アナログ・テック株式会社は、欧州発のAI半導体スタートアップAxelera AIが開発した「Metis® AIPU」を搭載したコンパクトAI PC「AIR-AD-AI-001」を発売しました。
AIR-AD-AI-001が解決するメモリウォール問題とD-IMCアーキテクチャ
製造ラインの外観検査や多拠点監視カメラなど、AIをクラウドではなく現場(オンプレミス)で動かしたいというニーズが急速に高まっています。しかし従来のGPUを使ったエッジAIには、「メモリウォール問題」と呼ばれる課題がありました。
AI推論処理で多く行われる行列-ベクトル積演算では、大量のデータをDRAMと演算ユニットの間で何度も往復させる必要があります。このデータ移動が性能と消費電力のボトルネックとなり、エッジに求められる小型や低消費電力、高性能の同時実現を阻んできました。
Axelera AIの「Metis® AIPU」は、独自のD-IMC(Digital In-Memory Computing)アーキテクチャを採用し、この課題を根本から解決しています。AI推論の主要演算をメモリセル内部で直接実行することでデータ移動を最小化し、大幅な低消費電力化と高スループット化を同時に達成しました。
AIR-AD-AI-001の主な特長
「AIR-AD-AI-001」の主な特長は、次の4点です。
- 業界最高水準のコスト効率を実現するAIPU(消費電力8〜15W)による214 TOPSのAI推論性能
- YOLOv5使用時に最大24chの映像をリアルタイムAI解析(条件により変動)
- 幅200×奥行250×高さ95mm・質量1.9kgのコンパクト筐体
- PyTorchやTensorFlow、ONNXに対応するVoyager® SDKで既存モデルをそのまま移行
映像解析において、単一ユニットで最大24チャンネルの映像ストリームを同時にリアルタイム処理できます(YOLOv5使用時、条件により変動)。クラウドへのデータ送信が不要なため、プライバシー保護と低遅延を両立しています。AIPUアクセラレータの消費電力はわずか8〜15Wで、クラウドAPIの従量課金も不要です。
既存のAIモデル資産についても、PyTorchやTensorFlow、ONNXで構築した学習済みモデルをそのままMetis® AIPUに最適化・デプロイできます。Voyager® SDKを通じて、高性能なエッジ推論環境へスムーズに移行できる点も特長のひとつです。
Axelera AIとAironiAシリーズにおける位置づけ
Axelera AIは、2021年にオランダで設立されたAI半導体スタートアップです。Bitfuryグループとimecのインキュベーションから生まれ、エッジ向けの高性能・超低消費電力AIアクセラレータを開発しています。SamsungやBlackRock、欧州イノベーション評議会(EIC)・Invest-NLなどから、累計2億米ドル以上の資金調達を達成しました。
Fast Company誌「2026年最も革新的な企業」(Emerging Enterprise部門)第3位に選出されたほか、HotTech Vision & Analysisの独立ベンチマークでは主要AIアクセラレータ中で最高性能や最高効率、最高精度を達成しています。製品ロードマップでは、第1世代「Metis®」(量産中・本製品に採用)に続き、第2世代「Europa®」、データセンタースケールの「Titania®」(開発中)を計画中です。
「AIR-AD-AI-001」は、AironiAシリーズの新カテゴリ「コンパクトAI PC」に位置づけられます。IP67/IP69K防水・防塵に対応する「AIR-WP」シリーズとは異なり、防水・防塵機能は持ちませんが、高いAI推論性能や省電力性、省スペース性を重視した設計です。これによりアナログ・テック株式会社は、HailoやNVIDIA、Axelera AIという3種の最新AIアクセラレータを搭載したエッジAI PCを取り揃え、用途や優先事項に応じた最適な一台を提案できる体制を整えました。
コンパクトAI PC「AIR-AD-AI-001」の製品概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | アナログ・テック株式会社(東京都港区) |
| 製品名 | AIR-AD-AI-001(コンパクトAI PC) |
| AIアクセラレータ | Axelera AI Metis® AIPU(214 TOPS)/消費電力8〜15W/PCIe Gen3 x4 |
| プロセッサー | Intel® Core Ultra 5 225 |
| メモリー/ストレージ | DDR5-5600 32GB/NVMe SSD 512GB |
| 筐体 | 幅200×奥行250×高さ95mm(約5L)/質量1.9kg/VESA対応 |
| 電源 | 180W ACアダプター |
| 対応OS | Ubuntu 22.04 LTS 64bit |
| 対応SDK | Voyager® SDK(PyTorch / TensorFlow / ONNX) |
| 映像処理性能 | 最大24ch同時リアルタイム解析(YOLOv5使用時、条件により変動) |
| 設立 | 1994年6月21日 |
| 資本金 | 3億10百万円 |
trends編集部の一言
214 TOPSのAI推論性能とAIPU消費電力8〜15Wという数値の組み合わせは、エッジAI市場における具体的な選定指標として注目されます。エッジAI市場全体としては、クラウド依存を減らしてオンプレミスで推論処理を完結させる動きが広がっており、電力・コスト・設置スペースの三制約を同時に満たす製品への需要が高まっている段階です。
注目したのは、既存のPyTorchやTensorFlow、ONNXモデルをそのままデプロイできるVoyager® SDKの対応です。AIモデルの再開発コストなしに高性能なエッジ推論環境へ移行できる仕組みは、同種のエッジAI製品では差別化要素として機能しやすく、PoC段階から段階的な現場展開を目指す業界のトレンドに合致した設計といえます。
References
- ^ PR TIMES. 「アナログ・テック、Axelera AI Metis® AIPU搭載のコンパクトAI PC「AIR-AD-AI-001」を発売 ― 214 TOPSのAI推論を省スペース筐体で | アナログ・テック株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000048654.html, (参照 26-06-12).
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