、インターネット非接続の閉域環境やオンプレミス環境での運用も視野に入れていることです。
従来のOCRやAI-OCRでは様式ごとにテンプレートを事前登録する必要がありましたが、本技術はその工程なしに必要項目を自動抽出できました。「はい/いいえ」「該当する/該当しない」といったマーク情報(OMR)の読み取りにも対応しており、文字情報とマーク情報が混在する書類の処理にも適用できます。
グラファーの技術が想定する活用領域と今後の展望
本技術の活用が想定される領域は多岐にわたるのが特徴です。自治体・官公庁における申請書・届出書の受付処理や住民記載情報の確認、金融・保険分野での本人確認書類や申込書類の確認、医療現場での問診票・同意書の処理、BPOにおける大量帳票のデータ化などが挙げられます。
契約・法務領域や情報システム部門での活用も想定されており、「データを社外に出せないためAIを使えない」とされてきた領域でのAI活用を後押しする設計となりました。
株式会社グラファーは今後、AI-OCR、確認業務の自動化、AIと既存システムを組み合わせた業務支援など、実務に即したユースケースへの適用を進めていく方針です。高性能な専用サーバーを前提としない構成により、小規模な部署や拠点単位での試験導入も進めやすい設計となっています。
株式会社グラファーの概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社グラファー |
| 所在地 | 東京都渋谷区千駄ケ谷1-5-8 |
| 代表者 | 石井大地氏 |
| 設立 | 2017年7月18日 |
| 資本金 | 1,544,977,927円(資本準備金含む) |
| ミッション | We Remove Steps. |
| 主なサービス | Graffer AI Solution、デジタル行政プラットフォーム |
| 導入自治体数 | 250以上 |
| 政令指定都市導入率 | 70% |
| 受賞・認定 | J-Startup2021(2021年10月、経済産業省) |
| URL | https://graffer.jp |
trends編集部の一言
行政デジタルプラットフォームが全国250以上の自治体に導入され、政令指定都市での導入率が70%に達している点は、グラファーの現場理解の深さを示しています。業界全体としては、生成AIの活用拡大と個人情報保護規制の強化が同時進行しており、「使いたいが送信できない」というジレンマを抱える現場が増えている状況です。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、顧客データや社内の未公開情報をクラウド型AIに入力することへの懸念は日常的に議論されてきたテーマであり、ローカル処理という選択肢の台頭は、同様の制約を抱える多くの業界において導入ハードルを下げる動きとして注目される取り組みと読み取れます。
References
- ^ PR TIMES. 「グラファー、個人情報を社外に出さずに書類処理を支援する「ローカルLLM活用技術」を確立 | 株式会社グラファーのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000133.000038525.html, (参照 26-06-05).
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