ケイデンス・デザイン・システムズは2026年4月15日(米国時間)、NVIDIA社との戦略的パートナーシップの拡大を、「CadenceLIVE Silicon Valley 2026」において発表しました。
ケイデンスとNVIDIAが半導体設計からAIファクトリーまで協業を拡大
今回の提携拡大は、ケイデンスのAIエージェント設計やEDA、SDAの技術基盤と、NVIDIA社のCUDA-XやAI物理、産業用デジタルツイン向けOmniverseライブラリを組み合わせる取り組みです。ケイデンスはAI駆動のスーパーコンピュータ「Cadence Millennium M2000 Supercomputer」に、NVIDIA社のインフラストラクチャを搭載し、自社のEDAツールおよびSDAソリューションの高速化を進めています。
提携の成果として原理ベースのソルバー高速化と、AI物理モデルの活用により、エンジニアリングワークフローにおいて最大100倍のスピード向上を実現するとしています。AscendenceやArgonne National Laboratory、Honda R&D、Samsung、SK Hynixなどの企業・研究機関が、すでにNVIDIA社によって高速化されたケイデンスソリューションを採用しています。
エージェンティックAI「AgentStack」による設計フローの変革
ケイデンスは2026年2月に「ChipStack AI Super Agent」を発表しており、10社以上の初期導入で設計および検証業務における生産性を最大10倍に向上させた実績があります。今回さらにその基盤を拡張し、半導体およびシステム設計のあらゆる領域を統括する「AgentStack」を発表しました。注目すべきポイントは次の5点です。
- RTLから物理設計・アナログ設計へ領域を拡張
- NVIDIA社のLLM「Nemotron」を活用
- マルチエージェントワークフローを統合管理
- NVIDIA社が初期パートナーとして採用
- 反復サイクルを数日から数時間に短縮
AgentStackはケイデンスの各種エージェントとEDAプラットフォームを接続し、NVIDIA社のアクセラレーテッド・コンピューティング上で稼働する仕組みです。従来のスクリプト駆動やGUI駆動の設計フローから、設計階層・関係性・プロトコルを推論可能なエージェント駆動フローへの転換点として位置付けられています。
フィジカルAI領域とAIファクトリーへの展開
半導体設計にとどまらず、フィジカルAI領域でも両社の協業が進んでいます。ケイデンスのPhysical AI StackとNVIDIA社の「ロボティクス・シミュレーションライブラリ」および「アクセラレーテッド・コンピューティング」を組み合わせることで、ロボットや自律機械における「シミュレーションから現実へ(sim-to-real)」ギャップの解消を支援する方針です。以下の取り組みが具体的に進められています。
- NVIDIA IsaacやCosmosとの統合・高速化
- 世界モデル学習から大規模シナリオテストまで一気通貫
- NVIDIA Jetson上へのデプロイと仮想ツインによる継続改良
AIファクトリー領域では、ケイデンスがNVIDIA Omniverse DSX Blueprintを統合し、Vera RubinやGrace Blackwellといった大規模AIファクトリーの設計・シミュレーション・最適化を可能にします。共同ユースケースとして10メガワット規模のAIファクトリーでGPUを低電力モード(MaxQ)で運用した結果、トークンあたり最大17%の電力効率向上が確認されました。
パートナーシップ拡大の主な内容
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年4月15日(米国時間) |
| 発表イベント | CadenceLIVE Silicon Valley 2026 |
| 対象企業 | ケイデンスとNVIDIA |
| EDA/SDA高速化 | 最大100倍のスピード向上 |
| AgentStack | 半導体・システム設計全領域を統括 |
| Physical AI Stack | sim-to-realギャップ解消を支援 |
| AIファクトリー | トークンあたり最大17%効率向上 |
| MaxQ+高温冷却 | トークンあたり約32%効率向上の可能性 |
trends編集部の一言
半導体設計の効率化からAIファクトリーの電力最適化まで、エンジニアリング全体をカバーする協業の規模感に注目しました。設計工程においてエージェンティックAIが反復サイクルを数日から数時間に短縮するという点は、業種を問わず「繰り返し作業の自動化」に取り組む担当者にとって示唆のある事例です。
特に「トークンあたりコスト」という指標をデジタルツインで事前検証する手法は、データセンター運用やインフラ設計に携わるチームにとって判断材料になりそうです。社内でAI活用の費用対効果を検討している方にとっては、物理システムを構築する前にシミュレーションでトレードオフを評価するアプローチが参考になるのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「ケイデンスとNVIDIA、AI時代に向けたエンジニアリング革新に向けパートナーシップを拡大 | ⽇本ケイデンス・デザイン・システムズ社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000157775.html, (参照 26-04-21).
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