SUSEは2026年5月18日、エンタープライズ向け統合ソフトウェアスタック「SUSE AI Factory with NVIDIA」をはじめとする一連のイノベーションと戦略的パートナーシップを発表しました。
SUSE AI Factory with NVIDIAが示すソブリンAI戦略の全体像
「SUSE AI Factory with NVIDIA」は、データセンターからエッジに至るあらゆる環境に対応するエンタープライズ向け統合ソフトウェアスタックです。AIアプリケーションの構築や展開、管理、ガバナンスを一貫して大規模に実現します。デジタル主権とゼロトラストセキュリティを重視した設計で、企業は機密性の高いロジックや独自データを自社のプライベートインフラ内で保護しながら、NVIDIAの最新AI技術を活用できます。
SUSEのCEOであるダーク-ピーター・ヴァン・ルーウェン氏は、「今年のSUSECONで発表したパートナーシップおよび製品イノベーションは、オープンソースへのコミットメントとベンダーロックインを回避するために顧客が障壁を取り除けるよう支援するというビジョンを改めて示すものです」と述べています。パートナー連携の面では、SwitchとSUSEが「NVIDIA Omniverse」のライブラリを活用し、デジタルツインシステムや「AIファクトリー」の開発加速に向けて提携しました。
エージェンティックAI領域では、Amazon QuickやFsas Technologies、n8n、Reveniumといった主要プラットフォームとの統合を進めています。さらにStacklokとの協業を通じて、戦略的エコシステムを構築している段階です。インテリジェンスとMCP主導の自動化をコアインフラに直接組み込むことによって、企業の従来型ITを自己最適化型システムへと進化を支援し、迅速なイノベーションとエンタープライズレベルのガバナンスの両立を可能にします。
SUSEの2026年度調査が示す「デジタル・ソブリンティ」とソブリンティ・ギャップの現状
SUSEが実施した2026年度の最新調査では、世界規模で深刻な「ソブリンティ・ギャップ(主権の格差)」の存在が明らかになりました。調査対象企業の98%が、デジタル・ソブリンティ(デジタル主権)を戦略目標として優先している一方で、具体的な実行段階へ移せている企業はわずか52%にとどまっています。
地域別に見ると、インドでは回答者の62%が「デジタル・ソブリンティは真の戦略的優先事項であり、積極的に投資を行っている」と回答し、世界をリードしています。日本とドイツはともに57%という結果でした。
全調査対象国の中で、日本は「セキュリティ」を将来のイノベーションにおける最優先の技術的懸念事項として挙げている点が特徴です。
SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社カントリーマネージャーの渡辺元氏は、「AIがインフラの近代化を強力に加速させる推進力であることが浮き彫りになった。同時に企業がイノベーションとビジネス機会の最適なバランスを見出すためにはDXやガバナンス、セキュリティという3つの要素のバランスをとっていく必要がある」と述べています。
SUSE Multi-Linux Supportへの移行でみずほ銀行が受賞、仮想化移行自動化でベンダーロックイン解消へ
SUSECON2026のカスタマーアワードでは、世界各国から選ばれた12の企業/団体の一つとして、みずほ銀行が「グローバル・イノベーター」に選出されました。みずほ銀行は10年にわたる戦略的モダナイゼーションロードマップに着手しており、その第一歩として200以上のレガシーサーバーをSUSE Multi-Linux Supportへ移行し、ベンダーロックインの解消を目指しました。
みずほ銀行プラットフォームエンジニアリング部ディレクターの森圭司氏は、「サイバー脅威が急速に進化する中、時間的猶予はありません。SUSE Multi-Linux Supportにより、即時移行に伴うリスクを負うことなく、安全に環境を確保することができました」と述べています。
同行はグローバル金融業界において、クラウドネイティブおよびゼロトラストアーキテクチャ推進のリーダー的存在となっています。
仮想化移行の分野では、SUSEがCloudbase Solutionsと提携し、移行ツール「Coriolis®」を統合しました。VMwareやパブリッククラウドからSUSE Virtualizationへ、仮想化ワークロードをゼロダウンタイムで移行できる自動化されたエージェントレスのソリューションです。
ミッションクリティカルなSAP環境にも対応しており、仮想マシンとコンテナの両方を単一のプラットフォームで管理しながらインフラのモダナイゼーションを実現します。
その他のSUSECON関連ニュースとして、以下が挙げられます。
- SUSEのポートフォリオがOracle Marketplaceで提供開始され、ハイブリッドクラウドの柔軟性を拡大
- 年次カスタマーアワードでAirbus Defence and Space、CVS Health、Carnival Corporation、PepsiCoなどが受賞
Fortune 500企業の大多数がSUSEを採用し、レジリエントなインフラの実現やコスト最適化、異種混在環境の管理に活用しています。
オンプレミスからクラウドネイティブ、マルチクラウド、エッジに至るまで幅広い環境に対応し、既存ITシステムの最大活用と次世代技術によるイノベーション推進を支援してきました。この幅広い対応領域こそが、グローバル企業からの継続的な支持につながっていると言えます。
SUSE AI Factory with NVIDIAの概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | SUSE(日本法人:SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社) |
| サービス名 | SUSE AI Factory with NVIDIA |
| カテゴリ | エンタープライズ向け統合ソフトウェアスタック |
| 対象環境 | データセンター〜エッジ全域 |
| 主な機能 | AIアプリケーションの構築、展開、管理、ガバナンス |
| セキュリティ設計 | デジタル主権・ゼロトラストセキュリティ対応 |
| 主なパートナー | NVIDIA、Switch、Amazon Quick、Fsas Technologies、n8n、Revenium、Stacklok |
| カントリーマネージャー | 渡辺元氏 |
trends編集部の一言
調査対象企業の98%がデジタル・ソブリンティ(デジタル主権)を戦略目標とする一方、実行段階に移れている企業が52%にとどまるという数値は、戦略と実行の乖離という課題の深刻さを端的に示しています。マーケティング業界の文脈に置き換えると、ファーストパーティデータ戦略やプライバシー規制対応において「方針は定まっているが運用実態が追いついていない」という状況と構造的に近く、「ソブリンティ・ギャップ(主権の格差)」はIT部門に限らず業界横断のテーマとして読み取れます。
みずほ銀行が200以上のレガシーサーバーをSUSE Multi-Linux Supportへ移行した事例は、長期ロードマップとリスク管理を両立させたモダナイゼーションの実践例です。業界全体としては、エージェンティックAIのインフラ基盤整備とベンダーロックイン解消を組み合わせる動きが、金融・製造・流通を横断して加速しており、データ基盤設計や自動化投資の判断軸として注目される傾向が強まっています。
References
- ^ PR TIMES. 「SUSE、SUSECON 2026でAIパートナーシップおよびエージェンティック製品のイノベーションを通じてオープンソースの提供を強化 | SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000062310.html, (参照 26-05-18).
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