カスハラ対策の義務化で顧客対応部門が録音を検討、引き継ぎ体制の整備が焦点
公開:
10月1日のカスハラ対策の義務化を前に、通話の録音をどこまで残すかを決めきれないまま、施行日が近づいていないでしょうか。厚生労働省の指針は顧客とのやり取りの録音・録画を対処の例に挙げており、記録の残し方を先に決めておけば、担当者が一人で事実関係を抱え込む状態を避けられます。
この記事では、カスハラ対策の義務化で求められる措置や電話と対面での被害の実態、録音と検知をどこから手当てするかの判断まで詳しく解説します。10月からのカスハラ対策を顧客対応部門でどう進めるか決めかねている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
- この記事の材料:発表4件
- 発表主体:株式会社ソフツー、株式会社Speria
- 出典の最終掲載:2026.09.25
SOURCESこの記事がまとめた発表

画像:株式会社ソフツーの発表資料より(PR TIMES)
[1] 社会人の4人に1人が「カスハラ電話」を経験。10月の対策義務化を前に実効性ある取り組 みが行われている職場は29.5%
株式会社ソフツー / 掲載 2026.09.16
発表を見る

画像:株式会社Speriaの発表資料より(PR TIMES)
[2] 10月1日カスハラ対策義務化、厚労省指針は「録音・録画」を明記──Speria、接客音声からカ スハラを検知する「カスハラ対策支援ダッシュボード」を提供開始
株式会社Speria / 掲載 2026.09.24
発表を見る

画像:発表資料より(PR TIMES)
[4] プリペアード 評判が高いAI通話録音・自動要約サービス「RecACE plus」、カスハラ対 応にも活用できるモデルケース企業を神奈川県で初募集
掲載 2026.09.25
発表を見る
目次
カスハラ対策の義務化で事業主に求められる措置
2026年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法によって、労働者を1人でも雇用する事業主は、カスハラ対策の措置を義務づけられます。義務化で押さえておく点は、以下の通りです。
- 厚労省指針が定める5つの措置
- 指針が対処例に挙げた録音と録画
- 電話やSNSも含む義務化の対象
中小企業への猶予期間は設けられておらず、企業の規模を問わず対象に含まれます。録音は指針が対処の例に挙げた手段であり、義務の範囲を確かめてから検討する対象です。
厚労省指針が定める5つの措置
厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、事業主が講ずべき措置として5点を定めています。指針が挙げた措置は、以下の通りです。[2]
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 方針の明確化 | 方針を定めて労働者へ周知・啓発 |
| 相談体制の整備 | 相談窓口の設置など相談に応じる体制 |
| 事後対応 | 事実関係の確認と被害者への配慮、再発防止 |
| 悪質な事案への対処 | 対処方針を定めて実行できる体制 |
| 相談者の保護 | プライバシー保護と不利益取扱いの禁止 |
措置義務の違反そのものに刑罰はありませんが、行政の助言や指導、勧告の対象となります。勧告に従わない場合は企業名の公表があり、行政への報告義務に違反したときは20万円以下の過料が定められています。
5点は、方針づくりから発生後の対応までを一続きにした内容です。自社の規程がどの段階まで書かれているかを、項目ごとに照らし合わせておくと、足りない部分が見えてきます。
指針が対処例に挙げた録音と録画
厚生労働省の指針は、録音・録画に二度言及しています。あらかじめ定めておく対処の内容の例と、事実関係を確認する例の両方で挙げられた手段です。[2]
録音を導入するときに、あわせて確認しておく点は以下の通りです。
- 利用目的の特定と公表
- 取得を認識できる状態の確保
- 個人情報保護法に沿った取り扱い
Speriaは、1対1や個室で行われる接客では、録音が事実関係の確認を成立させる数少ない手段だと説明しています。導入にあたっては個人情報保護法上の実務対応を企業側で行う前提だと示し、個別の対応は専門家に確認するようすすめました。
電話やSNSも含む義務化の対象
ソフツーは、厚生労働省の指針で対象となる顧客等の言動に、電話やSNSなどインターネット上で行われるものも含まれると明記された点を挙げています。事業主には、可能な限り労働者を一人で対応させないといった対処内容をあらかじめ定め、周知することも求められます。[1]
電話の窓口をめぐる状況は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電話の窓口 | 代表電話は不特定多数から着信 |
| 現場の運用 | 人が受ける前提が残る職場が多い |
| 求められる対処 | 一人で対応させない体制づくり |
ソフツーは、代表電話に人が出る限り、最初に怒鳴り声を受けるのは一人の社員だと指摘しました。さらに、人が最初に受けるという前提そのものを見直すべきだと述べています。
カスハラ対策の遅れが残る電話被害の実態
電話や対面でのカスハラについて、被害の頻度と職場の対策状況の両方が数字で示されました。顧客対応の現場で確かめておきたい点は、以下の通りです。
- 4人に1人が受けたカスハラ電話
- コールセンターの6割が受けた被害
- 現場任せが残る職場の対策状況
被害の割合と対策の整備率には開きがあり、数字の差が手当ての出発点を示します。自社の職場がどちらの数字に近いかを見比べると、優先順位を決めやすくなります。
4人に1人が受けたカスハラ電話
ソフツーは、20歳から65歳の社会人2,000名への事前調査で、24.9%がカスハラ電話を受けた経験があると回答したと発表しました。被害経験者359名への本調査では、74.4%が毎日カスハラ電話に対応していました。[1]
被害経験者が挙げた電話ならではの負担は、以下の通りです。
| 負担の内容 | 回答率 |
|---|---|
| 怒鳴り声が耳元に響く | 54.9% |
| 即答を求められる | 42.3% |
| 一方的に切られる | 32.3% |
| 言った言わないの懸念 | 27.6% |
対応後の影響では、モチベーションが著しく低下するとの回答が62.1%で最も多くなりました。1日30分以上をカスハラ電話の対応に費やす人も、15%にのぼっています。
コールセンターの6割が受けた被害
アスピックは、コールセンターで電話による顧客対応を行う240人への調査で、過去1年間にカスハラを受けた人が59.6%だったと報告しています。頻繁にあるという回答は、15.4%でした。[3]
被害の内容として挙がった主な回答は、以下の通りです。
| 被害の内容 | 回答率 |
|---|---|
| 威圧的・脅迫的な言動 | 78.3% |
| 暴言・人格否定 | 54.5% |
| 同じ要求の繰り返し | 53.8% |
| 長時間の拘束 | 40.6% |
影響では精神的なストレスが72.7%で最も多く、仕事へのモチベーションの低下が51.0%で続きます。お客様対応が怖くなったという回答も、30.1%ありました。
現場任せが残る職場の対策状況
ソフツーの調査では、勤め先の組織的な対策について約6割が不十分と答え、実効性のある対策が取られている職場は29.5%でした。上司や会社に相談しても解決に至らないという回答は、43.5%を占めています。[1]
アスピックが示した対応ルールやマニュアルの整備状況は、以下の通りです。[3]
| 区分 | 整備されている割合 |
|---|---|
| 全体 | 24.2% |
| 50席未満 | 17.0% |
| 100席以上 | 38.5% |
ルールがある職場でも、内容を十分理解しているという回答は25.8%にとどまりました。整備の有無を確かめたうえで、現場が判断に使える状態かどうかも見ておきたいところです。
カスハラ対策の記録を残す音声AIサービス
顧客とのやり取りを記録に残す手段として、音声の解析や通話の録音を担うサービスの取り扱いが始まりました。対象とする会話や記録の扱い方は、以下の通りです。
- 接客音声からカスハラを検知するSperia
- 固定電話を録音し要約するRecACE plus
- 検知の判断を人が担う前提
音声を記録する点は共通しており、検知や共有のどこまでを担うかに違いがあります。判断そのものを機械に委ねる仕組みではない点も、あわせて押さえておく内容です。
接客音声からカスハラを検知するSperia
Speriaは、面談や打合せの音声記録からクレームの予兆とカスハラの懸念を検知する「カスハラ対策支援ダッシュボード」の提供を、9月18日に開始しました。提供形態は既存プランに含まれ、対象はSperiaの導入企業です。[2]
ダッシュボードが備える機能は、以下の通りです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| クレーム予兆の検知 | 認識の齟齬や不満のサインを提示 |
| カスハラ懸念の検知 | 判断材料をマネージャーへ提示 |
| 報告と再発防止 | 対応経緯とともに記録して報告 |
| 研修との接続 | コーチングやロールプレイと連携 |
Speriaは、冠婚葬祭やブライダル、保険、証券など高額で無形の商材を対面で扱う企業に、面談音声の解析を提供してきました。今後は、検知した事案を専門家への相談や社内の対応フローにつなぐ支援を強化していくとしています。
固定電話を録音し要約するRecACE plus
プリペアードは、固定電話の通話を録音してAIで文字起こしと要約を行う「RecACE plus」の取り扱いを開始しました。あわせて、神奈川県内の企業を対象としたモデルケース企業の募集を始めるとしています。[4]
モデルケースで想定されている活用方法は、以下の通りです。
| 活用方法 | 内容 |
|---|---|
| 記録と共有 | 録音と要約を管理者へ共有 |
| 早期の把握 | 専用アプリのプッシュ通知で確認 |
| 拠点の管理 | 複数店舗の記録をまとめて確認 |
募集の対象は、神奈川県に店舗や事業所、拠点を持つ企業とされています。利用中の電話回線や機器構成によって、導入条件が異なる場合があると案内されました。
検知の判断を人が担う前提
Speriaは、AIがカスハラを認定するのではなく、該当性の判断は事業主や人が行うものだと説明しています。ダッシュボードが示すのは、記録に基づく判断の材料です。[2]
東京都が2026年3月に公表した実態調査の内容は、以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査対象 | 都内企業4,727件 |
| 対策に取り組む企業 | 38.5% |
| 取り組まない理由の1位 | 線引きが難しい(29.6%) |
| ノウハウ不足 | 23.8%で1位を下回る |
正当なクレームかカスハラかの線引きが難しいという理由は、ノウハウ不足を上回っていました。記録から判断の材料をそろえる手当ては、線引きに迷う場面での支えとして位置づけられています。
録音から始めるカスハラ対策の確認点
手当ての順番を決めるときは、現場が求めている対策と自社に足りない措置を突き合わせます。アスピックの調査では、会社に強化してほしい対策の1位が上司や管理者による引き継ぎで、57.9%を占めました。[3]
自社の状況を確かめるときの観点は、以下の通りです。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 方針と周知 | 方針を定めて労働者へ伝えたか |
| 相談体制 | 相談窓口を設けたか |
| 記録の手段 | 録音の範囲を決めたか |
| 個人情報 | 利用目的の特定と公表を済ませたか |
| 引き継ぎ | 管理者へ渡す条件を決めたか |
| 再発防止 | 記録を研修や共有に使えるか |
通話の録音や要約は、担当者の記憶やメモに頼らずに状況を確かめる手段として案内されています。記録を残す方法と管理者へ引き継ぐ条件の両方を決めておくと、現場に判断を預けたままの状態を避けられます。[4]
References
- ^ PR TIMES. 「社会人の4人に1人が「カスハラ電話」を経験。10月の対策義務化を前に実効性ある取り組 みが行われている職場は29.5%」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000111.000028096.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「10月1日カスハラ対策義務化、厚労省指針は「録音・録画」を明記──Speria、接客音声からカ スハラを検知する「カスハラ対策支援ダッシュボード」を提供開始」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000157950.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「カスハラ被害、59.6%が過去1年に経験。対策義務化目前も、対応ルール「整備済み」は24.2%」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000030502.html, (参照 26-09-30).
- ^ PR TIMES. 「プリペアード 評判が高いAI通話録音・自動要約サービス「RecACE plus」、カスハラ対 応にも活用できるモデルケース企業を神奈川県で初募集」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000159968.html, (参照 26-09-30).







