株式会社日立製作所とAstemo株式会社は、Software-Defined Vehicle時代における運転支援AIの開発基盤を共同で構築すると発表しました。
SDV時代のAI開発において日立とAstemoが直面する業界共通の課題
近年、自動車業界では車両の価値がソフトウェアによって定義・更新されるSDV(Software-Defined Vehicle)へのシフトが進んでいます。車両の制御や判断をソフトウェアが担う場面が拡大しており、走行時に周囲の状況を判断・制御する運転支援AIの役割が重要性を増してきました。
運転支援AIの開発では、膨大なデータの収集・学習から安全性の評価、車両への実装に至るサイクルを繰り返す必要があります。その規模と複雑さは、従来の開発手法の延長では対応しきれないレベルに達しており、開発プロセスそのものを効率化・高度化する環境の整備が求められてきました。
日立とAstemoの強みを結集した新たなAI開発基盤の3つの柱
今回構築するAI開発基盤は、AIの判断プロセスを可視化してブラックボックス化を防ぐオープンなプラットフォームとして提供していく方針です。Astemo株式会社が持つ車両統合制御やAI技術と、株式会社日立製作所がミッションクリティカル領域で培ってきたデジタルツイン環境・フィジカルAIの社会実装力を組み合わせた構成です。
基盤の主な柱は以下の3点です。
- フィジカルAIの社会実装ノウハウを適用した運転支援AIの開発
- Agentic AIを活用した自律的かつ高速な開発プロセスの自動化推進
- 自動車メーカー・サプライヤーが参加するオープンなエコシステムの形成
デジタルツインでは、現実には遭遇・再現が困難な多様なシナリオをデジタルツイン上に再現し、部品の劣化や性能のばらつき、急なブレーキ操作といった物理的な諸条件を精緻に織り込んで学習データを生成します。
こうした複合的な要因を反映した膨大なデータをもとに、高度な安全性と人間が心地よいと感じる自然な運転挙動の両立を追求する方針です。
AstemoのIoVプラットフォームと産業横断エコシステムの展望
Astemo株式会社は、今回の取り組みを通じ、IoVプラットフォーム(Internet of Vehicle)のさらなる強化につなげます。IoVプラットフォームは、車載(オンボード)とクラウド(バックエンド)を連携させる基盤です。
走行データの収集からシミュレーション、AIによる学習や検証、車両への反映までを循環させる開発環境として機能します。
将来的には本基盤を含むIoVプラットフォームを自動車メーカーやサプライヤーなどに共通プラットフォームとして展開し、各社が車両制御やサービス開発といった付加価値領域にリソースを集中できる環境づくりを支援する方針です。さらに、Astemo株式会社と株式会社日立製作所は、モビリティ分野にとどまらず、物流やエネルギーなど社会を支えるさまざまなシステムとの産業横断的なデータ連携を促進します。
これによって横断的に社会価値を生み出すエコシステムの形成をめざしています。
日立・Astemoによる新たなAI開発基盤の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 協業主体 | Astemo株式会社・株式会社日立製作所 |
| 対象領域 | Software-Defined Vehicle(SDV)における運転支援AI |
| 構築目標時期 | 2026年度末 |
| 主要技術 | デジタルツイン・フィジカルAI・Agentic AI・秘匿情報管理技術 |
| 将来展開 | 自動車メーカー・サプライヤーへの共通プラットフォーム提供、物流・エネルギー分野への拡張 |
| 関連プラットフォーム | IoVプラットフォーム(Internet of Vehicle) |
trends編集部の一言
自動車業界の外から見ると、「走る・曲がる・止まる」を支える車両統合制御のノウハウと、社会インフラで培ったミッションクリティカルなAI開発の安全思想が一つの基盤に統合されるという構図は、かなり大きな動きです。業界全体としては、SDVシフトに伴ってAIの継続的な進化が不可欠になる一方で、開発サイクルの規模と複雑さが従来手法の限界を超えつつあるという共通の課題に直面しており、今回の協業はその課題への一つの回答として位置づけられます。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、データの蓄積や分析、施策反映のサイクルを高速化するという課題は業種横断で語られてきたテーマです。「デジタルツイン上に現実には再現困難なシナリオを補完してAIに学習させる」という発想は、他業種におけるデータ利活用・AI学習の文脈でも親和性の高いアプローチとして注目されます。Agentic AIによる開発プロセス自体の自動化という方向性は、モビリティ以外の産業にも波及していく動きとして、業界全体で議論が広がっていく局面と捉えられます。
References
- ^ PR TIMES. 「Astemoと日立、車両の智能化を加速する運転支援AIの開発基盤の構築・活用に向けて協業 | 株式会社 日立製作所のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000579.000067590.html, (参照 26-05-21).
