TISI株式会社は、株式会社伊予銀行と共同で、CRMデータを活用した生成AIによる営業支援の実証実験(PoC)を開始することを発表しました。
伊予銀行の営業現場が抱える情報整理の課題
近年、さまざまな業界で生成AIの活用が進んでいます。金融機関においても、業務効率化や顧客サービス向上への活用が期待されています。一方で、セキュリティやコンプライアンスへの対応、利用者のリテラシーを意識した浸透施策など、実業務への適用には慎重な計画が必要です。
伊予銀行では、営業行員が取引情報や交渉記録をCRMシステムで確認し、提案に必要な資料やヒアリング事項を自ら収集するプロセスが標準的な営業活動となっていました。しかし、情報整理や提案準備には一定の時間を要します。過去の応対履歴の活用が担当者の経験やスキルに依存しやすいという課題もあり、営業行員が顧客状況を迅速に把握して、適切な提案を行う仕組みづくりが求められていました。
伊予銀行のCRMデータと生成AIを組み合わせた実証実験の設計
TISI株式会社は、伊予銀行へ金融機関向けソリューション「fcube(エフキューブ)」のCRMシステムを提供しており、顧客情報の確認・共有や交渉記録の登録などに活用されています。伊予銀行のCRMシステムに蓄積された情報を生成AIで活用できる点と、用途に応じて最適化された業務特化型AIが営業実務に適用しやすい点が評価され、本PoCの開始につながりました。
実証実験の実施概要は、以下の通りです。
- 実施期間:2026年10月~2026年11月(予定)
- 対象:伊予銀行の本部・支店の営業行員
- 検証方法:利用者アンケートおよび生成AIの実行ログを活用
- 評価観点:妥当性・可読性・即時性・安全性・効率性
実施にあたっては、TISI株式会社が伊予銀行向けPoC専用環境の構築と検証用プロトタイプアプリケーションの開発を担います。生成AIの利用環境には、「fcube」のサービス環境に準じたセキュリティ対策を施し、閉域ネットワークを介して営業行員が利用する検証端末と接続する設計です。これにより、金融機関のセキュリティポリシーに則った環境を構築し、安全性を確保します。
PoCで得られる知見をfcubeの機能強化へ活用予定
本PoCでは、伊予銀行の本部・支店の営業行員が検証用アプリのチャット画面に法人の顧客情報や提案活動に関する質問を入力し、生成AIが出力した結果が法人営業の高度化に寄与するかを検証します。生成AIの出力が営業行員の顧客理解を深め、適切な営業アプローチの支援につながるかどうかが主な検証ポイントです。
本PoCで得られた知見をもとに、将来的には現行CRMへの実装や営業支援機能の高度化を検討します。また、本取り組みの成果を「fcube」の機能強化や金融機関向けソリューションの高度化に活用していく予定です。
株式会社伊予銀行ビジネスマーケティング部長の山内 隆仁氏は、本取り組みについて次のようにコメントしています。「当行は、2011年にTISIのCRMシステムを導入して以来、15年にわたり営業活動を支える重要なインフラとして活用してまいりました。このたび、同システムと生成AIを組み合わせた実証実験に取り組むことで、お客さまの状況把握や提案の方向性をより的確に捉え、営業活動の生産性向上と高度化の実現を目指しております。」
TISI株式会社と「fcube」の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | TISI株式会社 |
| 所在地 | 東京都新宿区 |
| 代表者 | 代表取締役 社長執行役員:岡本 安史 |
| グループ | TISインテックグループ |
| 顧客数 | 4,500社以上 |
| サービス数 | 300を超えるサービス・ソリューション |
| グループ社員数 | 2万人を超える |
| ソリューション名 | fcube(エフキューブ) |
| PoC実施期間 | 2026年10月~2026年11月(予定) |
| 共同実施先 | 株式会社伊予銀行(本店:愛媛県松山市) |
trends編集部の一言
4,500社以上の顧客基盤を持つTISI株式会社が、地域金融機関と共同でCRMデータと生成AIを組み合わせた実証実験に踏み出した点は、業界全体として注目に値します。マーケティングの現場でも、蓄積された顧客データをどう営業や提案に活かすかは長年の課題であり、「情報は持っているが活用しきれていない」という状況は金融機関に限らず、広く共通しています。
特に注目されるのは、閉域ネットワークによるセキュリティ設計と業務特化型AIという組み合わせです。汎用AIではなく、用途に絞った形で段階的に検証を進めるアプローチは、規制産業以外でも同様の検証手法が広がる可能性があります。本PoCの結果が「fcube」の機能強化へとつながれば、地域金融機関向けAI活用の一つのモデルケースとして業界全体から注目される取り組みです。
References
- ^ PR TIMES. 「TISI、伊予銀行のCRMデータを活用し、生成AIによる営業高度化に向けた実証実験を開始 | TISI株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001946.000011650.html, (参照 26-07-10).
