2025年以降、急速に話題化した「LLMO」「GEO」「AEO」などのAI検索対策。これらは「新しいSEO」として語られることも多い。一方で、それらに共通する「〜最適化」という呼び方は、AI検索対策の本質を十分に表現できているのだろうか。
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ AIマーケティング本部長・出田晴之氏は、AI検索対策を「生成AIブランディング」、すなわち「AIに対するブランディング」と捉える視座を打ち出している。前編では、「〜最適化」というフレームへの違和感を起点に、出田氏が提唱する「生成AIブランディング」の考え方を伺った。その上で、ダークファネルの可視化や、不確実なAI回答に確率論として向き合う実務の考え方についても掘り下げている。
スピーカー
AIマーケティング本部 本部長
「~最適化」というフレームへの違和感 - 生成AIブランディングという視座
―まず最初に、出田様の思想の出発点について伺えればと思います。PLAN-Bマーケティングパートナーズの公式noteの記事「LLMOサービス立ち上げの背景にある、本質を見極める事業づくり」の中で、LLMOを「AIに対するブランディング」と捉え直されていることが印象的でした。「生成AIブランディング」というコンセプトに辿り着かれた背景には、どのような市場観や顧客との対話があったのでしょうか。
株式会社PLAN-B マーケティングパートナーズ AIマーケティング本部 本部長 出田 晴之 氏(以下、出田):お客様からよくいただくのが、「AI検索対策はSEOの延長線上なのか、そうでないのか」というご質問です。背景としては、LLMO、GEO、AEOといった「~最適化」という言葉が流行しているため、「○○O」と言われると「SEOの親戚」と思われる方が非常に多いです。
LLMOやGEO、AEOという言葉がどういう思想のもとで生まれ、広がっていったのかを考えると、競争戦略でいう「フレームオブリファレンス」だと考えています。
全く新しいサービスを立ち上げる時、お客様の全く新しい予算を取りに行くというよりは、既存の何かの予算を置き換える、代替するという戦い方をするものなので、何らかの枠組みに紐付ける必要性がAI検索対策ベンダーにとってはあったのだと推察しています。
例えばスマートフォンは、もし「ポータブルPC」という名前だったとしたら、ここまで広がっていないと思うんです。PCというカテゴリーに紐付けて「小さい、持ち運べる」という訴求だったとしたら、「PCにしては画面が小さいし、PowerPointやExcelも満足に触れない」という反応になっていたはず。
一方で「スマートフォン」と名乗ったことによって、「インターネットにも接続できる電話」となり、ガラケーの代替として戦いやすい差別化ポイントが自然と生まれました。
AI検索対策ベンダーからすると、「人々はGoogleで検索をしていた。それがAIで調べるようになる。だから新しいSEOが必要だ」という、いわば「ニューSEO」の意味合いで「~最適化」という言葉を使い始めたのだと思います。聞き手からすると「ユーザーの情報探索行動が変わる、だから新しいSEOだ」という変化の捉え方は分かりやすい。しかし、従来のSEOと同じ視点に引っ張られてしまうリスクがあるんです。
― つまり、SEOの延長として「自社サイトを最適化して流入を増やす」という発想が引き継がれてしまう、ということですね。
出田:はい。実際のところは、AIが見ているのは自社サイトというよりも、ウェブ全体における自社情報がAIに見られている。最適化する対象もサイトではなくウェブ全体における自社情報であり、KPIもトラフィックではなく露出である。この構造的な変化を「~最適化」という言葉で説明するのは極端に難しいんです。
しかも「~最適化」という言葉がついてしまうがゆえに、経営からしても「SEO担当、よろしく」となってしまう。実際には、広報PRの方やブランド担当の方、広告宣伝部の方などを巻き込みながらAI検索対策に臨むべきなのに、「〜最適化」という言葉ではそうならない。
そこで、広報PR担当、ブランド担当の方々に馴染みある言葉を使おうと考えた時に、AIに正しく理解してもらうという点においては「ブランディング」のようですし、第三者かのように振る舞うAIを介してユーザーとコミュニケーションを取るという点においては「PR(パブリックリレーションズ)」のようだなと思いました。それで、この取り組みを「生成AIブランディング」、すなわち「AIに対するブランディング」と名付けた次第です。
【図1】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
『弊社は、AI検索対策の本質を「生成AIブランディング」と捉えています』 - 出田氏が取材時に画面共有したPLAN-Bマーケティングパートナーズ社内資料より。生成AIに対して自社ブランドを正しく認識させるための取り組みを示す全体概念図
【補足:BtoCがBtoA with Cに】
出田氏は取材中、サービス資料を画面共有しながら、生成AIブランディングが捉える構造変化を以下のように説明した。
出田:「『~最適化』と聞くと、SEOや広告やSNSといった手法の横並びにLLMOやGEOが加わるのか、あるいはSEOと同じなのか、といった『各論』の増減の議論になりがちです。
しかし実際の構造として捉えるべきは、企業とユーザーが直接コミュニケーションを取っていた間に『AI』が入っているという点。BtoCがBtoA with Cになっている、という構造変化のほうがよほど重要な事実だと思っています」
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【図2】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
「AIに自社ブランドを正しく認識してもらう観点では、AI検索対策は『ブランディング』に近い」
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【図3】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
「同時に、第三者として振る舞うAIにおすすめしてもらう観点では、『PR』に近いとも言える」。AI検索対策が持つ二つの側面を、企業-生成AI-ユーザーの三者関係で表現した図
― AI検索対策のために、SEOとは別の特別なテクニックを身につける必要がある、というわけではないのですね。
出田:そのような必要はありません。もちろん、AI検索対策ならではの「お作法」はあります。AIが読みやすいサイト作りなどです。ただし、それは従来のSEOと重なりが大きいと考えています。SEOは、AI検索対策の土台となります。
しかし実際のところは、AIというステークホルダーが登場した中で、既存のウェブマーケティング施策をどう組み替えていくかという話に近いんです。AIのためだけに最適化するのではなく、「AIのためにも最適化する」というのが、個人的には正しい考え方だと思っています。
生成AIブランディングの全体像、より詳しく 本記事で出田氏が語る思想の全体像は、新刊『60分でわかる!LLMO超入門』(技術評論社)で60分で読める形に整理されている。
「SEOとは何か」を問う - 馬谷氏との二つの語り口
― 出田様の「生成AIブランディング」というご見解と、4月22日のAhrefs日本ユーザーミートアップでご登壇された馬谷達也様の「AI検索対策はSEOの役割拡張の延長」というスタンスは、入り口は重なりつつも語り口に違いがありますよね。PLAN-Bマーケティングパートナーズ様全体としては、これら2つの視点はどのように相互補完的に機能しているとお考えでしょうか。
出田:まず大前提として、PLAN-Bグループは「顧客志向」を非常に大事にしている会社です。なので、「AI検索対策とは何か」も、お客様に合わせてお話を差し上げるべきだ、という考えが土台としてあります。
その上で、そもそもの「SEO」という言葉の定義の問題に行き着きます。SEOを日本語にすると「検索エンジン最適化」ですよね。でも、何を目的に、何を対象として最適化するのかは、言葉自体には含まれていない。だから、人によって見え方が変わる。
長くSEOをやってきて、目的も対象も広く捉えていらっしゃる方からすると、AI検索対策もSEOも同じように見えるはずです。「ユーザーの情報探索行動に合わせて、自社のサービスや商品、ブランドの接点を作っていく取り組みだよね」と捉えていらっしゃる方にとっては、AIが出てこようが出てこまいが、それはSEOの範疇です。
次に、今までのSEOを「検索エンジンではGoogleのシェアが高かったから、そこで検索順位を取るために自社サイトを最適化していく」と捉えていらっしゃる方々がいます。そういう方からすると、AIの登場でSEOが「変化している」「変わっている」ように見える。
そして3番目に、今までデジタルマーケティング全般はやってきたが、SEOをメインにはしてこなかった方々もいらっしゃる。そういう方々にとってSEOは、GA4で並ぶいろんなチャネルの中の一つ「オーガニックサーチ」においてセッションやコンバージョンを増やすために、自社サイトにコンテンツを作り、テクニカルに実装していくこと。その前提に立つと、AI検索対策とSEOは「全然違うじゃないか」と見えるはずです。
― つまり、「SEO」という言葉をどこまで広く捉えているかで、AI検索対策が「同じ」「変化している」「全然違う」のどれに見えるかが変わってくる、ということですね。
出田:そうです。なので、Ahrefsさんのミートアップのように、従来からSEOに取り組まれている方が多い場では、「別物です」と説明するよりも、「変わっています」「延長線上です」とお伝えしたほうが親切だと思っています。
一方で、広報PR担当の方やブランディング担当の方に「SEOと同じです」と言っても、全くピンと来ないはずです。そういう方々には「AIに対するブランディングですよ」とお伝えするようにしています。
顧客志向を前提としたうえで、「SEO」という言葉の定義を踏まえて、相手の立場に合わせてコミュニケーションを取っている、というだけのことなんです。
「ダークファネル」を見える化することから始まる
― noteの「出田さんが考える、LLMOの本質的な役割」の章で、「LLMOというと自社サイトをどう整えるかという話に見えやすいが、実際にAIが見ているのは自社サイトだけではなく、外部サイトの記事や口コミも含めて企業やブランドを認識している」と整理されていらっしゃいました。
実際の支援現場で、クライアント側にこの「横断的な視座」が立ち上がるまでに、最も重要な転換点はどこにあるとお感じでしょうか。
出田:AI検索対策をやらなきゃと思うきっかけとして一番多いのは、やはりビジネスインパクトを経営レイヤーの方が感じ始めるとき、ですね。とはいえ、その「ビジネスインパクトを感じる」こと自体が、AIにおいては非常に難しいんです。
マーケティングには「ダークファネル」と呼ばれる領域があります。ユーザーが商品・サービスを知るきっかけ(接点)のうち、計測が難しい部分のことです。友人からの口コミや、社内チャットで回ってきた資料など、マーケター側から観測できないケースですね。
そして近年、ここにChatGPTやAI検索といった新しい接点が加わってきました。AIの場合は、ユーザーとの対話を企業側から直接覗き見ることができません。
GA4などの計測ツール上では何も起こっていないように見えても、実態としては確実に影響が発生している、というギャップが生じやすいわけです。AIの影響は、このダークファネルの拡大という形で表れている、と私は捉えています。
【図4】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
「計測できる領域(Visible)」と「ダークファネル(計測不能な真の接点)」の構造。指名検索・ダイレクト流入は計測可能だが、AIによる推奨・回答は「新たな課題」として、従来からあった口コミ・SNS・社内チャットと並んでダークファネル領域に位置する
― 実際にPLAN-Bマーケティングパートナーズさんでも、自社の数字で大きな乖離が見られたとのことですね。
出田:はい。弊社の場合、GA4上でAI経由と計測できるコンバージョンは全体の5%程度に留まります。コンバージョンポイントはお問い合わせです。しかし、実際のお問い合わせフォームで「弊社を知ったきっかけ」を聞くと、AI推奨が28%だったりするんです(いずれも2026年4月度時点)。
この差分 - 計測ツールで見えている範囲とユーザーに直接聞いて見える範囲を比較すると、「これだけ差がある。ビジネスへの影響があるな」と認識いただける。ここを認識いただけるかどうかが、最初の重要な転換点になります。
【図5】(2026年4月度時点データ。出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
PLAN-B自社の事例。GA4上のAI経由CVは全体の5%に留まるが、フォームで取得した「PLAN-Bを知ったきっかけ」ではAI推奨が28%。この「隠れたギャップ」がダークファネルとして可視化されている(2026年4月度時点データ。出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
そこから、AIにどの程度言及されているのか、どのように言及されているのかが気になり始める。それに関わる情報源として「自社サイトも外部サイトも見られているらしい」とわかり、「AI回答の量を増やし、質を変える」という共通の目的が立つ。すると、いろんな部署が横断的に動き始める。
整理すると、ビジネスインパクトを理解する → その手前の要因になっているAI回答の量と質が気になっていく → さらにその要因となっている自社サイト・外部サイトでの言及内容に意識が向く、という三階層の構造になっています。この三階層を踏まえて部門横断的にAI回答を変えていけば、結果としてビジネスが伸びていく、という設計です。
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【図6】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
PLAN-Bマーケティングパートナーズが提唱する「AI検索対策のフレームワーク」。「LAYER 1:AI回答上の露出度(AIにどう見えているか)」「LAYER 2:AIへの適合度(なぜその結果なのか)」「LAYER 3:事業への貢献度(ビジネス価値はあるか)」の3階層構造で整理
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【図7】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
AI検索対策では、「自らが語る」だけでなく「外部から語られる」ことも含めた「ウェブ全体における自社情報の最適化」が重要。AIはオウンドメディア・比較記事・ニュース・口コミ・SNSなど、ウェブ全体の自社情報を収集して回答を生成する
― ご支援される際の入り口として、「全くSEOをやったことがなく、AI検索対策に興味があります」というご相談に対しては、どう接していらっしゃいますか。
出田:正直、「流行りだからAI検索対策をやりたい」というご相談は、そのまま施策のご提案に進むことはあまりありません。なぜなら、うまくいくイメージが持ちにくいからです。
一番重要なのは、AI回答の有無で自社の売上・利益が左右されているかどうか。ここを把握いただいて、「影響がありそうだ」となって初めて、要因としてのAI回答や、その説明変数になっている自社サイト・外部サイトの中身に話が進む。「流行りだからやりたい」ではなく「ビジネスにどうつながっているか」をまず整理する。その上で初めて、AI検索対策に取り組むかどうかという話が生まれてきます。順番が逆になると、続かないんです。
― 「今どのように選ばれているか」を把握できていない段階の企業様も多いように思います。そういう場合はどう進められるのでしょうか。
出田:これは非常に難しい領域です。大きく2択あって、1つはサードパーティーデータを持っている会社に相談して影響度を推定していくか、もう1つ - 個人的にはこちらを推奨しているんですが - 直接ユーザーに聞いてしまう、ですね。
デプスインタビューを行うか、問い合わせフォームの「自社を知った経緯」の項目に「生成AI」を追加するか。直接ユーザーに聞いて、AIの影響度を推定していく。これが一番いいと思います。
【図8】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
直接計測できるAI経由のCVだけでは影響度は限定的に見えるが、アンケート調査などで計測できる「AI回答がきっかけとなったCV」は、それ以上の規模で発生している。だからこそ「AI回答内でのブランド名露出『量』と『質』へのアプローチ」が必要(出典:PLAN-B Marketing Partners)
【補足】「やらない判断」を支えるサービスラインナップ
出田氏のスタンスは「お客様が抱える課題に合わなければ提案しない」。市場には「AI検索対策をやらなければ取り残される」という空気感もある中、「やらない判断」を顧客と共有できる関係を、どう築いているのか。
「やらない判断を提案できる背景は、PLAN-Bマーケティングパートナーズ自体のサービスラインナップにあると思っています。もしSEOやLLMOしかサービスがなかったら、それらをご提案せざるを得なくなります。でもウェブ広告もあれば、媒体も多く取り扱っていますし、SNSもあるし、ウェブマーケティング全般をサービスとして取り扱っているので、お客様の目的から逆算した時に落とせる手段が割と多い。なので、SEOやLLMOを売りたいというよりは、持ち合わせているサービスラインナップでお客様の目的達成をしたい、というスタンスに近い」
さらに、SEOやLLMOというサービス特性そのものが、合意形成の重要性を高めているという。「広告運用代行は実行主体が私たちなので、私たちが頑張れば結果が出せます。でもSEOやAI検索対策は、お客様に動いていただく必要がある。AI検索対策がビジネスにつながっているという合意形成ができていないと、お客様に動いていただくことは難しい。結果が出なければ我々との契約も続かない。お互いにとってアンハッピーだなと思っています」
PLAN-BマーケティングパートナーズのLLMOコンサルティングサービス
- 「やらない判断」も含めた顧客志向型のコンサルティングサービスとして、企業の事業フェーズに応じた支援を展開している。サービス詳細は公式LPを参照されたい。
サイコロの比喩で理解する、確率的なAI回答との向き合い方
― noteで「対策としてやるべきことをすごく簡単に言えば、AIに『この会社はこういう会社だ』と正しく理解してもらい、回答の候補に入れてもらうこと」と整理されていました。一方で、専門家コラム「ZMOTの構造が変わる - AMOTとダークファネル」では、計測の困難さと向き合うアプローチも示されています。実際の支援現場では、この不確実性とどう付き合いながら、クライアント側との意思決定を進められているのでしょうか。
出田:ご提案時にまず、「計測できます」ではなく「推定できます」とお伝えするようにしています。トラフィックは計測できますが、「言及」や「参照」は推定しかできない。そこを最初に明確にお伝えします。
それでも、経営層の方とお話しすれば、不確実な中でも推進できることが多いんです。なぜなら、そもそもビジネス自体が不完全情報ゲームだから、というのが私の持論です。マーケットも、競合他社の戦略・戦術も厳密にはわからない。断片的な情報をクロス3C(顧客・競合・自社を掛け合わせる視点)の観点で整理して、自社はどうするかを決めていくのがビジネスだと考えています。
その向き合いを日々やっている決裁者レイヤーの方からすると、AI検索対策において「推定です」という話は「ビジネスだからそりゃそうだよね」と腹に落ちる話なんです。
逆に、決裁レイヤーと担当レイヤーの距離が遠くて、担当レイヤーが上に上がらなければいけない、というケースだとなかなか苦しい。「推定データなんですけど」を上司に説明しづらいですよね。なので、できるだけ早い段階で決裁権を持っている方、ビジネスの責任を持っている方を巻き込んでお話をするのが重要だと思っています。
― AI検索における「対策しよう」という時に、検索結果が二回検索しただけでも変わるなど、パーソナライズもあって、対策のしようがあるのか不安に思う方も多いと思います。これに対するアプローチがあれば伺いたいです。
出田:ゼロイチの世界ではなく、確率的な挙動を、複数回の観測によって推定していく世界としてアプローチするのが正しいと考えています。
LLMの仕組みをかなり簡略化して言えば、入力された文脈に対して、次に出すトークン(言葉のかたまり)の候補に確率分布を持たせながら、回答を生成しているわけです。
例えば、少し重心が偏っていて、各面が6分の1で出ないサイコロがあったとします。1回振ってみて6が出なかったとしても、その1回の試行だけで「このサイコロは6が出ないように設計されている」とは言えないじゃないですか。試行回数を増やして、確率的に各面が出る確率を見ていく必要がある。
「言及」も同じです。1回・2回叩くだけでは結果が揺れうるので、複数回叩いて「何回中何回言及されたか」という観測頻度で説明するのが重要です。
ただし、ここで注意すべきなのは、AI回答の場合、同じサイコロを毎回まったく同じ条件で振っているわけではないということです。プロンプト、会話履歴、ユーザーの状況、地域、参照されるウェブ情報、モデルの更新などによって、サイコロの偏りそのものが変わることがあります。
たとえば、「こういう状況のユーザーがこう質問したら」というプロンプトを組み、その中でどの程度言及されるかを把握していく。そうすることで、完全な計測ではありませんが、一定の条件下におけるAI回答上の露出傾向を推定することはできます。
もちろん、それでも推定の域は出ません。パーソナライズも効いていますし、AI側の挙動や参照情報も変わり得るからです。ただ、「対策しようがない」と諦めるのではなく、条件を設計し、複数回観測し、確率的な傾向として捉える。この意味合いでの「確率的なアプローチ」はできると思っています。
― 「対策しようがない」のではなく、「確率論として向き合う」ということですね。
出田:直近で多いご相談として、「そもそも、どんなプロンプト対策をすればいいんですか」というのがあります。 弊社がいま力を入れて入れているのは、「事業戦略との接続」の部分です。AI検索対策には以下の2段階があります。
- (1)どうやってAI回答の言及量を増やし、質を変えるか
- (2)どんなAI回答になればビジネスが伸びるか
元々は前者ばかりが議論の中心でしたが、ここは業界として収束しつつあると感じています。
一方で、後者の"どんなAI回答ならビジネスが伸びるか?"は、かなりセンスが問われる部分です。事業の強みをどのように捉え、ユーザーの意思決定がどういう軸でなされているかを捉え、AIの推奨がどのような判断軸でなされているかを捉える。それらを複合的に考えて、「自社はこういう軸でこのように評価されれば結果的にビジネスが伸びる」という設計をする。そして、この量と質を本当に変えようとすると、SEO担当だけでは届かない。広報・PR、広告、経営層などさまざまな担当社を巻き込む必要が出てくる。だからこそ、組織の話になるんです。
【図9】(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
「ウェブ全体における自社情報の最適化」のためには、自社サイトの情報だけでなく、他社や既存顧客が発信する外部サイトやSNSでの自社情報にもアプローチする必要がある。AI検索対策は、SEO・メディアタイアップ・デジタルPR・TVCM・イベントなど、オンライン・オフラインを含めた総合戦である(出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ)
後編で扱うテーマ
後編では、AI検索時代に成果を出す企業の組織体制、部門横断で動ける組織の条件、企業文化と競争戦略の関係、出田氏のキャリア、そしてAI検索対策・エージェンティックコマース・AXへと広がる3〜5年先の構想を伺う。
6月xx日公開予定
AI時代のSEOは「ブランドが選ばれる理由」の再設計に向かう PLAN-Bマーケティングパートナーズ馬谷達也氏による3視点検証と側面別KPI
AI検索対策をさらに深く理解するための関連リソース
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書籍『60分でわかる!LLMO超入門』(技術評論社) 出田晴之氏が「冷静な視点」を体系的に整理した最新刊。
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PLAN-Bマーケティングパートナーズ LLMOコンサルティングサービス出田氏が率いる、生成AIブランディング・LLMOコンサルティングの専門サービス。
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズについて
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズは、19年以上の歴史を持つSEOコンサルティングサービスを中核に、Google Premier PartnerおよびYahoo! JAPANセールスパートナーを取得したウェブ広告運用、コンテンツマーケティング、ウェブサイト制作、生成AI時代に対応するLLMOコンサルティングサービスまで、デジタルマーケティング戦略の立案から施策実行までをワンストップで支援。事業フェーズや規模に応じた最適なソリューションで、企業の売上拡大に貢献します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| URL | https://www.pbmp.co.jp/ |
| 会社名 | 株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ |
| 取扱業務 | SEOコンサルティング、生成AIブランディング/LLMOコンサルティング、ウェブ広告運用、コンテンツマーケティング、ウェブサイト制作 |
『60分でわかる!LLMO超入門』
LLMOを“ウェブ上のブランドマネジメントそのもの”と捉え直し、SEO・PR・広告・SNSといった施策を横断しながら、AIに選ばれるための“信頼と評判”をいかに構築するかという本質から、その考え方と実践方法を体系的に整理した1冊。AI検索対策をめぐる過度な不安に対し、「冷静な視点」を提供してくれる。60分で全体像をつかめる入門書として、まさに2026年担当者必読の書である。
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