モビルス株式会社は、オペレーション支援AI「MooA®(ムーア)」の主要2サービスに新機能6種を順次提供開始します。
MooA新機能開発の背景と課題
近年、カスハラが深刻な社会問題となっています。2026年10月1日からは企業に対策を義務付ける改正労働施策総合推進法が施行されるなど、社会全体での取り組みが求められるようになりました。
コンタクトセンターでは、採用難や育成遅滞による慢性的な人手不足が深刻化しています。過度な要求を伴うカスハラがオペレーターの精神的負担となり、離職を加速させる要因にもなっています。ベテランのコツや応対ログに眠る「暗黙知」が組織に共有・蓄積されないまま、新人が育つ前に離職してしまう「ナレッジの断絶」も現場の課題です。
人手による登録・更新が中心だったため、サービス追加などの情報更新に管理が追いつかず、利用者やオペレーターが検索しても最適な回答を提示できないケースもありました。モビルス株式会社は、こうした課題への対応として、従来の「効率性」「有効性」「運用性」に生成AIによる「循環性」を加えた4軸の整理が必要と判断しました。「暗黙知」を自動で「形式知化」し、経験によらない活用を可能にする機能の開発に取り組んだ結果が、今回の新機能群です。
MooA CommNaviに追加された3つの新機能
MooA CommNaviに追加された主な機能は以下の3点です。
- リアルタイムモニタリング機能:7つの状態を早期発見し管理者のフォローを支援
- メモテンプレート機能:業務別スクリプトとメモ枠を連動し後処理時間を短縮
- 音声認識エンジンの改良:認識速度を60%短縮しリアルタイムに近い応対を実現
「リアルタイムモニタリング機能」では、管理者(スーパーバイザー)が生成AIによるプロンプト実行で通話状況を解析できます。暴言や威圧、セクシャルハラスメント(セクハラ)・繰り返し要求・金品不当要求・無理難題・交代要求という7つの状態を早期発見できる設計で、リモート環境下でも適切な介入やフォローが可能です。
「メモテンプレート機能」は、修理や商品などカテゴリに特化した初期ナレッジ(トークスクリプト)と連携し、メモ枠の設定・表示ができます。オペレーターが通話中にカテゴリを選択すると、トークスクリプトとメモ内容を呼び出せる仕組みです。カテゴリ専門の要約作成プロンプトを活用することによって、経験やスキルによらない要約ができ、記録の手直しが発生せず平均後処理時間(ACW)を短縮します。
「音声認識エンジンの改良」では、モビルス株式会社独自開発の音声処理機能を搭載し、文字起こしの応答タイムラグを60%削減しました。リアルタイムに近い通話記録の可視化が可能になり、オペレーターはより迅速な顧客応対ができるようになりました。
MooA KnowledgeBaseに追加された3つの新機能
MooA KnowledgeBaseに追加された主な機能は以下の3点です。
- ナレッジ検索機能:AIがナレッジを統合・回答生成し全チャネルで一貫した回答を提供
- ナレッジエージェント機能:AIが応対ログから最新ナレッジを自動生成し運用効率化を促進
- ナレッジ管理機能:FAQ形式のデータ登録や既存FAQシステムとの連携・データ移行に対応
「ナレッジ検索機能」は、応対ログやドキュメントといった社内ナレッジやWebサイト上のFAQなどからナレッジを集約して検索し、検索結果を大型言語モデル(LLM)で生成します。「MooA CommNavi」とベクトル検索型チャットボット「MOBI BOT AI Vector Search(モビボット エーアイ ベクター サーチ)」やFAQとの連携も可能です。チャットボットとFAQをAPI連携することによって、ボットや有人チャット、FAQといった各チャネルでナレッジを連携でき、利用者は、チャネルを問わず最新かつ均質的な回答を得られます。
「ナレッジエージェント機能」では、生成AIが有人チャネルの応対ログや企業内に保存されている暗黙知としての応対ログやドキュメントから、AI-Ready(エーアイレディ)なナレッジを抽出・作成します。生成AI特有の誤回答(ハルシネーション)制御により、正確な回答案が即座に提示される仕様です。生成AIが作成したナレッジは、既存ナレッジとの重複や未知の内容かを判断する機能によって常に最新化・最適化が保たれ、「FAQのナレッジが古く解決できない」という課題が解消されます。
「ナレッジ管理機能」は、FAQ形式のデータ登録、既存FAQシステムとの連携やデータ移行に対応しています。ナレッジ作成エディタによる登録のほか、CSVでの一括取り込みやPDFのビューアー表示も可能です。また、ナレッジ連携機能として、「MooA CommNavi テンプレートオプション」と「MooA CommNavi KnowledgeBaseオプション」の2つのオプションが提供されます。
60%削減という応答タイムラグの短縮は、コンタクトセンター以外の業務でも直感的にインパクトが伝わります。
モビルス株式会社とMooA関連サービス概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | モビルス株式会社 |
| 所在地 | 東京都品川区東五反田2丁目22番9号 住友不動産大崎ツインビル西館9階 |
| 代表者 | 石井 智宏 |
| 設立 | 2011年9月 |
| 上場市場 | 東京証券取引所 グロース(証券コード:4370) |
| 対象サービス | MooA CommNavi ®(ムーア コミュナビ)/MooA KnowledgeBase®(ムーア ナレッジベース) |
| 新機能数 | 新機能6種(各サービスに3つの新機能) |
| 提供開始時期 | 2026年5月より順次 |
| 今後の展望 | 2027年度内に50社以上への導入を目標。2026年夏に主要2サービスのさらなる機能拡充を予定 |
| モビシリーズ導入実績 | 500社以上 |
| 公式HP | https://mobilus.co.jp |
trends編集部の一言
応答のタイムラグを60%削減という数値は、コンタクトセンター以外の業務でも直感的にインパクトが伝わります。マーケティング業界の文脈に置き換えると、顧客対応や問い合わせ対応に割かれる時間の圧縮は長年のテーマであり、リアルタイムに近い可視化が応対品質に直結するという設計思想は、業界横断で参照される動きと捉えられます。
「暗黙知」の形式知化という課題は、業界全体としては長年の難題です。ベテランのノウハウが属人化したまま失われていくという問題は、マーケティング業界でも似たような状況があるのではないでしょうか。生成AIが応対ログから自動でナレッジを抽出・更新する仕組みは、こうした課題への現実的なアプローチとして、注目しておく価値がありそうです。
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法によるカスハラ対策義務化という外部環境の変化に、機能開発が明確に対応している点も印象的でした。業界全体として、法改正を契機にコンタクトセンターのシステム刷新が進む追い風になりそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「コンタクトセンターのオペレーション支援AI「MooA」の新機能の提供開始 生成AIによる状態監視や応対ノウハウのナレッジ管理を強化し業務効率化を実現 | モビルス株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000352.000031387.html, (参照 26-05-23).
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