ハーツリッチ株式会社は、室内カビの発生リスクを事前に予測するAI活用型の予測システム「パーソナライズ・カビ予報システム」の共同研究を開始しました。
パーソナライズ・カビ予報システム開発の背景にある「発生後対応」の課題
室内空間に発生するカビは、見た目の汚れや臭いだけではなく、建材の劣化、保管物の品質低下、施設管理コストの増加など、暮らしや事業活動の質に関わる問題です。しかし一般家庭や施設管理の現場では、どの場所にカビが発生しやすいか、現在の室内環境がどの程度のリスクを抱えているかを事前に把握することが難しく、多くの場合は目に見えるカビや臭いが発生してから対応する状況が続いてきました。
IoTセンサーを活用した室内環境測定は有効な手段ですが、導入コストや設置の手間、継続利用のハードルがあり、住宅や中小規模施設への普及には課題があります。本共同研究では、スマートフォンを起点とした簡易診断情報と気象データ、専門家の判断ロジックを組み合わせることで、より多くの生活者・施設管理者が活用しやすい予測の仕組みを検討します。
パーソナライズ・カビ予報システムが実現するリスク予測の仕組み
本研究で構築を目指す「パーソナライズ・カビ予報システム」は、利用者がスマートフォン上で入力する室内環境情報や生活習慣、施設利用状況に加え、地域の気象データと専門家の知見を組み合わせてカビ発生リスクを個別に推定するAI活用型の予測システムです。単に「カビが生えやすい季節です」と知らせるだけではなく、空間の用途や利用状況に応じて注意すべき場所や予防行動を提示することを目指します。
「専門知融合型AI」の構築にあたっては、ハーツリッチ株式会社がこれまでに蓄積してきた1万件以上の相談や調査、施工等の現場知見を統合します。カビが発生しやすい条件や場所ごとのリスク、再発しやすい室内環境、利用状況や管理方法との関係などを「エキスパート決定木」として整理しました。これをスマートフォン診断や気象データと組み合わせることで、現場感覚に基づいた実用性の高いカビリスク評価の実現を目指しています。
期待される効果として、以下が挙げられています。
- 換気・除湿・清掃などの予防行動を適切なタイミングで促進
- 施設利用者の安心感向上と保管物の劣化リスク低減
- 施設管理コストの抑制と衛生環境の向上
本システムがもたらす予測・予防のアプローチを通じて、カビ対策を「発生後に除去・清掃するもの」から「データに基づいて予測・予防するもの」へと転換する取り組みとして、幅広い分野への展開を検討していく方針です。
住宅・施設・倉庫から東南アジアまで応用範囲を広げる展望
本研究は、主として日本の住環境を対象としながら、高齢者施設、病院、倉庫、商業施設など、さまざまな室内空間への応用も視野に入れています。カビの発生リスクは気温、湿度、建物構造、利用人数、換気環境、保管物の種類、清掃頻度などの影響を受けます。そのため、空間の用途によって注意すべきポイントが異なるのが実情です。
今後は、日本国内での検証を進めながら、用途や地域差を踏まえたカビ予測モデルの適用可能性を検討していく方針です。また、東南アジアのような高温多湿地域への応用も視野に入れ、国や地域ごとの気候特性を踏まえたカビリスク評価の可能性についても、検討していく方針です。
共同研究概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 研究課題名 | 参加型センシングと専門知の融合による室内カビ発生リスクの予測および行動変容システムの社会実装 |
| 研究期間 | 2026年4月1日〜2028年3月31日 |
| 共同研究機関 | 慶應義塾大学SFC研究所の環境情報学部 中澤・大越研究室 / ハーツリッチ株式会社 |
| 対象システム | パーソナライズ・カビ予報システム(AI活用型の予測システム) |
| 活用する知見 | 1万件以上の相談や調査、施工等の現場知見(エキスパート決定木として統合) |
| 設立 | 2014年5月(ハーツリッチ株式会社) |
| 所在地 | 神奈川県藤沢市藤沢86番地藤沢法人会館ビル5階 |
trends編集部の一言
1万件以上の現場知見を「エキスパート決定木」としてシステムの判断ロジックに組み込む設計は、業界全体としては「AI+専門知の統合」という流れの一つの具体例として注目されます。マーケティング業界の文脈に置き換えると、ツールの精度を「どれだけ実務経験を反映しているか」で評価する動きは業界横断で語られてきたテーマであり、現場知見を構造化してAIに組み込むアプローチは、業種を超えた実装モデルとして示唆を含む取り組みと読み取れます。
スマートフォンの簡易診断を起点に据え、IoTセンサー不要でリスク評価を行う設計は、導入コストのハードルを下げる現実的な解決策です。カビ対策を「発生後に対応するもの」から「予測・予防するもの」へと転換するという問題設定そのものが、施設管理や環境モニタリングなど他分野にも置き換えられる発想として、業界全体の作業プロセス転換を象徴する動きと捉えられます。
References
- ^ PR TIMES. 「室内カビの発生リスクを予測する、AIを活用した「パーソナライズ・カビ予報システム」の共同研究を開始 | ハーツリッチ合同会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000056872.html, (参照 26-05-21).
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