Tokyo Artisan Intelligence株式会社は、独自アーキテクチャによるエッジAI向けリコンフィギャラブルAI半導体チップのテストチップ「Sting Ray」の設計や製造、テストを含めた評価を完了し、量産フェーズへ移行したことを発表しました。
テストチップ「Sting Ray」が解決するフィジカルAIの課題
生成AIの普及に伴い、データセンターが消費する電力の増大とそれに伴う膨大な発熱問題は、地球規模の課題です。従来の汎用GPUに依存したシステムでは、計算能力の向上と引き換えに環境負荷が限界に達しつつあります。GX(グリーントランスフォーメーション)の実現には、電力効率が高い専用AIチップの普及が不可欠です。
「Sting Ray」は、「フィジカルAI」の普及において「複数AIの同時実行」による「消費電力の増加」という重要課題を解決するために開発された量産チップ設計前の技術検証用テストチップです。FPGAが持つ回路を書き換えられる柔軟性(再構成可能な構造)の強みを活かしつつ、ベンチャー企業として限られたコストで実用的な半導体製造を可能にする「UMC社40nmプロセス」を採用しています。
「Sting Ray」の技術的特徴と想定用途
「Sting Ray」が目指すアーキテクチャは、従来の汎用GPUや固定型のAIチップと一線を画します。「低消費電力・低遅延」という要件を満たしながら、現場の要望に応じて複数のAIを同時に、かつ柔軟に切り替えて実行できる構造です。主な技術的特徴は以下の4点です。
- 用途に応じて処理回路を柔軟に変更できる再構成性の検証
- 配線チャネルの直接観測・制御が可能なシンプルかつ効率的な構造
- ミリ秒単位の判断が求められるリアルタイム処理の基盤を検証
- 設計ソフトウェアおよび動作確認用検証ソフトウェアの開発
これらの特徴を活かし、高度な現場判断が必要とされるフィジカルAI分野への組み込みを想定しています。インフラや鉄道における多数センサーのリアルタイム異常検知システム、製造・工場の複数ライン同時外観検査、そして状況変化に応じて自律判断を行う産業用・移動型ロボットへの組み込みを想定する主な用途です。
量産化「Manta Ray」プロジェクトのロードマップ
「Sting Ray」の評価完了を起点として、次世代AI半導体チップの量産化に向けた「Manta Ray」プロジェクトを推進していく方針です。量産化にはUMC社の40nmプロセスの採用が決定しており、スタートアップ・ベンチャー企業であっても限られたコストでAI半導体チップの製造・販売が可能となる体制を目指します。
具体的なリリース計画は以下の通りです。
- 2027年1Q:設計ソフトウェア(α版)
- 2027年2Q:エンジニアリング・サンプル(ES版)チップ製造
- 2027年3Q:ES版チップを搭載した評価ボード
- 2027年4Q:量産版(MP版)チップ製造
- 2028年1Q:MP版チップを搭載した評価ボード
また、2026年8月6日に東京・日本橋にて開催予定のイベントでは、今回発表したテストチップの実機デモが公開されます。
Tokyo Artisan Intelligence株式会社の会社概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 社名 | Tokyo Artisan Intelligence株式会社 |
| 代表者 | 代表取締役社長 CEO・CTO中原啓貴氏 |
| 設立 | 2020年3月3日 |
| 所在地 | 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目3−12 新横浜スクエアビル14階 |
| 事業内容 | 深層学習アルゴリズムの研究開発、エッジAIプロダクトの開発および販売、AIエキスパート・エンジニアの育成 |
| 会社HP | https://tokyo-ai.co.jp/ |
trends編集部の一言
ベンチャー企業が自社主導で、低消費電力かつ低遅延という要件を満たしながら複数AIを同時実行できる構造の検証まで到達した点は、AI半導体分野における注目の動向です。業界全体としては、エッジ側での効率的なAI実行を実現するチップ設計へのニーズが高まりつつあり、データセンター集約型から分散エッジ処理への転換を模索する動きとして位置づけられます。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、店舗や屋外サイネージでのリアルタイムAI処理など、エッジ推論への需要は今後拡大する可能性があります。消費電力・コスト課題に応える専用チップの開発動向は、業界横断で示唆を含む取り組みです。
「Manta Ray」の量産ロードマップが2027年から2028年にかけて段階的に組まれている点も含め、日本発のAI半導体企業による開発動向として、今後の進展が注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「AIベンチャーTAI、次世代AI半導体テストチップ「Sting Ray」の評価を完了〜独自アーキテクチャによるエッジAIチップの量産化へ移行〜 | Tokyo Artisan Intelligence株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000072103.html, (参照 26-07-08).
