2026年4月22日、東京・新橋で開催された「第3回Ahrefs日本ユーザーミートアップ」のセッション2に登壇したのは、株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ SEO専門執行役員の馬谷達也氏だった。テーマは「AI時代、SEOは何のためにやるのか 〜これからのKPIとその考え方〜」。
目次
スピーカー
専門執行役員 SEO戦略室 室長
直前のセッションで、同じ領域でサービスを提供する株式会社LANY 代表取締役CEOの竹内渓太氏が「LANY式LLMOフレームワーク」を披露したばかりだった。
馬谷氏は冒頭で「竹内さんの話を聞きながら震えていた。スライドの内容は割と被っている」と会場を沸かせた上で、「コンペでもよく顔を合わせるライバルであり、経営者仲間でもある両社が、同じテーマで対照的な思想を語る機会は珍しい」と今回の構図を自ら位置づけた。「宗派」は確かに違う — そう前置きした上で、馬谷氏のセッションは独自の角度でAI検索対策を整理する内容となった。
馬谷氏はSEO分野で約16年、特に2016年以降はPLAN-BマーケティングパートナーズのSEO事業責任者を務めてきた実務家。業界内で表立って登壇する機会が多いタイプではなかったが、PLAN-Bグループのサービス設計や現場コンサルティングを中核で支えてきた人物だ。本記事では、馬谷氏が提示した「SEO衰退論の検証」から「未来予測」、そして「新しいKPIの型」までを詳しく追う。
「SEOは衰退するのか」を3視点で検証する
馬谷氏は冒頭、現在のSEO業界に存在する議論を「SEO is dead派」と「SEO is not dead派」の対立として整理した。論点は主に3つある。
- 検索面:自然検索はAI検索に置き換わるのか、両立するのか
- 検索回数・トラフィック:ゼロクリック検索で流入は減るのか、質は維持されるのか
- 対策方法:AI検索のために独自の対策が必要か、従来SEOの延長で済むのか
PLAN-Bマーケティングパートナーズは2つの軸では明確に「衰退しない派」、1つの軸では「条件付きで対策を差別化する派」という、両方を手がける代理店らしい現実路線の立場を取る。以下、それぞれ見ていく。
視点①:検索面 — 自然検索とAI検索は両立する
日経クロストレンドが約500名を対象に行った調査によると、生成AIの推奨を他媒体で「確認」するユーザーは約9割存在する。そのうち検索エンジンで確認している人は57.0%にのぼる。AI推奨がそのまま購買につながるのではなく、確認プロセスを経ているというわけだ。
PLAN-Bマーケティングパートナーズでも独自にこの消費者行動モデルを提唱している。Prompt(AIへの問いかけ) → Review(検証)を含む4ステップのプロセスを「PRCA」と呼び、AI検索後の検証プロセスを明示的にモデル化している。
さらにPLAN-Bマーケティングパートナーズ独自の調査では、「生成AI以外で情報を検証しない」と答えたユーザーはわずか2.6%。裏を返せば97.4%が何らかの形で検証を行っており、そのうち検索エンジンを使う人は86.8%に達した。このデータから馬谷氏は「検索面において、自然検索とAI検索は明確に両立している」と結論づけた。
視点②:検索回数・トラフィック — 全体は増、一部は減
検索回数については、米調査会社の試算でGoogleの2026年の年間検索数が5.9兆回に達する見込みとされ、前年比+18%の成長とされている。
ただし、実際のウェブサイトへのトラフィックは別問題だ。Ahrefsが公開した「AI versus Search Traffic Analysis」によれば、2025年6月には493.7Mあった月間トラフィックが、2026年3月には413.7Mへと約83.8%の水準に減少している。
馬谷氏はここで重要な留保を入れる。「全体としてトラフィックは維持されている、コンバージョンは減っていない、むしろ質が上がっているという議論は、昨年の自分も支持していた。
ただし現場で顧客を見続けていると、一部のサイトでは10〜30%のトラフィック減少が実際に起きており、ビジネスに影響が出ている。全体で問題ないことは、部分で何も起きていないこととは違う」と、理論と現場の温度差を率直に語った。
また、AI検索経由の問い合わせ — いわゆる「ダークファネル」もPLAN-Bマーケティングパートナーズ自身の問い合わせ経路データで約15%を占めている。この数字は直前のセッションでLANYが示した約21%とも整合的で、業界横断で一定の比率でAI経由の認知が発生していることが裏付けられる。
PLAN-Bマーケティングパートナーズ独自調査では、「生成AIとの対話をきっかけに商品の購入や行き先を決定したことがあるか」という問いに対し、商品購入で42.7%、行き先決定で43.3%が「はい」と回答。
- 商品の購入・・・はい 42.7%
- 行き先の決定・・・はい 43.3%
総じて4割以上のユーザーが、生成AIをきっかけとした意思決定を経験している。AI経由の認知・購入決定経路が一定の規模で存在することは、複数の経路で裏付けられている状況だ。
視点③:対策方法 — Google公式と代理店目線のギャップ
2025年11月、Google公式が開催した「Search Central Live Tokyo」で、GoogleのGary Illyes氏が「AI OverviewやAIモードに独立したSEO対策は不要。従来の基本に忠実なSEOがもっと効果的」と発言した。馬谷氏はこれに「技術論としては同意」と前置きしつつ、代理店としての現場観をこう補った。
「ウェブマーケティング全体を統括してSEOに取り組めている企業にとっては、Google公式の見解通り『従来通りでいい』。しかし、日本のSEO担当者の実態として、予算の制約などで理想の100%の取り組みができている企業は多くない。そこからすると、AI検索対策のために何の優先度を上げるかという点では、従来SEOと違う判断が必要な場面は確実にある」
つまり技術的には同じ土俵でも、限られたリソースを配分する優先度という観点では違いがあるという見立てだ。SEOとAIの両方に改善余地があれば、馬谷氏はまずSEO課題を優先する、もしくは両者共通の課題から着手する。AI検索のみに特有の課題は、優先度として最後に回す — これが馬谷氏のスタンスだという。
SEOのインセンティブ構造は「クリック」から「認知」へと拡張する
3視点の整理を踏まえ、馬谷氏はSEOの役割そのものが変質しているという論点に進む。
従来のSEOは、検索エンジンの評価が上がる → サイトへクリックされる → 流入が増える、という一直線のインセンティブ構造で動いていた。
AI時代に加わるのは、AIによる言及・引用を通じた認知の獲得である。AIの回答の中でブランドが頻繁に取り上げられるようになれば、ユーザーは検索エンジンで指名検索したり、直接サイトに訪問したりする。従来のラストクリック型のトラッキングでは捉えにくいが、確実にブランド資産として積み上がっていく経路だ。
馬谷氏はこれを「SEOとは、ユーザーやAIにサイトやブランドを見つけられやすくすること」と再定義する。その役割はAI時代においてむしろ拡大しており、自然検索上位表示はAI検索対策にも有効に機能する、という見解を提示した。
この拡張により、最適化の範囲も変わる。オウンドメディア中心の従来SEOから、ペイド・アーンド・シェアードを含むPESOメディア全体の最適化へと広がっていく。もともとSEOの一丁目一番地はオウンドメディアだったが、ペイド・アーンド・シェアードメディアの取り組みを後回しにしてきた企業は、対策範囲を広げないと業界によってはオウンドメディアでも勝てなくなる可能性がある、と馬谷氏は警鐘を鳴らした。
未来予測 — 「検索力の低いユーザー」がいなくなる世界線
セッションの中盤、馬谷氏は自身の未来予測を明示的に提示した。AI検索対策は短期的には先行者利益があるがかもしれないが、持続的な取り組みこそが効いてくるという。
そのカギとなるのが、SEOの歴史でも繰り返されてきた「量ではなく質」という軸の転換だ。 馬谷氏が描く世界線は、「検索力・情報リテラシーの低いユーザーがいなくなっていく」というものだ。どういうことか。
自然検索は、検索意図が明確で、自分の力で十分以上の検索ができるユーザーが使い続ける。従来から検索リテラシーの高いユーザーの検索行動は変わらないだろうし、AI検索で一定の当たりをつけた後に指名検索したり、意思決定のために詳細な検索をしたりする層も残る。
一方AI検索は、AIとの対話によって意図が補完・詳細化されていく場として機能する。ユーザーが入力したざっくりしたプロンプトを、AIがユーザーに代わって詳細なサブクエリに展開し、情報を収集・整理する。学習モデルはそのユーザー個人への最適化も進める。結果として、かつては検索スキルが不足して必要な情報にたどり着けなかったユーザーも、AIの補助によって十分以上の検索精度を得られるようになる。
この変化に応じて、サイト運営者に求められる対応は「詳細なサブクエリに対してマッチ度の高い詳細情報の発信」になる。
ここで馬谷氏が強く釘を刺したのは、「網羅的に大量情報を発信すればいい」という発想は誤解だという点だ。AIが情報を取捨選択する時代には、単に情報量を増やしてもブランドが推奨されなかったり、引用はされても購入意思決定につながらなかったりする。「結局ユーザーは、本当にマッチ度の高いサービスにたどり着く。そちらが売れる」というのが馬谷氏の見立てだ。
PODの再設計 — 「選ばれる理由」を上書きする
では何が大事なのか。馬谷氏が示したのは、POD(Point of Difference)の再設計という答えだった。
顧客が求める価値・競合が提供できる価値・自社が提供できる価値 — この3つを重ね合わせて、「自社が選ばれる理由」をAI時代にふさわしい形で上書きする。
ただし、ニッチな市場の中でも収益が見込めるニーズを設定することが前提であり、そこに向けて適切に情報を発信することが、AIに選ばれ収益にもつながる道筋だと馬谷氏は整理した。
ターゲット設計も従来より緻密さが要求される。オウンドだけでなくペイドメディア全体での戦略計画が必要となるが、「自社が選ばれる理由を定めてから、そこに貼っていく」という考え方自体は、SEOの時代から本質的には変わらない。
AIに選ばれるために重要なのは、結局のところSEOが積み重ねてきた価値設計の延長線上にある、というのが馬谷氏のスタンスだ。
新しいKPI「側面別分析」の型
PODの再設計を実際に回すための可視化KPIとして、馬谷氏がPLAN-Bマーケティングパートナーズで運用しているのが「側面別分析」と「センチメント分析」の組み合わせだ。
AI検索対策のKPIとして、多くの企業は言及数・引用数といった「量」を追いがちだ。しかし馬谷氏は「量ではなく質の調査こそが重要」と主張する。自社ブランドが「どの側面で」「どのように」言及されているかを可視化することで、PODとマッチする領域で自社が強く言及されているかを評価できる。
側面とは何か。例えば冷蔵庫なら、「収納力・サイズ・費用」「耐久性・信頼性・故障対応・メンテナンス」などが購入検討時の評価軸になる。ユーザーが購入判断に使う主要な評価軸を棚卸しし、各側面に自社・競合がどれだけ登場するかを集計する。
具体例として馬谷氏が示したのは、冷蔵庫の側面別集計だった。
側面:収納力・レイアウト・設置適合性
- 自社ブランド:100件言及中、ポジティブ36件(36%)
- ブランドA:150件言及中、ポジティブ7件(約4.7%)
- ブランドB:65件言及中、ポジティブ7件(約10.8%)
この側面では、言及件数ではブランドAが最も多いが、ポジティブ率では自社が圧倒的に高い。AIから「収納力」の評価軸で強いと認識されている可能性が見えてくる。
側面:耐久性・信頼性・故障・メンテナンス
- 自社ブランド:86件言及中、ポジティブ1件(約1.9%)
- ブランドA:332件言及中、ポジティブ269件(約80.9%)
こちらではブランドAが圧倒的に優位だ。この結果から自社の打ち手は2方向に分かれる。
ひとつは、「耐久性」の側面は競合が強いため、そもそもPODの候補から外すという判断。
もうひとつは、実は自社製品は耐久性でも劣っていないのであれば、AIの学習に十分なファクトをウェブ上に配置していない可能性がある(発信の弱さ)という仮説だ。
判断材料を2つの仮説に分解して示してくれるのが、側面別分析の価値だと馬谷氏は語った。
センチメント分析の実装と、日本語特有の難所
各側面内で「どのような論調で言及されているか」を判定するのがセンチメント分析だ。AIの回答テキストから評価に関わるフレーズを抽出し、側面に分類、論調(ポジティブ/ネガティブ)をタグ付けしていく。
例えば「ツールAは操作が直感的に使いやすいが、費用はやや高い」という回答があれば、
- 「操作が直感的に使いやすい」→ UI・利便性の側面、ポジティブ
- 「費用がやや高い」→ 価格の側面、ネガティブ
という具合だ。自社・競合の全言及を集計し、側面別のポジ・ネガ分布を可視化する。調査にはAhrefsのBrand Radarのブランドデータを活用し、言及のピックアップ → 側面抽出 → グルーピング → 自社・競合分析というフローで進めている。
ただし、この実装には日本語特有の難所があると馬谷氏は明かす。
「高い」というワードは、「効果が高い」ならポジティブ、「価格が高い」ならネガティブと意味が逆転する。単語単体では判定できない。
「おすすめ」のような一見ポジティブに見えるワードも、「寝る前の使用がおすすめ」のように「利用シーンの推奨」として登場すると、商品のおすすめとは意味が違う。この区別をミスると分析がブレる。
金融業界の「リスク」は、投資結果の予測ボラティリティを指す中立的な用語であり、日常会話の「危険」のようなネガティブな意味ではない。業界によっては同じ単語でも意味が大きく異なる。
これらに対してPLAN-Bマーケティングパートナーズでは、調査サイトごとに辞書を作成し、ある程度の効率化を進めつつ最終的には手動チェックを組み合わせて精度を担保している。
「サービスとして提供している以上、精度の問題で人手のチェックは免れない」と馬谷氏。まずはAhrefsのBrand Radarで自力でトライし、難所にぶつかればPLAN-Bマーケティングパートナーズに相談してほしい、とセッションを現場の温度感で締めくくった。
書籍「60分でわかる!LLMO超入門」発売
セッションの最後に告知されたのが、技術評論社から4月27日に発売される書籍『60分でわかる!LLMO超入門』(PLAN-Bマーケティングパートナーズ 出田 晴之 著)だ。会場にはサンプル本が用意され、ネットワーキング時間中に立ち読みができる形が整えられた。
おわりに
馬谷氏のセッションを貫いていたのは、「SEOはこれからも終わらない。ただし、その役割と守備範囲は拡張している」という主張だった。自然検索はAI検索と両立し、トラフィックは全体として維持されるものの一部に影響が出る。対策方法は基本的にSEOの延長だが、リソース配分の優先度は確実に変わる。
未来予測として提示された「検索力の低いユーザーが減っていく」世界線では、サイト運営者はこれまで以上に詳細な価値提案を求められる。そのためには「網羅的な大量発信」という誘惑に乗らず、PODを精密に定義し、側面別・センチメント別に自社の立ち位置を測り続ける必要がある。
LANY竹内氏が「LLMOはSEOとは別の独立領域」と位置づけたのに対し、PLAN-Bマーケティングパートナーズ馬谷氏は「AI検索対策はSEOの役割拡張の延長」と位置づけた。対比される2つの思想は、アプローチの入り口こそ違えど、「詳細化するユーザーニーズと自社のマッチ度をどう設計するか」という帰結では重なっている。AI検索時代にブランドが選ばれるための設計は、結局のところこの一点に収斂していくのかもしれない。
第3回Ahrefs日本ユーザーミートアップ全体の概要、LANY 竹内渓太氏のセッション、Ahrefs CMO Tim Soulo氏によるLIVE Q&Aについては、それぞれハブ記事および関連記事をあわせて参照されたい。
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズについて
URLhttps://www.pbmp.co.jp/
株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズは、19年以上の歴史を持つSEOコンサルティングサービスを中核に、Google Premier PartnerおよびYahoo! JAPANセールスパートナーを取得したWeb広告運用、コンテンツマーケティング、Webサイト制作、生成AI時代に対応するLLMOコンサルティングサービスまで、デジタルマーケティング戦略の立案から施策実行までをワンストップで支援。事業フェーズや規模に応じた最適なソリューションで、企業の売上拡大に貢献します。
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イベントレポート
#AI検索の最前線
2026年4月、国内のマーケター、SEO実務者、事業責任者が新橋の会場を埋め尽くした「第3回Ahrefs日本ユーザーミートアップ」。定員100名の枠が即完売した本イベントでは、検索のルールが「クリック獲得」から「AIによる推奨」へと激変する今、私たちが打つべき次なる一手が見示されました。 本レポートでは、業界を牽引するフロントランナーたちが語った「独立した最適化領域としてのLLMO」や「選ばれる理由(POD)の再設計」、そしてAhrefsが提示する「AIエージェントによる次世代計測インフラ」の全貌を、全4回の連載形式で余すところなくお届けします。






