サイリーグホールディングス株式会社は、AIを活用してサイバー攻撃対応を支援する「サイバー攻撃対応ナビ」の提供を2026年10月より開始すると発表しました。
「サイバー攻撃対応ナビ」開発の背景にある検知後の壁
近年、ランサムウェア攻撃による基幹システムや経理処理の停止が、有価証券報告書の提出遅延や業績下方修正に直結する事例が相次いでいました。警察庁の最新の調査によると、ランサムウェア被害に関連した調査・復旧費用が「1,000万円以上」となった企業は半数に達しており、被害の高額化が浮き彫りになっています。
また、取引先を巻き込むサプライチェーン攻撃のリスクは4年連続で重大な脅威とされており、社会インフラ全体への影響が懸念されている状況です。
EDR(Endpoint Detection and Response)等の導入により「検知する仕組み」は整備されつつありますが、現場では「検知後の壁」に直面してきました。具体的には、「Critical」なアラートへの危険度判断ができないという問題があります。SOC(Security Operation Center)からの通知を受けても次の行動が分からない、汎用的な生成AIでは自社環境を踏まえた具体的な手順が得にくい、といった課題も多くの組織に共通しています。
経済産業省が主導し2026年度末の運用開始を目指す「SCS(サプライチェーン・サイバーセキュリティ)評価制度」を見据えると、セキュリティツールの導入にとどまらず、「インシデントを適切に判断し、初動対応に繋げられる体制」の整備が企業に求められる状況です。
サイバー攻撃対応ナビの機能と主な特長
「サイバー攻撃対応ナビ」は、既存のセキュリティ製品から出力される情報を入力するだけで利用できます。対応する入力情報は、EDRのアラートやUTM(統合脅威管理)のログです。
IDaaS(複数のサービスのIDやパスワード情報を一元管理できるクラウドサービス)の不審ログイン通知やSOCからの通知文も、入力情報として利用できます。専用エージェントの導入や既存環境の大きな設定変更は不要です。
AIは、当該事象の攻撃可能性、確認すべきログやアカウント、通信先、隔離・遮断・追加調査・エスカレーションの優先順位を提示します。経営層や関係部門に報告すべきポイントの整理にも対応する設計です。
主な特長は次の5点です。
- SMBCグループをはじめとする複数の国内企業・組織のセキュリティ運用現場で蓄積された知見・データを活用した判断支援
- SCS(サプライチェーン・サイバーセキュリティ)評価制度を見据えた判断基準と対応手順の提示
- 既存のEDR・UTM・IDaaS・SOCサービスをそのまま活かせる設計
- 企業のIT環境・重要資産・対応体制を「セキュリティカルテ」として登録することによって、自社環境を踏まえた助言を提供
- 情報システム担当者が1名体制のいわゆる「ひとり情シス」でも導入しやすい月額換算5万円からの料金体系
なお、本サービスはAIが最終判断や実対応を代替するものではありません。現場担当者や情報システム部門が、判断の根拠を確認しながら、より適切かつ迅速に対応を進めるための支援ツールとして設計されています。
サイバー攻撃対応ナビの提供概要とInterop Tokyo 2026での初公開
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | サイリーグホールディングス株式会社(SMBCサイバーフロント株式会社と共同開発) |
| サービス名 | サイバー攻撃対応ナビ |
| カテゴリ | AIセキュリティ判断支援サービス |
| 提供開始時期 | 2026年10月(サイリーグHDにおいて)。SMBCサイバーフロント株式会社での提供については今後検討予定。 |
| 料金 | 最小プラン 年額60万円(税別)〜(月額換算5万円〜) |
| 主な対象 | 専任セキュリティ人材を確保しにくい企業・組織、ひとり情シス体制の中堅・中小企業 |
| 展示予定 | Interop Tokyo 2026(2026年6月10日(水)から12日(金)、幕張メッセ)にてサービスのコンセプト・想定される利用方法・AIによる判断支援のデモンストレーション等を紹介予定 |
| サイリーグHD設立 | 2023年12月 |
| サイリーグHD所在地 | 東京都港区虎ノ門3-17-1 TOKYU REIT 虎ノ門ビル6階 |
| SMBCサイバーフロント設立 | 2025年2月 |
| SMBCサイバーフロント出資者 | 株式会社三井住友フィナンシャルグループ、三井住友海上火災保険株式会社、サイリーグホールディングス株式会社、イー・ガーディアン株式会社 |
trends編集部の一言
ランサムウェア被害に関連した調査・復旧費用が「1,000万円以上」となった企業が半数に達するという数字は、サイバー攻撃がもはや一部の大企業だけの問題ではない実情を物語る指標でした。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、委託先や連携ツールを通じたサプライチェーンのリスクは、BtoBの取引構造全体に波及するテーマとして認識が広がっています。「自社単体での対策にとどまらない、サプライチェーン全体での防御」という意識が業界全体で強まっている動向と言えます。
特に注目されるのは、「検知した後にどう判断し、どう動くか」という実務上の課題に正面から向き合っている点です。EDRやSOCの導入が進んでも、アラートを受け取った担当者が判断できなければ初動が遅れるという構造的な問題は、セキュリティ業界全体として長く指摘されてきました。
AIが最終判断を代替するのではなく、「判断の根拠を示して人を支援する」設計は、生成AIの活用設計として業界全体の取り組みとしても注目される考え方です。月額換算5万円という料金設定は、ひとり情シス体制の企業にとって現実的な水準でした。SCS(サプライチェーン・サイバーセキュリティ)評価制度の運用開始が2026年度末に迫る中、サプライチェーン全体の要件に即応できる体制構築の動きは、今後さらに加速するものと見られます。
References
- ^ PR TIMES. 「サイリーグHDとSMBCサイバーフロント、AIがサイバー攻撃対応を支援する「サイバー攻撃対応ナビ」を2026年10月より提供開始 | サイリーグホールディングス株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000152916.html, (参照 26-06-05).
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