株式会社IVRyは、2026年5月18日に音声AI領域において「聞き返し生成」を分離する独自アーキテクチャの特許を取得しました。
アイブリーの「聞き返し生成」分離アーキテクチャが解決する課題
店舗やコンタクトセンターをはじめとする顧客対応の現場では、AIエージェントや対話AIの本格導入が進んでいます。しかし実務では、顧客の発話が曖昧であったり、複数の意図が混在したりするケースが頻繁に発生します。従来のシナリオ型AIは、想定外の発話に対して状況に応じた最適な問いかけを自動生成できず、意図を特定しきれないまま誤回答が生じたり対話が途切れたりする課題がありました。
また、生成AI業界で主流の「すべての対話をLLMに一括処理させる」アプローチでは、顧客の意図が曖昧な際にハルシネーションを引き起こすリスクが大きな障壁となっていました。電話先の顧客に自然に寄り添いながら必要な情報を引き出し、スムーズに要望を解決へ導く柔軟性の確保が、対話AIの実用化における課題です。
アイブリーの分離型アーキテクチャによる信頼性と柔軟性の両立
今回取得した特許技術は、「誤情報を返さない信頼性」と「状況に応じて柔軟に会話を進める能力」という、これまでトレードオフとされてきた要素を両立させる独自設計です。顧客への最終回答は定型データベースからのみ選択するため、AIがハルシネーションを起こす余地がありません。一方、意図が曖昧な場面に限り、最適な追加質問(聞き返し)をAIがリアルタイムに生成します。
具体的には、意図特定と回答選択を担う「第1機械学習モデル」と、文脈に応じた聞き返し文言を自動生成する「第2機械学習モデル」を完全に切り分けた「役割分離アーキテクチャ」を採用しています。この新規性・進歩性が特許庁に認められました。本技術は、対話AIプラットフォーム「アイブリー」において、すでに本番稼働中です。
本技術がもたらす主な効果は次の3点です。
- 曖昧な発話でも意図の自動特定範囲が広がり、有人転送コストを削減
- 回答を定型データベースのみから返すことでハルシネーションを抑制する設計
- 聞き返しのAI動的生成により、シナリオ設計・メンテナンスの工数を軽減
これらの効果により、コンタクトセンターや店舗電話応答など、誤情報が直接クレームや信頼失墜につながる現場での導入障壁が下がります。従来は、シナリオを網羅的に事前設計する必要がありましたが、聞き返しをAIが動的に生成するため、運用負荷も大きく軽減されました。なお、同サービスは24時間365日、サービス開始から5年にわたって継続稼働しています。
対話AIプラットフォーム「アイブリー」の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 特許番号 | 第7865495号 |
| 特許権者 | 株式会社IVRy |
| 特許分野 | H04M(国際特許分類(IPC)「電話通信」技術分野) |
| 登録日 | 2026年5月18日 |
| 技術名称 | 音声自動応答装置、音声自動応答方法、及び、音声自動応答プログラム |
| 稼働状況 | 対話AIプラットフォーム「アイブリー」にて本番稼働中 |
| 導入実績 | 47都道府県・98業界以上・累計60,000件以上のアカウント発行、累計着電数9,000万件(2026年5月末時点) |
| 外部連携 | SalesforceなどのSFAやCRM、主要データウェアハウスとの即時連携に対応 |
| 提供企業 | 株式会社IVRy(アイブリー) |
| 所在地 | 東京都港区三田三丁目5-19 住友不動産東京三田ガーデンタワー10F |
| 代表者 | 奥西 亮賀氏 |
| 設立 | 2019年3月 |
trends編集部の一言
累計着電数9,000万件という数字は、電話応答の自動化がすでに大規模な実運用フェーズに入っていることを示す実績です。対話AI業界全体としては、「AIが誤情報を返す可能性」への不安が導入判断における共通の障壁として指摘されてきました。ハルシネーションを構造的に排除した設計の特許取得は、業界全体としての安心感の底上げにつながる動きとして注目されるのではないでしょうか。
「聞き返し生成」だけをAIに担わせ、最終回答は定型データから返すという役割分離の発想は、マーケティング業界の文脈に置き換えると「AIに任せる範囲」と「人が責任を持つ範囲」を明示的に設計するアプローチです。AIを全面的に信頼するのではなく、リスクが高い出力だけ人間が管理するという段階的な導入モデルは、多くの現場で検討材料になるのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「IVRy、音声AI領域で「聞き返し生成」を分離する独自アーキテクチャの特許を取得 | 株式会社IVRyのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000270.000056805.html, (参照 26-06-19).
