Vercelは、Vercel Logsのトレースに「Tree」と「Waterfall」の2つのビューを追加しました。spanの階層、クリティカルパス、タイミングを、ログエントリを離れずに確認できます。
Vercelトレース新ビューの3行まとめ
今回のChangelogが伝えた内容を、先に3点へ整理しました。いずれも告知そのものに書かれた事実で、提供プランや上限といった前提は、後半の公式ドキュメント由来の節で扱います。
- Vercel LogsのトレースがTree・Waterfallビューに対応
- Treeは親子関係でspanを階層化し、読み込み時の初期表示だけ所要時間順
- Waterfallは全spanを時系列軸へ並べ、並行処理とボトルネックを表示
本記事は公表時点の情報にもとづくものです。仕様や提供状況、料金は変わる可能性があります。
導入や利用の判断は各自の責任で公式情報の最新の内容をご確認ください。設定変更やアップデートを行う場合は、必ず事前にバックアップを取得し、検証環境で確認したうえで実施してください。
Vercel Tracesに追加されたTree・Waterfallビュー
VercelのChangelogでの公表日は2026年7月10日です。Vercel LogsのトレースがTreeビューとWaterfallビューに対応し、ログエントリを離れることなく、次の3点を確認できるようになりました。
- spanの階層(span hierarchy)
- クリティカルパス
- タイミング
2つのビューが何を軸にspanを並べ、どこを読み取るためのものかを、次の表にまとめます。
| ビュー | spanの並べ方 | 読み取れること |
|---|---|---|
| Tree | 親子関係による階層/読み込み時の初期表示は所要時間順 | 呼び出しの入れ子構造と、初期表示で先頭に来る最も長いspan |
| Waterfall | すべてのspanを1本の時系列軸へ配置 | 並行して動いた処理と、性能上のボトルネック |
Treeビューはspanを親子関係で階層的に整理し、Treeビューの初期表示では読み込み時に所要時間順で並べて、最も長く実行されたspanを先頭に示すものです。この並び順は初期表示に限られ、Waterfallビューではすべてのspanを単一の時系列軸へ並べることで、同時に動いた処理と性能上のボトルネックを把握できます。
Vercel Tracesのspanと自動計装の範囲
Vercel Tracesのspanと自動計装で記録される処理
Vercelのトレースは、1つのリクエストがアプリケーションとVercelのインフラをどう流れたかの記録です。その各ステップがspanで、spanはトレース内の1単位の処理を表し、名前・開始時刻・終了時刻・所要時間を持ちます。
Vercelは追加のコード変更なしにアプリケーションを自動計装します。Trace Drainsを設定するか、Vercel FunctionsでSession Tracingを有効にすると、次の対象をトレースとして可視化可能です。
| 対象 | 可視化される内容 |
|---|---|
| Vercelインフラ | Vercel Functionsの各実行がインフラを通る流れ |
| 外向きHTTP呼び出し | 関数から出たHTTPリクエスト(fetch span) |
インフラ側でspanになるのはルーティング、ミドルウェア、キャッシュなどの処理で、fetch spanは所要時間や場所といった属性を持ちます。フレームワーク固有の処理や独自の区間まで追うには、次に述べる追加の計装が必要です。
Vercel Tracesのspan種別と@vercel/otelによる追加計装
ダッシュボードのトレース画面に並ぶ横棒1本が、1つのspanです。Session Tracingを有効にしたトレースで表示されるspanには、次の4種類があります。
| 種類 | 見た目 | 表すもの |
|---|---|---|
| インフラspan | 白黒・三角アイコン | ルーティング、ミドルウェア、キャッシュなどVercelインフラ内の流れ |
| fetch span | 緑 | 関数から出たHTTPリクエスト |
| フレームワークspan | 青 | OpenTelemetryでの計装時に出現/Next.js 13.4以降は自動 |
| カスタムspan | 青 | OpenTelemetryで自分のアプリケーションへ追加する区間 |
このうちフレームワークspanとカスタムspanを取得するには、OpenTelemetryのSDKを使うために@vercel/otelパッケージの導入が必要です。Next.js 13.4以降であれば、ルートや描画処理のspanは自動で追加されます。
spanをクリックするとサイドバーへ詳細が表示され、インフラspanでは「what is this?」の説明も示されます。細部の拡大方法やspan種別の見分け方は、Changelogが案内するVercel公式のTracingドキュメント(Anatomy of a trace)で確認可能です。
このセクションの用語
- span
- トレース内の1単位の処理。ミドルウェアの実行や外部へのHTTP呼び出しなど各ステップに対応し、名前・開始時刻・終了時刻・所要時間を持つ。
- クリティカルパス
- 一般に、依存関係の上で全体の完了時刻を左右する処理の連なりを指す語。トレースでは、リクエスト全体の所要時間を決めている経路を読み取る観点として使われる。
- 計装(インストルメンテーション)
- アプリケーションへ計測用の仕掛けを入れ、処理の開始・終了などをspanとして記録できるようにすること。
Vercel Tracesを表示するための準備
新しい2つのビューを開く前提として、トレースが記録されている必要があります。ダッシュボードでトレースを可視化するにはVercelツールバーからSession Tracingを開始する方法と、ターミナルから1リクエスト分だけ取得する方法の2通りです。
VercelツールバーのSession TracingとLogsでの表示
Session Tracingでは、Vercelツールバーから自分のセッションをトレースし、対応するspanをLogsダッシュボードで確認できます。セッショントレースの前提条件は、次の3点です。
- Vercelアカウント
- プレビューまたは本番へデプロイ済みのVercelプロジェクト
- 対象環境でVercelツールバーが有効
ローカルのデプロイに対してセッショントレースを作成・実行することはできず、開始方法には1ページ分のPage TraceとSession Traceの2通りがあります。Session Traceは停止するかCookieを消去するまで継続し、どちらの方法も開始した本人のブラウザに対して有効です。
記録したトレースは、ダッシュボードのLogsセクションでトレース用のフィルタを適用し、対象リクエストの詳細パネル下部にあるTraceボタンから開きます。今回追加されたTreeビューとWaterfallビューを使うのも、このVercel Logsのトレースです。
Vercel CLIのvercel curl --traceで1リクエストを取得する
ブラウザを介さずAPIエンドポイントをデバッグするとき、またはCIワークフローでトレースを取るときは、Vercel CLIのvercel curlコマンドへ--traceを付けて実行します。実行前に確認しておく条件は、次のとおりです。
-
vercel curlはベータ版で、機能と挙動が変わる可能性がある - Vercel CLI v48.8.0以降で利用できる
- システムに
curlがインストールされている必要がある - リンク済みプロジェクトでパスだけを指定すると最新の本番deploymentが対象
-
--deploymentでリンク済みプロジェクト内のdeploymentを指定 - 本番deploymentへの
--traceは確認を求める -
--yesを指定すると、その確認は省略される
vercel curlはシステムのcurlで対象deploymentへ実際のHTTPリクエストを送るため、指定エンドポイントの処理が走ります。リンク済みプロジェクトでは、Deployment Protectionの有効なバイパストークンをx-vercel-protection-bypassヘッダーとして対象deploymentへのリクエストに自動付与する仕組みです。
次の1・2行目はトレースを取りながらリクエストを送るコマンドで、対象エンドポイントの処理を実行します。3行目はrequest IDでトレースを取得し、4行目はVercel Dashboardで開くもので、どちらも例の/api/helloへHTTPリクエストを送るコマンドではありません。
vercel curl --trace /api/hello
vercel curl --trace /api/hello --deployment https://my-app-abc123.vercel.app
vercel traces get req_1234567890
vercel traces get req_1234567890 --open
1行目はリンク済みプロジェクトの本番deployment、2行目は--deploymentで指定したdeploymentが対象です。副作用のあるパスを本番へ送らないよう、リンク済みプロジェクト内の検証用deploymentを明示し、再試行しても問題のないエンドポイントで確認してください。
リクエストが完了すると、CLIはそのトレースのrequest IDを含むvercel traces getコマンドを表示します。3・4行目のreq_1234567890は実際のIDへ置き換え、--openを含むオプションはVercel公式のvercel tracesリファレンスで確認してください。
Vercel Tracesの提供プラン・制限とVercel Drains
ここからはChangelogの告知ではなく、公式ドキュメントが定める前提条件です。ダッシュボードで見るトレースとVercel Drainsで異なる提供プラン・上限・課金の考え方を、次の表にまとめます。
| 機能 | 提供プラン | 上限・課金 |
|---|---|---|
| トレース(Session Tracing) | Hobby・Pro・Enterpriseの全プラン | チームあたり月100万spanまで |
| Vercel Drains(公式ドキュメント) | Pro・Enterprise | 利用量に応じた課金(価格はデータ種別によらず同一) |
Vercel Drainsは、OpenTelemetry形式のトレースを外部サービスへ転送する機能です。HobbyまたはPro Trialの場合、監査ログ以外のDrainsを使うにはProへのアップグレードが必要で、転送先は次の2通りから選べます。
- カスタムHTTPエンドポイント
- Vercel Marketplaceのネイティブ連携
サイズと計装に関する主なトレースの制限は、次のとおりです。
- 1リクエストあたり圧縮後10MBのトレースデータまで
- 属性の切り詰め後も圧縮後1MBを超えるspanは破棄される
- Edgeランタイムを使う関数のカスタムspanは表示されない
3点目の非表示は、Session TracingとTrace Drainsという2つの経路に対する制限です。属性の切り詰めは、spanが圧縮後1MBを超えたときにVercelが大きい属性から行うことがあるもので、切り詰めた属性ごとに<属性名>.truncatedという真偽値の属性がtrueで追加されるため、発生の有無を判別できます。
プランごとの月間span上限はVercel公式のSession Tracingドキュメント(Usage and pricing)、Drainsの課金条件はVercel公式のWorking with Drainsドキュメント(Usage and pricing)で確認できます。
trends編集部の一言
今回のChangelogが告知した中心内容は、Vercel Logsのトレース表示にTreeとWaterfallという選択肢が加わったことです。Treeビューの所要時間順の並びは、読み込み時の初期表示に限られることが公式Changelogで明示されています。
References
- Vercel. 「Traces now support Tree and Waterfall views」. https://vercel.com/changelog/traces-now-support-tree-and-waterfall-views, (公式画面表示 2026-07-10; 参照 2026-07-13).
- Vercel Docs. 「Tracing」. https://vercel.com/docs/tracing, (参照 2026-07-13).
- Vercel Docs. 「Session tracing」. https://vercel.com/docs/tracing/session-tracing, (参照 2026-07-13).
- Vercel Docs. 「vercel curl」. https://vercel.com/docs/cli/curl, (参照 2026-07-13).
- Vercel Docs. 「vercel traces」. https://vercel.com/docs/cli/traces, (参照 2026-07-13).
- Vercel Docs. 「Working with Drains」. https://vercel.com/docs/drains, (参照 2026-07-13).
※本記事は公式発表を基に編集しています。内容はAIで確認していますが、誤りや最新情報との差異がある場合は、以下フォームよりご報告ください。
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