株式会社ISL Networksは、日本システム開発株式会社と連携し、「AI時代の工場・物流倉庫リアルタイム制御基盤」の提供を開始しました。
AI時代の工場・物流倉庫リアルタイム制御基盤が必要とされる背景
現在の製造業・物流業界におけるAI活用の多くは、データ分析、異常検知、需要予測、品質分析といった「分析系AI」にとどまっているのが現状です。一方、海外ではすでにAIが現場設備をリアルタイムに制御するフィジカルAIやAIoTの時代が到来しています。
AIによるリアルタイム制御では、通信遅延やジッター(通信ばらつき)、時刻同期精度が極めて重要です。複数のAGVが同じ交差点を通過する場合、100ms遅れれば衝突リスクが発生します。
従来のWi-Fiやベストエフォート型ネットワークでは、AIの判断を確実に現場へ反映することが困難でした。こうした制約を解決するため、AIの判断をミリ秒単位で現場に反映できるリアルタイム制御基盤が必要とされています。
ISL Networksと日本システム開発の連携内容と制御基盤の構成
株式会社ISL Networksは、3GPP準拠の産業用5Gソリューション「ISLN 5G Control / Industry」を提供します。産業用5Gが提供するミリ秒レベルの低遅延通信上で、AGV/AMR向けリアルタイム通信と高精度時刻同期を実現しました。これにより、従来の有線イーサネットケーブルで構成されていた制御システムの完全ワイヤレス化が可能です。
日本システム開発株式会社は、フィジカルAIを活用したAGV/AMR協調制御システムを担います。AGV同士の経路最適化、障害物・混雑回避、タスク再割当、異常時の自律判断などをリアルタイムに実行する仕組みです。
あるAGVが停止した場合には、AIが工場全体の搬送状況を解析し、別のAGVへ搬送タスクを即時再割当てすることによって、生産停止リスクを低減します。
本制御基盤が対象とする想定ユースケースは次の通りです。
- AGV/AMRのリアルタイム協調制御
- 工場設備・PLCのワイヤレス化
- AI画像解析とのリアルタイム連携
- デジタルツイン連携による工場可視化
- MES、WES、WMSといった全体工程管理、実行システムと現場をリアルタイムに接続
これらのユースケースを通じ、生産性向上、省人化、設備柔軟性向上を実現します。
両社による名古屋ラボ開設とパートナーエコシステム構想
両社は東京都港区の「赤坂ラボ」に続き、製造業集積地である名古屋エリアにも共同ラボを開設する予定です。設置予定場所は、愛知県名古屋市中村区那古野1丁目47番1号 名古屋国際センタービル 日本システム開発株式会社社屋内(予定)です。
名古屋エリアの共同ラボでは、自動車OEMや製造業を中心に、AGV/AMR協調制御ライブデモや産業用5Gによるリアルタイム制御、フィジカルAIによる搬送最適化などの実証・検証環境を提供します。
さらに両社は、本基盤を特定企業向けの閉じたシステムではなく、AI時代の産業プラットフォームとして発展させていくことを目指しています。
エコシステムへの参加対象として想定されるのは、次のような企業・事業者です。
様々なデバイスやサービスが接続可能なオープンなエコシステムの構築を目指すものです。
将来的には工場・物流倉庫にとどまらず、港湾や空港、エネルギー施設、社会インフラへの展開も視野に入れています。両社はこのプラットフォームを、「産業オペレーティングシステム(Industrial Operating System)」として位置づけました。
「AI時代の工場・物流倉庫リアルタイム制御基盤」の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | 株式会社ISL Networks/日本システム開発株式会社 |
| ソリューション名 | AI時代の工場・物流倉庫リアルタイム制御基盤 |
| 通信基盤 | ISLN 5G Control / Industry(3GPP準拠・産業用5G) |
| AI制御技術 | フィジカルAIによるAGV/AMR協調制御システム |
| 主な接続対象 | AGV/AMR、ロボット、PLC、AIカメラ、各種センサー |
| 連携システム | MES、WES、WMS、デジタルツイン |
| 検証ラボ | 赤坂ラボ(東京都港区)・名古屋エリア共同ラボ(名古屋国際センタービル内、開設予定) |
| ISL Networks代表 | 代表取締役CEO 井上 拓也氏、代表取締役CTO 久保田 啓一氏 |
| 日本システム開発代表 | 代表取締役社長 伊藤 健文氏 |
| ISL Networks Webサイト | http://www.islnetworks.jp/ |
| 日本システム開発 Webサイト | https://www.nskint.co.jp/ |
trends編集部の一言
100ms遅れれば衝突リスクが発生するという具体的な数値は、リアルタイム制御の世界がいかにシビアな基準で設計されているかを端的に示しています。業界全体としては、製造・物流領域のAI活用が「分析系AI」から「現場をリアルタイムに動かすフィジカルAI」へと移行しつつある段階です。
マーケティング業界の文脈に置き換えると、レポートを生成するAIから、キャンペーンの予算配分や入札をリアルタイムに制御するAIへの移行と重なる部分があり、その加速度は今後さらに増していくのではないでしょうか。
通信基盤とAI制御技術を2社が役割分担して提供する構成は、オープンなエコシステム戦略として注目する価値があります。AGV/AMRメーカーやPLCベンダーなどとのアライアンス拡大を明示している点からも、単なる製品発表にとどまらないプラットフォーム志向の戦略が見えてきました。20年以上にわたる産業システムの知見を持つ日本システム開発株式会社との連携は、この基盤の信頼性を裏付ける要素としても業界の動向として注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「産業用5GのISL Networks、日本システム開発と連携し「AI時代の工場・物流倉庫リアルタイム制御基盤」を提供開始 | 株式会社 ISL Networksのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000113171.html, (参照 26-06-05).
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