NVIDIAは、世界有数の半導体企業であるTSMCが、NVIDIAのアクセラレーテッド コンピューティングとAIを活用して、半導体の設計と製造を進化させていることを発表しました。
TSMCがNVIDIA技術でファブの設計と製造を加速
高度な半導体の設計と製造は、チップ設計の移管からトランジスタ モデリング、プロセス制御、ファブの生産性に至るまで、大規模な計算ワークロードを必要とします。TSMCは、NVIDIA CUDA-Xライブラリと AIモデルをNVIDIA GPU上で活用して、これらのワークロードを高速化してきました。
NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏のコメントは次の通りです。「NVIDIAとTSMCは、30年近くにわたって協力してコンピューティングの限界を押し広げてきました。TSMCは、NVIDIA AIとアクセラレーテッド コンピューティングをファブに導入し、世界で最も複雑な設計および製造の課題に取り組んでいます。シミュレーション、最適化、AIを組み合わせることで、次世代チップの速度、効率、歩留まりを向上させています」
TSMCの会長兼CEOであるC.C. Wei氏は次のように述べています。「TSMCとNVIDIAは、次世代のコンピューティングを可能にする技術の推進に根ざした長期のパートナーシップを構築してきました。ファブ運用の最適化、リソグラフィ、プロセス制御、検査にわたってNVIDIAアクセラレーテッド コンピューティングとAIを活用しています。これによりTSMCは技術的リーダーシップと製造の卓越性を強化し、お客様の将来の製品と成功をサポートしていきます」
TSMCにおける4領域でのNVIDIA技術活用と定量的な効果
TSMCがNVIDIA技術を適用している主な領域は、次の4点です。
- 計算リソグラフィ: NVIDIA cuLithoでコスト効率またはサイクル時間を20 〜 50%向上
- トランジスタ・プロセス シミュレーション: NVIDIA cuESTで化学シミュレーションを平均 50倍高速化
- 高度なプロセス制御: NVIDIA cuMLで数千のステップにわたる数十万のプロセス パラメータを精密に抽出
- ファブ運用最適化: NVIDIA H200 GPUとCUDAによるスケジューリングでファブ生産性を大幅に向上
NVIDIA cuLithoは、CPUベースの計算リソグラフィと比較して、同じ所有コストを維持しながらコスト効率またはサイクル時間を20 〜 50%向上させます。NVIDIA cuESTは、半導体材料設計における化学シミュレーションを平均 50倍高速化しました。NVIDIA cuMLは、アルゴリズムの高速化と、数千のステップにわたる数十万のプロセス パラメータの精密な抽出を実現しています。
TSMCのビジョン AIによる不良検査とFabTwin構築
チップが高度化するにつれ、ごくわずかな不良でさえ品質や歩留まりに影響を与えるため、迅速で正確な検査が不可欠です。TSMCは、NVIDIA MetropolisプラットフォームとNVIDIA TAO Toolkitを活用して、高度な不良分類を向上させています。ビジョン AIによって、ナノメートル レベルの不良検出を向上させました。
この取り組みにより、プロセス条件や検査ツール、不良の種類が変化しても、ラベリングと再トレーニングの繰り返しを削減しながら品質検査を向上できるようになっています。加えてTSMCは、プロセス ツールのレイアウトと関連するシミュレーション ワークフローを評価するための仮想ファブ環境「FabTwin」の構築に向け、NVIDIA Omniverseライブラリの活用を検討しています。物理的な実装の前に設計シナリオをデジタルでテストすることによって、複雑な構成の比較と潜在的な制約の早期特定が可能です。
NVIDIAとTSMCによる半導体設計・製造支援の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発表企業 | NVIDIA |
| 発表日 | COMPUTEX(台北)にて発表 |
| 対象領域 | 半導体設計・製造におけるNVIDIA AIおよびアクセラレーテッド コンピューティング活用 |
| 主な適用領域 | 計算リソグラフィ、トランジスタ/プロセス シミュレーション、高度なプロセス制御、ファブ運用最適化 |
| 計算リソグラフィ効果 | コスト効率またはサイクル時間を20 〜 50%向上(NVIDIA cuLitho) |
| シミュレーション高速化 | 化学シミュレーションを平均 50倍高速化(NVIDIA cuEST) |
| プロセス制御 | 数千のステップにわたる数十万のプロセス パラメータを機械学習モデルの精密な入力として抽出(NVIDIA cuML) |
| 不良検査 | NVIDIA MetropolisおよびNVIDIA TAO Toolkitによるビジョン AIでナノメートル レベルの不良検出を向上 |
| 仮想ファブ環境 | NVIDIA OmniverseライブラリによるFabTwin構築を検討中 |
| 代表コメント | ジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏(NVIDIA創業者/CEO)、C.C. Wei氏(TSMC会長兼CEO) |
trends編集部の一言
化学シミュレーションが平均 50倍高速化され、計算リソグラフィのサイクル時間が20 〜 50%向上するという数字は、半導体製造の現場における計算コストの規模を改めて示しました。マーケティング業界の文脈に置き換えると、キャンペーン効果予測や需要モデルの計算コストという課題は業界横断で語られてきたテーマです。製造業のコアプロセスにAIが本格適用されている光景は、業界全体としてAIによる高速化の恩恵が製品開発の上流工程にまで及び始めた段階に入ったことを示しています。
注目されるのは、FabTwinによる「物理実装前のデジタル検証」というアプローチです。実際のコストや資本を投じる前に仮想環境で検証する仕組みは、製造現場にとどまらず、複雑な意思決定プロセス全般に応用可能な考え方と言えます。業界全体として、こうしたデジタル検証の発想がどこまで波及するかが今後の注目点です。
References
- ^ PR TIMES. 「NVIDIA と TSMC、ファブに AI を導入して半導体の設計と製造を推進 | NVIDIAのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000620.000012662.html, (参照 26-06-03).
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