研修は「骨組み」だけでは完成しない
研修を成功させるために欠かせないのが、日々の運営業務だ。カリキュラムという骨組みがあっても、それを現場で機能させるのは運営チームの仕事である。今回は、コードキャンプのラーニングソリューション事業部で研修運営を担当する笠原さん、鈴木さん、鴫原さんの3名に、運営という仕事の実態について話を聞いた。
笠原 輝
コードキャンプ株式会社
ラーニングソリューション事業部 研修運営担当
鈴木 菜生
コードキャンプ株式会社
ラーニングソリューション事業部
研修運営担当
鴫原 杏奈
コードキャンプ株式会社
ラーニングソリューション事業部
研修運営担当
目次
運営の仕事は「受講者対応」「管理者対応」「講師対応」の3方向
※管理者:研修を企画・導入されるご担当者(人事・育成担当者)様
まず運営の役割について尋ねると、鈴木さんは次のように整理した。
「切り口としては、受講者対応、管理者対応、講師対応の3つがあります。朝会や夕会は受講者対応にあたりますし、管理者の方とのやり取りは管理者対応、講師の方へのサポートは講師対応です」
— 鈴木さん
カスタマイズ研修の場合、運営はキックオフの前段階から関わり始め、管理者との事前のすり合わせも運営の仕事だという。
「営業メンバーが研修のゴールや予算という骨組みを作り、運営メンバーはそこに人の形の肉付けをしていくイメージです。方向性はある程度決まっているので、それをどう実現するか、Howの部分を詰めていく仕事です」
— 鈴木さん
「カレーの例え」に込められた運営の役割
この役割分担を、鴫原さんは料理に例えて説明する。
「お客さまが『1,200円でカレーを食べたい』とおっしゃったとき、それがチキンなのかビーフなのか、タイカレーなのかインドカレーなのか、といった大枠と予算は決まった状態で運営に渡されます。”カレーは温かいうちに”ご飯と一緒に”というざっくりした条件はあっても、ニンジンをどのくらいの大きさに切るか、他に具材を入れるかといった細部は運営が決めていきます。そのレシピと分量を運営が固めてから、実際の調理、つまり研修の実施に入ります。この詳細設計の完成度が、そのまま研修の満足度につながっていると感じています」
— 鴫原さん
笠原さんもこの認識に同意し、実務では商談段階からの引き継ぎが運営の質に直結すると話す。
「提案からそのまま自分が運営に引き継ぐと、お客さまが考えている懸念や意図を含めて、そのまま運営に活かせます。これは社内の共有コストという面でも良い点だと感じています」
— 笠原さん
パッケージ研修とカスタマイズ研修、運営の関わり方の違い
研修形態によって、運営の関わり方は大きく異なる。
「パッケージ研修はそもそも運営があまり目立たないという特徴があります。最初のキックオフでオリエンテーションを行った後は、基本的に問い合わせがあれば対応する形です。朝会・夕会・チアリングは基本的に含まれず、必要な場合はオプション対応になります」
— 鈴木さん
「運営設計を含めてしっかり考えたいのであれば、カスタマイズ研修をおすすめしています」
— 鈴木さん
受講者対応・管理者対応・講師対応という3方向の運営が深く関わるのは、主にこのカスタマイズ研修だという。
運営はすべての接点をつなぐハブ
日々の運営で意識していることを尋ねると、笠原さんは次のように答えた。
「まず大事にしているのは、なぜ自社に依頼してもらっているのか、その背景を考えることです。社内に教育のリソースがない、知識がない、といった理由はさまざまですが、そこで感じている懸念をシンプルに払拭できるよう意識しています。加えて、受講者が現場に配属されたときにどうなっていたいか、そのゴールを見据えてチアリングやサポートを行うようにしています」
— 笠原さん
鴫原さんは、人事担当者との関係づくりを重視していると語る。
「私が意識しているのは、人事の方といかに伴走できるか、同じ感覚を持てるかということです。人事の方は本来、研修を自分たちで実施できるだけの知見や経験を持つプロフェッショナルです。それでも外部に依頼するのは、割けるリソースがないなど事情があるからで、なぜ自分たちで研修をしないのか、自分でやるとしたら何をしたいと思っているのか、そこを丁寧に聞くようにしています。同じ温度感、同じ目標で取り組めることを大切にしています」
— 鴫原さん
鈴木さんは、運営の存在をこう表現する。
「運営は、営業やチーム内、受講者、管理者、講師といったすべての接点をつなぐハブのような存在だと思っています。受講者と管理者で意見が食い違うこともあれば、講師と受講者の意見が異なることもあるので、それらを集約して前に進める橋渡し役を意識しています。全員が同じ方向を向けるように、そして研修が円滑に進むようにに道筋を整えることも大切にしています」
— 鈴木さん
朝会・夕会・質問会が果たす役割
運営が担う代表的な仕組みが、朝会・夕会・質問会だ。質問会について笠原さんは次のように説明する。
「質問会は企業によって形式が異なりますが、オンラインで講師1人に対して受講生が自由に質問する形や、決まった時間に全員で集まって質問を募る形などがあります。質問会に限らずチャットサポートも含めて、基本的にオープンな場で行うことを意識しています。受講生が学んでいる範囲はほぼ重ならないことが多いので、他の受講生の質問を見ることでのナレッジ共有にもつながります」
— 笠原さん
一方、朝会・夕会の目的は企業によって一様ではないと鴫原さんは話す。
「企業によって朝会・夕会の目的が違うので、一概にこれを目的にやっていますとは言い切れません。研修に慣れていない新卒社員の緊張を和らげるために話す機会をつくることもあれば、リモート環境で同期や先輩とのつながりが薄れがちな状況をカバーするために、横のつながりをつくる目的で行うこともあります。朝会・夕会も質問会もチアリングも、受講生同士の横のつながりをつくるという意味では共通していると感じています」
— 鴫原さん
企業ごとに柔軟な研修メニューを組む
朝会・夕会の一部を自社で担い、残りを外部に任せたいという企業もある。
「そうした切り分けができる研修メニューの柔軟性は、管理者にとって依頼しやすい点だと思います」
— 笠原さん
「パッケージのように朝会・夕会・チアリングをやると言っても、どこまでタッチポイントを持つか、どのレベル感まで入るかは柔軟に対応できます。企業がやりたいことをそのまま再現することもあれば、やりたいことが定まっていなければ私たちのノウハウを提案し、ディスカッションしながら着地点を決めています」
— 鈴木さん
一方で、提案の匙加減については振り返るべき点もあったと鈴木さんは打ち明ける。
「とある企業様の運営を担当した際、率直な感想を伺ったところ、『やりたいと思っていたことは全て叶えてもらえた』と大変嬉しいお言葉をいただきました。
その一方で、いただいたご要望を形にするだけでなく、私たちから『もっとこういう仕掛けも提案できたのではないか』という伸び代も見つかりました。先方からも『次回はもっとお互いにアイデアを出し合いたいね』と温かいフィードバックをいただき、次回への大きな糧となっています」
— 鈴木さん
管理者から見た価値 ── 多角的な視点で受講生を観察する
運営メンバーが入ることで、受講生をどう観察できるようになるのか。鈴木さんはこう説明する。
「社内の人方から見た視点、教えている講師から見た技術的な視点、そして少し引いた立場で見ている私たち運営メンバーの視点が合わさることで、この人はこういう人だ、こういうふうに活躍できると思う、というところまで一人ひとりを見られます。ここはCodeCamp研修の大きな強みとなっていると思います」
— 鈴木さん
「アバウトページに書かれている『技術面だけでなく社会人としてのヒューマンスキルも定点観測の対象とし、現場での活躍を見据えた多角的なフィードバックとフォローアップを実施』という内容は、まさにこの取り組みを指しています」
— 鈴木さん
こうした関係づくりに明文化されたコンセプトがあるわけではないという。
「接点が多ければ多いほど、受講生への理解が立体的になり、厚みを持つと思っています」
— 鈴木さん
立ち上げ研修が要になる
現場で最も気をつけているフェーズを尋ねると、笠原さんは立ち上げの重要性を強調した。
「コードキャンプで研修をやると聞いてから、どんな研修をやるのか分からない状態のままオリエンテーションに入る、というのが受講生の多くのマインドだと思います。そこをうまく研修のレールに乗せる立ち上げの部分は非常に重要です。ここがふわっとしていたり、なんとなく始まってしまったりすると、後になって研修の質が徐々に落ちてしまう感覚があります」
— 笠原さん
受講者の変化をどう捉えているか
コードキャンプには、受講生自身も進捗を確認できる受講生管理システム「CodeCamp Insight(以後、CCI)」がある。傾向によってつまずきやすいパターンがあるという認識について、鴫原さんは次のように振り返る。
「進捗が早い場合でも、理解が伴っていない可能性があります。そうしたケースでは講師が口頭で確認するなどして、CCIを使って進捗や発言数を確認し最終的には人が判断して身についているかを確かめるようにしています」
— 鴫原さん
ヒヤリとした経験と、口頭試問を導入した理由
現場でのエピソードとして、鴫原さんは過去の出来事を振り返る。
「以前、受講生が実際には学習しないまま『学習済み』のボタンだけを押していたケースがありました。当時は課題提出が任意になっていたことに加え、生成AIの利用状況を十分に確認できていなかったことも背景にあります。教科書は読んだけれど、実際にはコーディングをAIに任せっ放しで自分でひとつも書けない・判断できないことが後になって分かりました。この経験を踏まえて、各章にドリルを設け、クリアできているか、何回間違えたかを可視化できる仕組みを導入しています」
— 鴫原さん
同様の課題から生まれたのが、口頭試問だという。
「生成AIで最終提出課題を完結させてしまった受講生がいたことがきっかけで、口頭試問を導入しました。教科書からのインプットに加えて、学んだ内容を自分の言葉で説明できるかどうかを確認する狙いがあります。実際に声に出して説明しようとすると、理解が追いついていないことがはっきり分かる場面が多く、有効な取り組みだと感じています」
— 笠原さん
具体的にどのように行われているのか、鈴木さんが説明する。
「口頭試問は、講師が受講生に質問し、その回答内容や理解度をシートに記録する形で行っています。何を、どういう意図で聞いているか、受講生がどこまで説明できたかを運営側も記録し、フィードバックに活用しています。一対一で行うので緊張感が生まれ、理解度をより正確に把握できます」
— 鈴木さん
新入社員研修と既存社員研修の違い
新入社員研修と既存社員研修とでは、注意点も異なる。
「新入社員研修では、敬語の使い方やオンライン会議の画面操作など、社会人としての基礎的なスキルから教える必要があります。こうした基礎的なビジネスマナーは、業種にかかわらず研修の中で提供しています」
— 鈴木さん
一方、既存社員研修には別の難しさがあるという。
「既存社員研修では、他社の状況と比較したご相談への対応が難しい面があります。新入社員研修はスキルレベルのパターンが似通いやすく比較がしやすいのですが、既存社員は前提となるスキルレベルの幅が個人ごとに大きく異なるため、比較できる事例が少なくなります」
— 笠原さん
「新入社員研修はスキルレベルのパターンが似通いますが、既存社員はそもそもスキルレベルのパターンの幅が広くなるので、比較する例が少なくなる感覚があります」
— 鈴木さん
時代とともに変化する研修の前提条件
研修設計における難しさの本質は、今も昔も変わらないと鴫原さんは話す。
「企業ごとに事情が異なりますし、難しさの本質は今も昔も同じだと感じています。オンラインへの完全移行や、採用する新卒の基準・人数の変化など、前提条件が変わると、これまでと同じようにはいかない難しさがあります」
— 鴫原さん
「前年踏襲が効かないという点が、一言で言うと難しいところです。前提条件が変わるパターンもありますし、そもそも人が入れ替わっているので、前年と同じようにはいかないと考えておいた方がいいと思っています」
— 鈴木さん
生成AI時代における運営の役割
生成AIの登場によって、運営の仕事はどう変わったのか。笠原さんは次のように話す。
「質問のしやすさという点では、正直あまり変わっていない印象があります。CodeCampのAIチャットサポートを使うメリットが、受講生にまだ十分に伝わっていない可能性があり、その価値をしっかり伝えていく必要があると感じています」
— 笠原さん
鈴木さんは、受講生ごとの感覚の違いに触れる。
「人と話したい人、テキストでのやり取りを好む人、講師とあまり関わりたくないという人など、受講生によって感覚はさまざまです。生成AIという選択肢があること自体は、研修運営にとってプラスだと考えています」
— 鈴木さん
研修を検討している方へ
最後に、研修の導入を迷っている企業に向けて、3名にメッセージを聞いた。
「まずは気軽に相談してほしいと思っています。弊社コードキャンプでは、オンラインでもオフラインでもハイブリッドでも対応できますし、お客さまの状況に合わせて提案できるので、どんな環境でもサポートします」
— 笠原さん
「研修運営や受講生のサポート、メンタルケアといった業務を外部に任せることで、研修管理者の方が本来注力したい採用活動・広報や人材開発などの業務に、より多くのリソースを割けるようになると思います」
— 鈴木さん
「AIやデータの時代だからこそ、人と人とで仕事を進める訓練ができるという点に価値があると考えています。講師も、サポートする運営メンバーも人であることには意味があります」
— 鴫原さん
研修の実施を迷っている、あるいは自社に合った研修の形を模索しているという方は、まずはコードキャンプの研修運営チームに相談してみてはいかがだろうか。
配属先を問わず通用する、新人育成を。
コードキャンプでは企業の課題や育成目標に合わせて、新入社員をはじめ、中途社員や既存社員に対して、プログラミングや生成AI活用・DX人材育成・プロジェクトマネジメントなど、実務に直結する研修を設計・提供しています。カスタマイズ研修から汎用パッケージまで、目的や体制に応じてご提案します。
