株式会社STYZのインクルーシブデザインスタジオ「CULUMU(クルム)」は、特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)が2026年6月6日(土)に開催した「2026年度春季HCD学会研究発表会」において、生成AIを活用したアクセシビリティ評価ツール「AXY(アクシー)」の設計と実証実験の成果を発表しました。
AXY(アクシー)の実証実験でアクセシビリティ評価時間を約95%削減
本研究では、実務経験を有するアクセシビリティ専門家による手動評価との比較実験を実施しました。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.2の適合レベル「A」および「AA」の計55項目を指標として、特定のテストページを評価対象としています。
専門家が評価とレポート作成に107分を要したのに対し、「AXY(アクシー)」による自動評価はわずか5分で完了しました。評価にかかる時間を約1/20(約95%削減)へと短縮できることが実証されています。完全自動で評価した16項目における専門家との正誤判定の一致率は87.5%を記録し、特に「適合(問題なし)」と判定した項目の一致率は100%という結果でした。
レポートの質においても、実用的な成果が確認されました。専門家によるレポートでは具体的なコードを提示した修正案が限定的にとどまったのに対し、「AXY(アクシー)」が生成したレポートでは、検出されたすべての不適合項目に対して具体的な修正コード例と、専門知識のない担当者でも理解できる平易な解説が自動生成されています。実務における改善のリードタイムを大幅に短縮できる有用性が確認されました。
AXY(アクシー)の開発背景とアクセシビリティ対応を阻む構造的課題
近年、誰もが利用可能なアクセシブルな設計への要求が高まっています。2024年の障害者差別解消法改正により、民間企業においても、合理的配慮の提供が義務化され、Webアクセシビリティ対応の必要性が一層高まりました。
しかし実務現場には、構造的な課題が存在します。「axe-core」などを活用した自動評価ツールは構文解析やコントラスト比の検証には優れているものの、コンテンツの意味を読み取れないため、文脈に依存する評価には限界があるのが実情です。一方で専門家による手動評価は網羅的な検証が可能である反面、コストが高く多大な時間を要してきました。
組織内のリソース不足も深刻で、「人材や知識の不足」や「担当者の不在」が対応を見送る理由として、挙げられています。多くの実装者がWCAGの達成基準の意図を十分に理解できないまま対応を迫られ、開発後半に評価が先送りされることで形式的な対処にとどまるという課題が生じてきました。「AXY(アクシー)」は、こうした専門性の壁をテクノロジーで解消し、非専門家でも日常的な確認を始めやすくし、必要に応じて専門家・当事者検証につなげやすくするための統合評価型プロセスシステムとして開発されています。
AXY(アクシー)の概要と発表論文情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 開発元 | 株式会社STYZ(インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU(クルム)」) |
| ツール名 | AXY(アクシー) |
| カテゴリ | アクセシビリティ評価ツール |
| 評価対象規格 | WCAG 2.2 適合レベル A・AA(計55項目) |
| 評価時間短縮 | 107分 → 5分(約1/20・約95%削減) |
| 専門家との一致率 | 87.5%(「適合」判定項目は100%) |
| 発表論文タイトル | Webアクセシビリティ改善を支援するAIベース評価・レポート生成システムの設計 |
| 著者 | 川合 俊輔氏・大村 健太氏(株式会社STYZ)、伊原 力也氏(毬藻企画合同会社)、根岸 冬馬氏(株式会社COBO) |
| 発表論文URL | https://hcdrms.herokuapp.com/conferences/112 |
| 資本金 | 5,725,000円 |
| 設立 | 2016年3月 |
| 従業員数 | 60名(業務委託含む) |
| 所在地 | 東京都渋谷区 |
| 代表者 | 田中辰也氏 |
| コーポレートサイト | https://culumu.com/ |
trends編集部の一言
107分かかっていた専門家の評価作業が5分に短縮されるという数値は、アクセシビリティという専門領域を超えて響くのではないでしょうか。業界全体としては、「専門家でなければ判断できない」と思い込まれてきた評価プロセスをAIで代替・補完する動きが、アクセシビリティ支援ツール市場を中心に広がりつつあります。生成AIによる品質評価支援の流れとしては、一次スクリーニングの自動化が進むことで専門家リソースをより高度な判断に集中させるモデルへの転換が、業界横断で語られているテーマです。
「担当者の不在」「知識不足」を理由にアクセシビリティ対応を先送りにしている企業は少なくないのではないでしょうか。自動評価と専門家検証を組み合わせるハイブリッド設計は、マーケティングの文脈に置き換えると、ランディングページやメールコンテンツの品質チェックを一次スクリーニングから自動化する流れと重なります。対応の入口を下げることで最終的な当事者との共創モデルへ繋げる設計思想は、業界の動向としても示唆を含む取り組みです。
References
- ^ PR TIMES. 「Webアクセシビリティの評価時間を約1/20に短縮――CULUMU、生成AIを活用した独自システム「AXY」の実証成果をHCD学会で発表 | 株式会社STYZのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000348.000022873.html, (参照 26-06-19).
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