ジュリオ株式会社と宝印刷株式会社は、経営者による内部統制(J-SOX)の評価をAIで支援するサービスを共同で提供すると発表しました。
ジュリオ統制評価AIが内部統制評価を支援する背景と狙い
内部統制報告制度(J-SOX)は2024年4月以後に開始する事業年度から改訂基準が適用され、不正リスクを考慮した対応が求められるようになりました。一方で、取引の複雑化とデータ量の増大、そして評価を担う人材の不足により、人手のみによる評価には限界が生じています。
宝印刷株式会社は、これまで約70年にわたり、上場企業やIPO予定会社の情報開示を支援してきた企業です。上場企業の開示を支えることで資本市場の信頼を守ってきた同社が、その立場の延長として、企業の不正抑止に資するガバナンス領域へ踏み出すものです。今回のサービス共同展開は、宝印刷株式会社にとって新たな挑戦となりました。
ジュリオ統制評価AIの機能と設計思想
「ジュリオ統制評価AI」は、内部統制評価という業務に特化して設計されたAIサービスです。請求書・契約書などのエビデンス(証拠資料)や評価手続といった文書の中身をAIが読み込み、照合し、注意すべき点を指摘します。従来は、訓練された担当者が一件ずつ目で読むほかなかった作業を、AIが担います。
内部統制評価は「整備状況の評価」と「運用状況の評価」の二段階で行われるのが特徴です。整備状況の評価では、RCMや業務記述書、フローチャート(3点セット)を横断して読み込み、不整合を指摘します。
運用状況の評価では、エビデンスをAIが読み込み、評価手続に照らして照合し、日付・金額など記載の中身まで確認して注意すべき点を「要確認」として指摘します。
いずれのフェーズにおいても、AIが担うのは読み込み・照合・指摘までです。評価の結論は必ず人が下す設計となっています。評価の承認ワークフロー、監査法人向けの閲覧権限(付与は企業の判断)、拠点・部署単位の管理、年度の締めと翌期への引き継ぎといった基盤機能も備えます。
現在の対応領域と今後の展開は以下の通りです。
- 業務プロセスに係る内部統制:対応済み
- 全社的内部統制:2026年内に対応予定
- 決算・財務報告プロセス:開発中
- IT全般統制:開発中
今後、内部統制評価のすべての領域への対応を予定しています。汎用の生成AIとは異なり、評価実務の手続そのものに組み込まれ、評価の一連のプロセスにAIが伴走する点が特徴です。
中核となる文書照合の技術をはじめ、本サービスに関連する技術について、ジュリオ株式会社は複数の特許を出願しています。
宝印刷株式会社との同時展開と代表コメント
「ジュリオ統制評価AI」は、宝印刷株式会社からは「WizLabo Keeper」として、同社の開示業務支援プラットフォーム「WizLabo」シリーズの一員として、同時に展開されます。市場をリードする宝印刷株式会社が自社ブランドで提供することは、本サービスの信頼性を裏づけるものです。
ジュリオ株式会社代表取締役の姥貝賢次氏(公認会計士)は、「内部統制評価は、不正リスクを考慮する時代に入り、人手だけでは支えきれなくなっています。確かさをAIが支え、人が結論を下す。その役割分担を徹底したのが本サービスです」と述べています。
宝印刷株式会社の執行役員 ICT営業部 部長 池主丞氏は、「ジュリオ様の高度な技術力に支えられた『WizLabo Keeper』による内部統制への領域拡大は、その目的を真に果たすための大きな進化です。今後もWizLaboブランドを拡張し、『決算関係者を本質的な業務に導く』というプロダクトビジョンの下、挑戦を続けます」とコメントしています。
ジュリオ統制評価AIのサービス概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| サービス名 | ジュリオ統制評価AI(宝印刷株式会社からは「WizLabo Keeper」として提供) |
| 提供開始 | 2026年9月予定(ジュリオ統制評価AI・WizLabo Keeper とも) |
| 先行案内 | 発表後より、デモや一部機能の先行導入の相談を順次受付 |
| 提供形態 | クラウドサービス(SaaS) |
| 対象 | 上場企業の内部統制・内部監査部門(経営者による自己評価の支援) |
| 価格 | 個別案内 |
| 提供企業(ジュリオ) | ジュリオ株式会社 東京都港区高輪2-22-1 THE LINKPILLAR2・4階 LiSH 代表取締役 姥貝賢次氏(公認会計士) https://julio.jp |
| 提供企業(宝印刷) | 宝印刷株式会社 https://www.takara-print.co.jp |
trends編集部の一言
2024年4月以後の事業年度から改訂基準が適用されたJ-SOXは、不正リスクへの対応をより明示的に求めるものです。業界全体としては、施策ごとの承認フローや証跡管理が年々複雑化しており、「担当者の目だけに頼る確認作業」の限界は業界を問わず共通の課題として認識が広がってきました。
AIが文書を読み込んで照合・指摘を行い、評価の結論は人が下すという役割分担の設計は、生成AI活用の現実的な着地点として注目されます。約70年にわたり開示支援を担ってきた宝印刷株式会社が自社ブランドで同時展開する点は、市場への信頼付与として機能しそうです。特許出願中の文書照合技術も含め、内部統制領域でのAI活用の動向として引き続き注目しておく価値がありそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「開示支援最大手の宝印刷とジュリオ、企業の不正抑止へ──内部統制評価をAIで支援、上場企業向けに提供開始 | ジュリオ株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000079638.html, (参照 26-07-10).
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