InfiniCloud株式会社は、国産プライベートAI基盤「InfiniCloud® AI」のVer2へのアップデートを実施しました。
InfiniCloud® AIが目指すプライベートAI基盤の役割
「InfiniCloud® AI」は、巨大なグローバルなパブリックAIでは扱いにくい機密情報や企業固有の文脈、ローカルな業務課題を安全に解決するために設計された国産プライベートAI基盤です。
プロンプト、会話ログ、登録文書、参照データ、生成結果をサーバー内で完結して取り扱う構成を基本としています。共用モデルの学習や利用者のプロファイリング、広告、行動分析、サービス改善等の二次目的には一切利用できない構造です。
特に適した導入先として、金融機関や医療機関、自治体、公共機関、防衛関連企業、大学、研究機関などが挙げられます。いずれも情報の外部持ち出しが法規制やインフラポリシーで制限されている組織です。製造業の設計・開発部門や特許技術を扱う企業のように独自の知的資産を保護したい企業、また自社SaaSや自社データセンター内にプライベートAIサービスを組み込んでOEMやパッケージとして、顧客へ提供したいITインフラ事業者・SIerにも対応しています。
InfiniCloud® AI Ver2における6つのアップデート領域
今回のVer2では、UI刷新や思考モード、データ管理、インフラ運用、Agent機能、管理画面の6つの領域にわたって機能強化が行われました。主なアップデート内容は次の通りです。
- 迷わず使える新UIへの刷新とチャット履歴のサーバー自動保存対応
- 証拠駆動型思考モード「EDTM(Evidence-Driven Thinking Mode)」の搭載
- 原本情報の正確性・版・承認状態を管理する「SoT(Source of Truth)」機能の追加
- RBAC/ACLの2層構造による権限管理と監査ログの強化
- スキル/ワークフロー自動化によるAI Agent機能の拡充
- 「OpenAI互換API」の強化と1クリック疎通テスト機能の追加
UIの刷新では、ログイン画面やサイドバー、入力欄、設定画面、ダークモードなどの操作感を大きく改善しました。会話履歴は、これまでのブラウザ一時保存からサーバー側での安全な自動保存に変わり、デバイスやブラウザを変えても過去の会話を引き継げます。入力欄に「/」を入力するだけで業務自動化メニューが表示されるコマンド補完も追加されました。
InfiniCloud® AIの証拠駆動型思考とデータ正確性管理
新たに搭載された「EDTM(Evidence-Driven Thinking Mode)」は、複雑な質問や専門的なビジネス課題に対し、AI自身が自律的に関連する証拠を集めて内容を検証しながら回答を組み立てる思考モードです。ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせたハイブリッド検索の強化に加え、「Agentic RAG」の搭載により、会話の文脈から検索ワードを自動補正し、膨大な社内ドキュメントから目的の情報をより正確に引き出します。
「SoT(Source of Truth)」管理機能では、投入されたデータの正確性・版(バージョン)・承認状態・信頼度をシステム側で厳格に管理します。AIが古いマニュアルや誤った下書きをベースに回答してしまうリスクを低減する仕組みです。
音声ファイルの自動文字起こしやスキャンされたPDF・画像に対する文字認識(VLM/OCR)も向上しました。WordやExcel、PowerPoint内の図や表の構造を保ったまま高精度に読み取れるようになりました。
権限管理では、「どの画面を開きどの操作ができるか」を制御するロールベースアクセス制御(RBAC)と、「どの知能ドメインにどこまで触れるか」を制御するアクセス制御リスト(ACL)の2層構造を採用しています。ステップアップ認証や監査ログ機能もあわせて備え、厳しい内部統制・ガバナンスへの対応が可能です。
InfiniCloud® AIのAgent機能とインフラ運用の拡充
スキル/ワークフロー機能では、指定したファイル・フォルダ内のファイル・会話などを読み取り、AIによって処理した結果を指定フォルダなどにファイル保存できます。
入力形式はテキスト、HTML、Markdown、WordやExcel、PowerPoint、PDF、画像(png・jpegなど)に対応します。音声ファイル(mp3・m4aなど)、json、csvなどにも対応しており、出力形式はテキスト、HTML、Markdown、WordやExcelファイル形式です。
標準実装されたオフィスワーク特化型ツールとして、2つのファイルを比較して新旧の規程比較差分表を自動作成するスキルや音声ファイルやメモからWord形式の議事録を作成するスキルなどのテンプレートファイルがあらかじめ内蔵されました。利用企業独自のワークフロー定義とスキル定義も可能で、企業機密のデータファイルからAIを用いて総合判断しWordレポートを作成することもできます。
インフラ面では、複数のAIサーバーへ処理を自動で振り分ける負荷分散と、システムを止めずにアップデートを行うローリング更新に対応しました。社内のGPUリソースが限られている環境向けには「リモートLLMプール」によるハイブリッド運用が可能で、「さくらのAI Engine」などの外部AI環境と組み合わせて一部の処理をオフロードできます。
リモート連携時には、システム内部を狙った不正なアクセス(SSRF攻撃)を遮断する防御機能を実装しています。接続に必要なAPIキーなどの重要な秘密情報は、基幹データベース内のみに厳重に隔離される設計です。
InfiniCloud® AI Ver2 概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | InfiniCloud株式会社 |
| サービス名 | InfiniCloud® AI |
| カテゴリ | 国産プライベートAI基盤 |
| アップデート種別 | Ver2へのアップデート |
| 主な新機能 | EDTM(Evidence-Driven Thinking Mode)、SoT(Source of Truth)管理、RBAC/ACLの2層構造による権限管理、スキル/ワークフロー自動化、Agentic RAG、VLM/OCR強化 |
| セキュリティ | 完全隔離型(Air-Gap)対応、SSRF攻撃遮断、APIキーの基幹データベース内隔離、監査ログ、ステップアップ認証 |
| 外部連携 | OpenAI互換API、さくらのAI Engine(/v1/chat/completions対応) |
| 対応ファイル形式(入力) | Word、Excel、PowerPoint、PDF、HTML、Markdown、画像、音声、json、csvなど |
| 提供形態 | ハードウェア+ソフトウェア一体提供またはソフトウェアサブスクリプション |
trends編集部の一言
「AIに機密情報を投入できない」という課題は、マーケティングの現場でも共通しています。RBAC/ACLの2層構造で「誰がどの知能ドメインにアクセスできるか」を管理できる設計は、部門をまたいだAI活用を進める上での現実的な方向性の一つと言えるでしょう。業界全体としては、パブリッククラウド型AIの利便性と情報管理の厳格化を両立させる需要が高まっており、こうしたプライベートAI基盤への関心はBtoB・エンタープライズ領域を中心に広がっています。
今回のアップデートで注目されるのは、「SoT(Source of Truth)」管理の考え方です。AIが古いマニュアルや誤った下書きをベースに回答してしまうリスクを、データの版・承認状態・信頼度をシステム側で管理することによって低減する仕組みです。マーケティング業界の文脈に置き換えると、承認前のクリエイティブや旧版のブランドガイドラインがAIの参照源に混在するリスクは業界横断で語られてきた論点であり、こうしたデータ品質管理の設計思想が広がっていくのかが注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「国産プライベートAI基盤「InfiniCloud® AI」、AIガバナンスとデータ活用を大幅強化しAgent機能を持つVer2をリリース | InfiniCloud株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000028662.html, (参照 26-07-03).
