農業AIの開発企業が収穫ロボットの研究圃場とレンタルを用意、生産者は導入形態を見極める
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イチゴやキュウリの産地では、収穫の最盛期に人手が足りず、農業AIを組み込んだ収穫ロボットの導入を考え始めた経験はないでしょうか。ただし、収穫ロボットの取り組みには、研究用の圃場で試す段階のものと、産地へ貸し出して使う段階のものが混在しています。
この記事では、農業AIを使う収穫ロボットの研究圃場とレンタルの中身に加えて、営農判断をAIに任せる社会実験や導入形態を見極める確認点まで詳しく解説します。イチゴやキュウリの産地で人手不足に向き合い、農業AIの活用を検討している生産者の方は、ぜひ参考にしてください。
- この記事の材料:発表3件
- 発表主体:ABC株式会社、AGRIST株式会社
- 出典の最終掲載:2026.09.10
この記事がまとめた発表
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[1] イチゴ自動収穫ロボットの研究圃場を愛知県大府市に開設画像:発表資料より(PR TIMES)
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[2] 「AIに農業はできるか」、全ての営農判断をAIに任せる社会実験を9月10日から開始画像:ABC株式会社の発表資料より(PR TIMES)
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[3] 【北海道3JA・団体で展開】AGRIST、AI搭載自動収穫ロボットを深川市・新冠町・ホクレンでレンタル実施画像:AGRIST株式会社の発表資料より(PR TIMES)
農業のイチゴ収穫を自動化する研究圃場
イチゴは栽培にかかる労働時間のうち収穫と調製の割合が大きく、熟度の見極めや中腰の作業が生産者の負担になっています。愛知県大府市に整備する研究圃場では、次の2つを軸にしてイチゴの自動収穫を検証します。
- 自社で育てた2万株の収穫実証
- 熟度を判断するカメラとAIの方式
栽培から実証までを一つの組織で抱えることによって、失敗を前提にした試行と、条件のそろった学習データの取得を両立させる狙いです。
自社で育てた2万株の収穫実証
ABC株式会社は、イチゴ自動収穫ロボットの実証を目的とした約50aの研究用圃場を、愛知県大府市に開設します。高設栽培のハウスに約2万株を定植し、育苗から収穫までを自社で一貫して行うとしています。[1]
発表時点で示された進め方は、以下の通りです。
| 時期 | 予定の内容 |
|---|---|
| 2026年9月 | 研究圃場の整備に着手 |
| 2026年10月〜11月 | 約2万株の育苗と定植 |
| 2026年12月 | 自社栽培株で収穫の実証実験を開始 |
| 2027年以降 | 実証データをもとにした改良 |
生産者の営利圃場を借りる方式では、果実を傷つけるおそれのある実験は事実上行えません。そのため同社は、失敗を許容できる場を自前で持つ形を選んだと説明しています。
本事業は、愛知県の新あいち創造研究開発補助金に採択されています。品種には、栽培条件を調整しやすいよう種子から育てられる「よつぼし」を採用しました。
熟度を判断するカメラとAIの方式
研究圃場で開発するのは、カメラで取得した映像から果実の位置と熟度を認識し、収穫の可否判断から摘み取りまでをAIが一貫して行う方式です。自走式の車体と組み合わせ、ハウス内での自律的な収穫の実現を目指すとしています。[1]
この方式を支えるために圃場側でそろえる条件は、以下の通りです。
- 品種や定植時期の統一
- 整枝方法や栽培履歴の把握
- 果実の向きや隠れ方の収集
栽培条件をそろえた学習データを継続して集められるため、認識精度や収穫成功率の改善を続けられると同社は説明しています。さらに、どう育てればロボットが収穫しやすいかという栽培側からの改良を、同じ組織内で検証できる点も挙げました。
開発したロボットの販売や産地への普及は、100%子会社のアグリノード株式会社が担当する体制を築くと説明しました。
農業の現場で貸し出すAI搭載自動収穫ロボット
北海道は国内最大の食料供給地域ですが、道内の農業経営体数は5年間で16.4%減り、基幹的農業従事者も19%減っています。少人数で広い農地を支える産地における収穫ロボットの使われ方は、次の2つです。
- JAきたそらちなど3拠点のレンタル
- レール走行と誤収穫防止センサー
AGRISTは、高額なロボットを個々の農家が所有するのではなく、複数の農家や法人が必要な時だけ共同で利用する形の普及を進めるとしています。
JAきたそらちなど3拠点のレンタル
AGRIST株式会社は、2026年夏に北海道内の3拠点で、AI搭載キュウリ自動収穫ロボットのレンタルサービスを実施しました。2026年3月に深川市や株式会社HPRS、JAきたそらちと結んだ包括連携協定に基づく取り組みです。[3]
3拠点でのレンタルの実施内容は、以下の通りです。
| 貸出先 | 作物 | 期間 |
|---|---|---|
| JA新冠 | ピーマン | 6月29日〜30日 |
| ホクレン農業協同組合連合会 | きゅうり | 7月1日〜8月31日 |
| JAきたそらち | きゅうり | 7月2日〜10月31日 |
JA新冠は勉強会のための1日レンタルで、作物もピーマンでした。ホクレン農業協同組合連合会とJAきたそらちでは、きゅうりを対象に貸し出されています。
2025年秋にはJAきたそらち管内で実証実験を行い、養液やつる下し栽培での適応性を確かめたうえで、産地への貸し出しに進みました。
レール走行と誤収穫防止センサー
AGRISTのAI搭載自動収穫ロボットは、畝間のレール上を自走し、AIが収穫適期のサイズを判断します。対応する作物はピーマンやキュウリで、人手に依存してきた収穫作業の置き換えを狙う設計です。[3]
ロボットに備わる主な機能は、以下の通りです。
- 畝間のレール上での自走
- 収穫適期のサイズ判断
- 誤収穫防止センサーとカメラ
収穫ハンドは独自開発で、葉や蔓を切らないためのエラー防止技術が施されていると同社は説明しています。栽培設備の形がロボットの走行に合うかどうかは、貸し出しを検討する段階で確かめておきたい点です。
農業の営農判断をAIに任せる社会実験
収穫作業の自動化とは別の話題として、いつ何をするかという営農判断そのものをAIに委ねる試みも始まっています。実験の組み立ては、次の2つです。
- 小麦10aといちご100株の試験運用
- AIに渡したカメラとセンサーの環境
判断をAIが担い、人が手を動かす形のため、現場の作業そのものを担うのは従業員です。
小麦10aといちご100株の試験運用
ABC株式会社は、2026年9月10日から2027年6月末まで、「AIに農業はできるか」をテーマとする社会実験を実施するとしています。小麦10aといちご100株の圃場に限り、全ての営農判断をAIに任せる試験運用を始める計画です。[2]
社会実験の主な条件は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 2026年9月10日〜2027年6月末 |
| 対象 | 小麦10aといちご100株 |
| 運用方法 | AIが判断し人が作業を実行 |
| 実施場所 | 非公開で隣接農地は自社と関連法人 |
人の身体や第三者へ影響する可能性がない限り、誤った判断に思えてもAIが判断したとおりに実行する予定だと同社は説明しています。この方針を、同社はリカバリー判断の検証と位置づけています。
検証の狙いは、100%AIが営農判断を担った場合に栽培をどこまで成立させられるかを評価することです。小規模な圃場での検証を出発点として、規模を拡大する際の条件や技術的課題を明らかにするとしています。
AIに渡したカメラとセンサーの環境
実験でAIエージェントに与えられるのは、圃場を見るための機材と、資材を手配するための手段です。現場の作業を担うのは従業員2名で、AIは機材を通じて圃場の状況を把握します。[2]
AIエージェントに与えられる主なリソースは、以下の通りです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 観測 | ネットワークカメラ20台 |
| 計測 | 温度や湿度、土壌水分のセンサー |
| 通信 | 圃場に設置のStarlink回線 |
| 計算 | Jetson Orin Nano Super 2台 |
| 調達 | JAへの農薬や肥料の決済枠 |
資材の調達では、Amazonやモノタロウの購入アカウントに加えて、JAへの農薬や肥料の決済枠が従業員を経由して使えるとしています。
農業の収穫ロボット導入を見極める確認点
収穫ロボットの入れ方は、開発側が用意した圃場での実証と、自分の産地に借りて使う運用に分かれます。自分の状況に当てはめて考えるときの確認点は、以下の通りです。[1][2][3]
| 確認点 | 見るところ |
|---|---|
| 段階 | 研究圃場での実証か産地での貸し出しか |
| 作物 | イチゴやキュウリ、ピーマンへの対応 |
| 栽培設備 | 高設栽培や畝間レールとの適合 |
| 費用の持ち方 | 所有か共同利用のレンタルか |
| 判断の担い手 | 人が判断するかAIに任せるか |
| 開始時期 | 実証開始やレンタル期間の時期 |
研究段階の発表を、そのまま自分の圃場で使える技術として読み替えないことが出発点です。貸し出しの実績がある作物や栽培方式に自分の産地が当てはまるかを、先に照らし合わせておくと判断しやすくなります。
判断をAIに任せる形については、2027年6月末まで続く社会実験の結果を待つ形です。
出典
- ^ PR TIMES. 「イチゴ自動収穫ロボットの研究圃場を愛知県大府市に開設」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000114711.html, (参照 26-09-23).
- ^ PR TIMES. 「「AIに農業はできるか」、全ての営農判断をAIに任せる社会実験を9月10日から開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000114711.html, (参照 26-09-23).
- ^ PR TIMES. 「【北海道3JA・団体で展開】AGRIST、AI搭載自動収穫ロボットを深川市・新冠町・ホクレンでレンタル実施」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000193.000050444.html, (参照 26-09-23).








