日本オラクル株式会社は、厚生労働省 大臣官房 総務課 公文書監理・情報公開室がオラクルのAIサービスを活用したAI活用基盤「Ministry of Health, Labour and Welfare Organization AI(MOA)」を構築していることを発表しました。
MOAが対象とする情報公開業務の件数増加と複雑化の課題
公文書監理・情報公開室では、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく開示請求、「行政不服審査法」に基づく審理手続などへの適切かつ迅速な対応が求められます。開示請求対応事務では、所管部署の選定から対象文書の選定、開示・不開示の判断に向けた前例確認、決定通知書の作成・審査まで、複数の部署と手順をまたぐ業務が発生します。
請求件数は年々増加傾向にあり、扱いが難しい案件も多いことから、事務処理の早期化が課題となっていました。こうした状況に対応するため、厚生労働省はオラクルのAI活用基盤の導入を進めています。
MOAのシステム構成と技術基盤
MOAは「Oracle Autonomous AI Database」を中核とするデータ基盤上に多様な形式の文書データを格納し、ベクトル検索を活用した意味検索システムとして2026年1月から3月にかけてのAI知識研修および設計・構築を経て整備されました。このベクトル検索の活用により、職員は、過去の事例や関連文書を自然言語に近い形で検索し、類似する前例や判断材料をより迅速に参照できます。
オラクル生成AIサービス「OCI Enterprise AI」を活用した対話型AI RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムにより、文書要約や請求者への回答案作成支援など、職員の知識活用と文書作成を支援しています。ユーザー・インターフェースにはローコード開発環境「Oracle APEX」を活用し、業務現場の利用に適したアプリケーションを効率的に実装した構成です。
「OCI Functions」や「OCI Object Storage」などのOCIサービスを組み合わせることで、文書データの蓄積と検索、生成AIとの連携が実現されました。業務アプリケーションの実行を統合的に支える設計です。
セキュリティ面では、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に登録されているOCI上に、MOA専用のテナント環境を構築しています。ゼロトラストの考え方に基づく多層防御の構成を採用し、多要素認証に加え、厳格なポリシーに基づくアクセス元IPアドレスの制限や権限分掌による認証・認可の制御も実装しています。
MOAの対象業務と主要技術
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発表元 | 日本オラクル株式会社 |
| 導入先 | 厚生労働省 大臣官房 総務課 公文書監理・情報公開室 |
| 基盤名称 | Ministry of Health, Labour and Welfare Organization AI(MOA) |
| 対象業務 | 開示請求対応事務、審査請求対応事務、審理手続対応事務 |
| 主要技術 | Oracle Autonomous AI Database、OCI Enterprise AI、Oracle APEX、OCI Functions、OCI Object Storage |
| 第1段階 | 意味検索システム稼働開始(4月) |
| 第2段階 | 対話型AI RAGシステム(7月稼働開始を目指して実装中) |
| セキュリティ | ISMAP登録OCI上に専用テナント環境、多層防御構成 |
| 導入パートナー | 株式会社システムエグゼ |
| 証券コード | 4716(東証スタンダード市場) |
trends編集部の一言
開示請求件数が年々増加し、所管部署の調整や前例確認に多くの時間を要していた状況は、行政に限らず、大量の問い合わせや過去事例の参照が求められる現場に共通する課題です。業界全体としては、大量ドキュメントを横断して自然言語で参照できる意味検索の仕組みへの需要は行政・民間を問わず高まっており、今回の取り組みはその先行事例として注目されます。
厚生労働省 大臣官房 総務課 公文書監理・情報公開室長 渡邉一真氏が「最終的な判断や審査は職員が引き続き行います」と明言している点は、行政におけるAI導入の現実的な姿を表す一例です。意味検索で調査を効率化しつつ、判断責任は人が担うという設計は、マーケティング業界における生成AI活用の議論においても、人とAIの役割分担のあり方として業界横断で参照される動向と言えます。
References
- ^ PR TIMES. 「厚生労働省、オラクルのAIサービスを活用し情報公開等事務の業務効率化、最適化を推進 | 日本オラクル株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000485.000057729.html, (参照 26-07-09).
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