株式会社Dropは2026年7月9日、匿名相談アプリ「coe worker」と企業向け管理システム「coe company」を大幅アップデートしました。
coe companyが取り組むハラスメント相談窓口の課題
都道府県労働局へのいじめ・嫌がらせに関する相談は、令和6年度に54,987件となり、13年連続で相談内容の最多を更新しました。厚生労働省の実態調査では、パワハラを受けた後に「何もしなかった」人が36.9%だったのに対し、社内の相談窓口に相談した人はわずか4.5%にとどまっています。
勤務先がハラスメントを認識した後も「特に何もしなかった」という回答が最多で、パワハラでは53.2%にのぼりました。消費者庁の調査でも、通報しない理由の約5割が「適切な対応が期待できない」、37%が「不利益取扱いの恐れ」でした。相談が少ないことは問題がない証拠ではなく、窓口が被害者から信頼されていないシグナルです。
coe companyが対応する救済実効性の政策動向
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)は第3の柱に「救済へのアクセス」を掲げています。人権方針の策定や研修、人権デューデリジェンス(人権DD)が広がる一方で、被害を受けた人が実際に救済される仕組みが取り残されているのが日本の現状です。日本の「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)の改定でも、UNGPsに準拠した苦情処理メカニズム(グリーバンスメカニズム)の構築・運用の促進が明記されています。
2026年12月1日には改正公益通報者保護法が施行され、公益通報を理由とする解雇・懲戒に刑事罰が科されます。罰則は、個人が6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人が3,000万円以下の罰金です。
さらに、通報から1年以内の解雇・懲戒は通報を理由とするものと推定され、通報者の探索や通報妨害も新たに禁止されます。救済の「実効性」は、努力目標ではなく人権DDと法的リスク管理の中核になっています。
coe companyと専門チームが実装する救済の仕組み
同社は、苦情処理メカニズムの実効性を左右する条件を、UNGPs第31原則が示す要件と構築支援の実務知見から整理しました。相談者の心理的安全性や報復の排除、第三者による介入など7つの視点を、アップデートの設計思想としています。
今回は、AIと専門チームの機能を組み合わせ、相談から解決までの一連のプロセスを支える機能を強化しています。主な提供内容は次の5点です。
- coe workerのAIヒアリング機能
- coe companyのAIスコアリング機能
- 対応措置のAIレコメンド機能
- 相談データのAI分析機能
- 専門チームによる運用代行
coe workerのAIヒアリングは、匿名のままAIが対話形式で状況を丁寧に聞き取り、5W1Hの不足を補ったうえで「どのような救済・解決を求めるか」の言語化まで支援する機能です。相談者は24時間365日、スマートフォンから安心して利用できます。窓口の対象は従業員に限らず、サプライチェーンの労働者や取引先にも開かれた設計です。
coe companyでは、寄せられた相談についてAIが人権リスクの緊急度・深刻度をスコアリングして可視化し、法令やガイドラインを踏まえた対応措置を提示します。相談者への返信メッセージの作成もAIが支援し、担当者の負荷と初動の遅れを軽減します。相談データの傾向分析によって、組織課題を特定し、人権DDにおけるリスクの特定・評価にもつなげる仕組みです。
運用代行では、利害関係のない第三者として同社の専門チームが、受付やトリアージ、調査支援までの窓口実務を代行します。48時間以内の初動対応と、AIによる自動分類・専門チームによるダブルチェックを組み合わせることによって、相談の「握りつぶし」や報復を構造的に排除します。
代表取締役の米田真介氏は、「足りないのは意志ではなく、被害を受けた人の声が上がり、受け止められ、救済される『有効な仕組み』です」と語りました。同社は、相談者が安心して話せること、報復が絶対に起こらないこと、第三者が介入すること、初動が早いことをAIと専門チームの力ですべての組織に実装する考えです。
coe companyの2026年7月アップデート概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | 株式会社Drop(代表取締役:米田真介氏) |
| アップデート日 | 2026年7月9日 |
| 対象サービス | 匿名相談アプリ「coe worker」・企業向け管理システム「coe company」 |
| 主な新機能 | AIヒアリングやAIスコアリング、対応措置のレコメンド、相談データ分析 |
| 運用体制 | 専門チームによる運用代行(受付・トリアージ・調査支援) |
| 初動対応 | 48時間以内 |
| 料金体系 | 月額6,000円(税抜)の従業員数連動型。運用代行込みプランは月額26,000円(税抜) |
trends編集部の一言
労働局への相談が13年連続で最多を更新する一方、社内窓口に相談した人はわずか4.5%にとどまっている状況は、「声を上げても届かない」という不信の根深さを表しています。マーケティングの現場でも、顧客からのクレームが少ないことを「満足の証拠」と捉えてしまうケースは少なくありません。実際には、不満を持ちながらも、声を上げずに離れていく顧客が大半だという構造は、今回の調査結果と重なって見えるのではないでしょうか。
AIによる一次対応と専門チームによるダブルチェックを組み合わせる設計は、大量の声を機械的に処理しつつ、最終的な判断は人が担うという役割分担の一例です。マーケティングの現場でも、問い合わせ対応やSNS上の声を拾う仕組みにAIを組み込む動きが広がっていますが、初動の速さと最終的な判断を人が担う体制の両立は共通の課題ではないでしょうか。coe companyの取り組みは、声を「拾う仕組み」をどう設計するかという点で、業界を超えて参考になりそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「人権侵害の「救済」を、仕組みで機能させる。苦情処理メカニズム「coe company」、AI×専門チームで大幅アップデート」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000063220.html, (参照 26-07-12).
