STマイクロエレクトロニクスは、産業機器の状態モニタリング向けに、センサ内AIを搭載した高性能振動センサ「IIS3DWB10IS」を発表しました。
IIS3DWB10ISが狙う産業機器の状態モニタリング市場
切断や成形、搬送、冷却といった工程では、回転と振動を伴う機器が広く使用されています。ベアリングの故障を事前に予測するなど、問題の早期検出によって装置の停止を予防することは、自動車やその他の製造業を含む幅広い分野で、生産フロー全体の最適化につながりました。Fortune Business Insights社によると、状態モニタリング技術の世界市場は9%超の年平均成長率を達成し、2032年には50億ドルを超える規模になると予測されています。
振動解析は、状態モニタリングの大部分を占める手法です。リモートでの状態モニタリングにより、予知保全や優先順位を付けたメンテナンスを実現できます。装置の稼働時間と動作効率を改善しながら、予期せぬ故障の発生を防止し、安全性の強化も期待できます。
IIS3DWB10ISの技術仕様と主な特徴
「IIS3DWB10IS」は、広い帯域幅で処理機能を組み込んだ初めてのデジタル振動センサです。ノイズフロアは、圧電センサに匹敵する35µg/sqrt(Hz)にとどまり、圧電センサと同等の精度と感度を備えながら、小型で消費電力が低く、電気・機械設計も簡略化できます。2048 x 80bitのFIFOレジスタと高精度の温度センサも搭載されています。
センサの主な仕様は以下の通りです。
- 周波数帯域:10kHz以上に対応
- ダイナミック・レンジ:最大200g
- 動作温度範囲:最大125°C
- ノイズフロア:35µg/sqrt(Hz)
- パッケージ:16リードLGA(4.5 x 4.5 x 1.5 mm)
- 長期製品供給保証:10年間
リードは、ウェッタブル・フランク構造のため、高品質の表面実装組立工程における光学検査を自動化しやすい設計となっています。2026年7月までに提供が開始される予定で、単価は1000個購入時に約25ドルとなります。
IIS3DWB10ISに搭載されたISPU 2.0の性能
「ISPU 2.0(インテリジェント・センサ処理ユニット)」は、リアルタイムの信号処理とAI処理をエッジ部で実行する新たなハードウェア・アクセラレータです。40MIPSおよび40MFLOPSのデジタル信号処理に対応し、前世代の最大4倍の処理性能を実現しました。センサ・インタフェースでは、MEMS回路と共に6倍のデータ転送速度も達成しました。
コアは、C言語でのプログラムが可能で、プログラム用とデータ用のRAMを内蔵しています。サポートするエコシステムには、FFTやフィルタリング処理、エンベロープ、速度重大度、異常検出といった標準的な振動モニタリングアルゴリズムが含まれます。
これらのアルゴリズムをISPU上で実行するためのソフトウェア・ライブラリも用意されました。
STのアナログ・パワー&ディスクリート・MEMS・センサグループ エグゼクティブ・バイスプレジデント兼MEMSサブグループ ジェネラル・マネージャであるSimone Ferri氏は、「高速信号処理とAI推論のための新たなハードウェア・アクセラレータとともに、ISPU 2.0を集積することにより、遅延や消費電力を抑えながら、装置の摩耗状態の認識精度を高めています」と述べています。
Bonfiglioli S.P.A社のCTO(最高技術責任者)であるAndrea Torcelli氏も、「ISPU 2.0プロセッサを集積し、複雑な信号処理と高速AI推論をセンシング素子の近くに配置しているため、よりスマートなシステム応答を実現できます」とコメントしています。
IIS3DWB10IS製品概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 製品名 | IIS3DWB10IS |
| カテゴリ | 振動センサ(MEMS) |
| 開発元 | STマイクロエレクトロニクス |
| 搭載プロセッサ | インテリジェント・センサ処理ユニット(ISPU 2.0) |
| 周波数帯域 | 10kHz以上 |
| ダイナミック・レンジ | 最大200g |
| 動作温度範囲 | 最大125°C |
| ノイズフロア | 35µg/sqrt(Hz) |
| 処理性能 | 40MIPS / 40MFLOPS(前世代比最大4倍) |
| データ転送速度 | 前世代比6倍 |
| FIFOレジスタ | 2048 x 80bit |
| パッケージ | 16リードLGA(4.5 x 4.5 x 1.5 mm) |
| 提供開始予定 | 2026年7月まで |
| 単価目安 | 約25ドル(1000個購入時) |
| 長期製品供給保証 | 10年間 |
STマイクロエレクトロニクス企業概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | STマイクロエレクトロニクス |
| 所在地 | 東京都港区港南2-15-1 |
| 従業員数 | 約49,000名 |
| 顧客数 | 約20万社以上 |
| 再生可能エネルギー目標 | 2027年末までに100% |
trends編集部の一言
状態モニタリング市場が9%超の年平均成長率で拡大し、2032年には50億ドルを超えるという予測は、製造業におけるデジタル化投資の規模感を改めて示す数字です。業界全体としては、センサ単体の精度向上にとどまらず、エッジでのAI処理によってクラウドへのデータ転送コストや遅延を削減する設計思想が主流になりつつあります。
データ処理の分散化という観点は、製造業に限らず業界横断で共通するテーマです。IIS3DWB10ISがISPU 2.0でセンシング素子の近くにAI推論を置く構造は、エッジAIアーキテクチャの方向性を象徴する設計と読み取れます。製造業分野では、2026年7月までの提供開始予定も、導入検討時期の目安として注目されそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「STマイクロエレクトロニクス、産業機器の状態モニタリングに最適なセンサ内AI搭載の高性能振動センサを発表 | STマイクロエレクトロニクスのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001553.000001337.html, (参照 26-06-05).
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