NVIDIAは、ヨーロッパ全域で過去最多となる35のNVIDIA AI HPC スーパーコンピューターが開発中であることを発表しました。
ヨーロッパのAI HPC拡充を支えるNVIDIAのフルスタック基盤
今回発表された35のシステムは、各国のスーパーコンピューティングセンター、AIファクトリー、学術研究機関にまたがるものです。NVIDIA BlackwellおよびNVIDIA Hopperプラットフォームは、ヨーロッパのAIファクトリー構築の90%以上を支える基盤です。昨年以降、800 AIエクサフロップスが展開済みまたは導入を発表しました。
NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン フアン (Jensen Huang)氏は次のように述べています。「AIは、科学の新しいツールであり、ヨーロッパは何百万人もの研究者がAIを活用できるようインフラを整備しています。NVIDIA のアクセラレーテッドコンピューティングにより、研究者は、より複雑なシステムのシミュレーション、科学的なAIモデルのトレーニングが可能です。その結果、ヨーロッパのデータと専門知識を世界的なブレークスルーに結び付けるエージェント型AIワークフローを構築できるでしょう」
フルスタックのNVIDIA AIインフラは、科学分野向けのプラットフォームです。NVIDIA Quantum InfiniBandネットワーキング、NVIDIA CUDA-Xライブラリ、NVIDIA NIMマイクロサービス、NVIDIA AI Enterpriseソフトウェアを含む構成となっています。モデルのトレーニング、シミュレーション、推論、エージェント型AIにわたる幅広い用途に対応します。
NVIDIA AIインフラにおける主要5システムの概要と性能
今回の拡充を代表する主要システムは、次の5点です。
- バルセロナ スーパーコンピューティング センターのEuroHPC AI Factory:最大約20エクサフロップのAIトレーニングと33エクサフロップのAI推論パフォーマンスを実現
- BavariaAIのBlue Swan:1,000基のGPUを提供し、最大11エクサフロップスのAIトレーニングと22エクサフロップスのAI推論パフォーマンスを実現
- IT4LIA:8,000以上のGPUを搭載し、82エクサフロップスのAIトレーニングと164エクサフロップスのAI推論パフォーマンスを実現
- HLRSのHammerHAI:850以上のGPUを搭載し、最大約8エクサフロップスのAIトレーニングと15エクサフロップスのAI推論パフォーマンスを実現するドイツ初のAIファクトリー
- NAISSのMimer EuroHPC AI Factory:100台のNVIDIA GB200 NVL4システム(合計400 GPU)を展開し、最大4エクサフロップスのAIトレーニングと約7エクサフロップスのAI推論パフォーマンスを実現
バルセロナ スーパーコンピューティング センターは、NVIDIA GB300 NVL72およびNVIDIA GB200 NVL4システムを採用し、NVIDIA Quantum-X800 InfiniBandプラットフォームでMareNostrum 5を拡張する予定です。
Blue SwanはNVIDIA GB200 NVL4システムとNVIDIA Quantum-2 InfiniBandネットワーキングを介して、FAU ErlangenおよびLRZ スーパーコンピューティング センターにGPUを提供します。
NVIDIAテクノロジの気候・脱炭素化と量子GPUスーパーコンピューティングへの応用
Siemens Energyは、NVIDIA Omniverseライブラリ、CUDA-X、AIインフラなどのNVIDIAテクノロジによって加速されたSiemens Xceleratorポートフォリオを活用しています。最大100%の水素で稼働するように構築されたガスタービンの設計、計算流体力学シミュレーション、製造を統合したワークフローにより、シミュレーション時間を最大77%短縮しました。
このワークフローにより、水素対応の低炭素ガスタービン開発の推進が加速しました。量子GPU スーパーコンピューティングの分野では、各機関が、NVIDIA CUDA-Qを活用した研究を進めています。
バルセロナ スーパーコンピューティング センターはQilimanjaro Quantum Techの量子コンピューターを導入してCUDA-Qとの統合を推進し、CINECAは中性原子QPUの統合に取り組んでいます。Fraunhofer FOKUSは、CUDA-QとEclipse Qrispの統合を推進しました。
ユーリッヒ スーパーコンピューティング センターの研究者は、NVIDIAのチームと協力して50量子ビットの汎用量子コンピューターを完全にシミュレーションし、世界記録を樹立しました。このシミュレーションは、GH200 Grace Hopper Superchipを搭載したJUPITER上で実行されたものです。
NVIDIA AI HPC スーパーコンピューターの発表概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発表社 | NVIDIA |
| 発表日 | 米国時間2026年6月22日 |
| 発表内容 | ヨーロッパ全域で35のNVIDIA AI HPC スーパーコンピューターの開発 |
| 対象国数 | 23か国 |
| 対象研究者数 | 300万人以上 |
| 展開済みAI算出性能 | 800 AIエクサフロップス(展開済みまたは導入発表) |
| 主要プラットフォーム | NVIDIA Blackwell、NVIDIA Hopper |
| 主要ネットワーク | NVIDIA Quantum InfiniBand |
| 量子コンピューティング | 50量子ビットの完全シミュレーションで世界記録を樹立 |
| 代表コメント | ジェンスン フアン (Jensen Huang)氏(創業者/CEO) |
trends編集部の一言
ヨーロッパ全域で35のAI HPCシステムが一斉に開発中という規模感は、単一企業の製品発表を超えた、地域規模のインフラ戦略として注目に値します。AIインフラ業界全体としては、国家・研究機関レベルでの基盤整備において特定ベンダーへの依存度が高まる傾向が鮮明になってきました。「AIファクトリー構築の90%以上を1つのプラットフォームが支える」という集中度は、業界を問わず重要なシグナルです。
研究機関や政府機関が、国家レベルのAI基盤をどのベンダーに委ねるかという判断は、インフラ層でのロックインが上位レイヤーの選択肢を大きく絞り込むため、数年後のAIサービス市場の構造にも影響を与えるのではないでしょうか。マーケティング業界の文脈に置き換えると、プラットフォーム選定が後発の施策コストを左右するという構造は同種サービス市場でも繰り返されてきたテーマであり、今回の動きはその国家規模での再現として読み取れます。
References
- ^ PR TIMES. 「ヨーロッパ、過去最多となる 35 の新しい NVIDIA AI スーパーコンピューターを発表 | NVIDIAのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000632.000012662.html, (参照 26-06-26).
