株式会社みずほフィナンシャルグループと日本電気株式会社(NEC)は、AIエージェント認証基盤「KYA」の構築に向けた共同実証実験を開始すると発表しました。
KYA共同実証実験の背景と必要性
「Agentic Finance」とは、ユーザーが金融サービスを直接操作する代わりに、ユーザーの意図や許諾に基づきAIエージェントが金融サービスへのアクセスや照会・手続き等を代理実行する利用形態の総称です。この時代においては、従来の「KYC」(Know Your Customer、本人確認)に加え、お客さまの代理となるAIエージェント自身の身元や権限を正確に把握・検証する「KYA」の導入が不可欠となります。
金融機関がAIエージェントを安全に受け入れるには、「認証」「同意」「委任」「監査」という4つの必須要素を検証できる仕組みが求められます。分散型ID(DID)と検証可能なデジタル証明書(VC)の技術を組み合わせることで、これらの要素を確実に検証できる基盤の構築が今回の実証実験の目的です。
みずほFGとNECのKYA実証実験概要と役割分担
実証実験では、NECのDID/VC基盤技術を活用し、AIエージェント認証基盤を両社で共同構築します。具体的には、お客さまのAIエージェントが〈みずほ〉でのAI開発の共通基盤「Wiz Base」上で稼働するAIエージェントに代理アクセスし、金融サービスを利用するシナリオで技術検証を行います。
お客さまのAIエージェントの一意識別子として分散型ID(DID)を活用し、権限やポリシーの改ざん耐性のある検証可能なデジタル証明書(VC)として発行しました。登録からVC発行とアクセス要求を経てKYA検証・金融サービス提供に至る一連のフローを実装します。AIエージェントが「特定ユーザーの正当な代理」であることを暗号学的に証明する技術検証です。
両社の役割は次の通りです。
- 〈みずほ〉:KYAの要件定義・ユースケース設計を主導し、金融サービスを代理実行するAIエージェントの実装と銀行システム検証環境を提供
- NEC:DID/VC基盤技術の提供と全体的な技術設計・実装を担当
- 両社共同:金融機関特有の要件を反映したKYAスキーマ設計と認証フロー設計
NECは、VCに顔認証技術や身分証明書との連携を組み合わせた「FaceVC」を開発しており、VCによるデータ連携に本人確認を含めたより高い安全性と信頼性の提供を進めています。
KYA共同実証実験の検証項目一覧
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 参加企業 | 株式会社みずほフィナンシャルグループ、日本電気株式会社(NEC) |
| 実証開始時期 | 2026年6月 |
| 対象技術 | DID/VC(DID: Decentralized identifiers、VCs: Verifiable Credentials) |
| 検証要素 | 認証・同意・委任・監査の4つ |
| 活用基盤 | 〈みずほ〉でのAI開発の共通基盤「Wiz Base」 |
| 〈みずほ〉代表者 | 執行役社長:木原 正裕氏 |
| NEC代表者 | 取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田 隆之氏 |
| 〈みずほ〉所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目5番5号(大手町タワー) |
trends編集部の一言
「認証」「同意」「委任」「監査」という4要素を一つの基盤で検証しようとする設計は、125年以上の信頼インフラをAIエージェント時代へ接続しようとする試みとして注目すべき動向です。マーケティング業界の文脈に置き換えると、AIを使った顧客接点の自動化が進む一方で「誰の意図でそのAIが動いているのか」を証明する仕組みはほとんど整備されていないのが現状でした。委任・同意の検証可能性という論点は、業界横断で共通する構造的課題として長らく議論されてきたテーマです。
業界全体として、AIエージェントへの「委任」が当たり前になる時代が近づいているのは確かです。金融という高度なセキュリティが求められる領域でKYAの技術検証が先行することによって、他業界への応用モデルが生まれる可能性が開けました。「Agentic Finance」という概念とその実装の動向は、マーケティングDXの領域においても業界の構造転換を示す潮流として捉えられるのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「みずほFGとNEC、AIエージェント時代の新たなAIエージェント認証基盤「KYA」構築に向けた共同実証実験を開始 | 株式会社みずほフィナンシャルグループのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000177612.html, (参照 26-05-30).
