株式会社 日立製作所および国立大学法人九州大学病院は、血液悪性腫瘍の鑑別診断を支援する機械学習型のAI技術を開発しました。
日立・九州大学病院による血液悪性腫瘍鑑別診断支援AI技術の開発背景
国際がん研究機関(IARC)が公表した統計によると、2022年の世界のがん新規患者数は2,000万人に達しました。こうした状況のもと、患者に適した治療選択につながる鑑別診断の重要性が高まっています。血液悪性腫瘍は、病型によって治療法が大きく異なるため、候補疾患を適切に絞り込む作業が不可欠です。
FCM検査は、細胞の特徴を示すマーカーを測定して、診断に役立てる検査ですが、検査データの解釈には高度な専門性と経験が求められます。検査件数の増加に伴い解析作業の負担も増大しており、効率的に候補疾患を絞り込める技術の開発が求められていました。
血液悪性腫瘍鑑別診断支援AI技術の2つの特長
今回開発したAI技術の主な特長は、以下の2点です。
- マーカー陽性率を特徴量とした医師の診断プロセスに近いAIモデルの構築
- 16クラスを対象とした確率付き複数候補疾患の同時提示
1点目は、FCM検査で得られるマーカー陽性率を特徴量として用い、ゲーティング後の解釈プロセスに沿う形でAIモデルを構築したものです。医師が普段用いる指標に基づいて結果を確認できるため、判断の標準化に向けた支援につながることが期待されます。
2点目は、単一の疾患名ではなく複数の候補疾患を確率付きで提示する設計です。医師が事前に持つ仮説との整合確認や仮説にない候補への気づきを促し、診断思考に沿った支援につながることが期待されます。
日立・九州大学病院の血液悪性腫瘍鑑別診断支援AI技術の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 開発元 | 株式会社 日立製作所・国立大学法人九州大学病院 |
| 技術種別 | 機械学習型AI技術 |
| 対象疾患 | 白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫など計16クラス |
| 検査手法 | フローサイトメトリー(FCM)検査データの解析 |
| モデル種類 | 白血病用・リンパ腫/多発性骨髄腫用の2種類 |
| 学習・評価データ | 九州大学病院の臨床データ500例以上 |
| 確認性能 | 複数疾患の同時分類においてAUC 0.9以上 |
| 今後の方針 | 医療機関・検査会社との共同検証(PoC)による評価規模の拡大 |
| 技術位置付け | Lumada 3.0を支える技術の一つ |
| 学会発表 | European Hematology Association (EHA) 2026 Congress(6月11日~14日)での抄録掲載 |
trends編集部の一言
2022年時点で世界のがん新規患者数が2,000万人に達しているという数字は、医療分野に限らず、業界を問わず重みのある数字です。医療AI分野では、専門家の判断プロセスをどう構造化・共有するかが共通の設計課題となっており、熟練した医師の解釈フローをAIモデルに落とし込む今回のアプローチは、診断支援AI市場でも注目される方向性です。マーケティング業界の文脈に置き換えると、属人的なノウハウをデータ化して再現性を持たせる設計思想は、業種横断で加速している「専門知の民主化」の流れと重なります。
確率付きで複数の候補を提示する設計は、AIが「答えを出す」のではなく「判断材料を整理する」立場に徹している点が際立ちます。生成AIへの過信や誤生成が問題視される中、診断思考に沿って候補を絞り込む支援ツールとして、位置付けた設計はAIと専門家の協働モデルとして業界を超えた示唆を含む取り組みです。EHA 2026 Congressでの抄録掲載を経て、今後の共同検証(PoC)の進捗にも注目が集まります。
References
- ^ PR TIMES. 「血液悪性腫瘍の鑑別診断を支援するAI技術を開発 | 株式会社 日立製作所のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000152541.html, (参照 26-06-13).
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