Workday Inc. は2026年6月2日(米国時間)、開発者向けプラットフォーム「Workday Build」の新機能として「Developer Agent」「Agent-Ready Tools」「Agent Passport」の3つを発表しました。
Workday Buildの3つの新機能が担うAIエージェント開発環境
今日の AI エージェント開発ツールは開発者のコーディングを効率化する一方で、データの正確性やセキュリティ、社内ルールへの準拠を包括的に担保する機能が十分であるとは言えません。
給与計算、福利厚生、または会計帳簿に関わる業務では、わずかなミスであっても給与の未払いや従業員のデータ漏洩、規制当局からの制裁につながる可能性があります。
こうした課題を受けて、Workday Build の新機能3つが発表されました。それぞれが担う役割は以下の通りです。
- Developer Agent:自然言語で AI アプリケーションやエージェントを構築
- Agent-Ready Tools:AI エージェントが人事・財務データに安全にアクセスするための基盤
- Agent Passport:AI エージェントの安全性とコンプライアンスを第三者が検証・証明
開発者はこれら3つの機能を活用することによって、AI エージェントの構築・接続・検証を行えます。
既存ツールの延長でAIエージェントを構築するDeveloper Agent
Developer Agent は、開発者が現在利用している開発スタイルに自然に組み込めるよう設計されました。対応するのは、Claude Code、Cline、Codex、Cursor、Google Antigravity などです。
これらは日常的に使われている AI エージェントの開発ツールであり、その上でそのまま利用できます。開発環境を切り替える必要はありません。
たとえば、「今四半期に予算超過の傾向がある部門を財務部門に通知する AI エージェントを作成して」と入力するだけで、Developer Agent が最適な Workday Agent-Ready Tools を選択し、必要なデータとサービスを連携します。これまで数日を要していた作業を、数分で完了できるようになるのが特長です。
また、開発者は Developer Agent を活用し、オープンな AgentSkills 標準(Skills.md)を用いて、Workday プラットフォーム上で動作する企業向けのカスタムエージェントを構築・展開することもできます。
Agent-Ready Toolsによる安全なデータ連携とAgent Passportの第三者認証
Agent-Ready Tools は、自律型 AI エージェント向けに設計された新カテゴリのエンタープライズコネクターです。従来のデータ連携向け API とは異なり、ハルシネーションやレイテンシー(遅延)を抑えながら、AI エージェントが利用しやすいビジネスロジックとコンテキストを提供します。
Workday 全体で利用可能な Agent-Ready Tools は、数百種類です。Model Context Protocol(MCP)などのオープンプロトコルを通じて接続することによって、AI エージェントは Workday のセキュリティと権限委譲モデル、ビジネスプロセス制御、監査証跡を自動的に継承します。さらに、Pipedream が提供する何千種類もの事前構築済みコネクターのライブラリを活用し、カスタムエージェントアクションの作成にも対応しています。
Agent Passport は、本番稼働前に AI エージェントの安全性とコンプライアンスを検証する仕組みです。どのセキュリティ・コンプライアンス基準に合格したか、誰が検証を行ったか、どの標準に基づいて評価されたかを認証スタンプとして記録します。
企業は、Workday 上のすべての社内・第三者 AI エージェントを継続的に監視・管理できる仕組みです。Agent Passport における最初の認定パートナーとして、Cisco が第三者評価機関の立場で参画します。
Workday Buildの概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供企業 | Workday Inc. |
| プラットフォーム名 | Workday Build |
| 新機能 | Developer Agent / Agent-Ready Tools / Agent Passport |
| 対応ツール | Claude Code、Cline、Codex、Cursor、Google Antigravity |
| 連携プロトコル | Model Context Protocol(MCP) |
| 利用可能コネクター数 | Agent-Ready Tools:数百種類 / 事前構築済み Pipedream コネクター:何千種類 |
| 先行アクセス提供経路 | Workday Extend Professional |
| Developer Agent / Agent-Ready Tools 一般提供予定 | 2026 年下半期 |
| Agent Passport 先行アクセス開始予定 | 2026 年下半期 |
| Agent Passport 一般提供予定 | 2026 年末 |
| 認定パートナー | Cisco |
| Workday の利用実績 | 11,500 社を超える企業(Fortune 500 企業の 65%超を含む) |
| 公式サイト | Workday 公式サイト |
trends編集部の一言
「数日かかっていた作業が数分で完了できるようになる」という表現は、エンジニアリング以外の文脈でも注目を集めるインパクトです。マーケティング業界の文脈に置き換えると、ツール間のデータ連携やレポート自動化のために開発リソースを要する場面は広く存在しており、「自然言語で指示するだけでエージェントが構築される」という設計は、業界全体としては開発依存の構造そのものを変えうる動きと捉えられます。
AI エージェント活用で課題になりやすいのは、「作れる」と「安全に使える」の間にある距離です。業界全体としては、エンタープライズ AI 市場でこの信頼性ギャップをどう埋めるかが共通の論点になってきました。Agent-Ready Tools がハルシネーションやレイテンシー(遅延)を抑える設計を明示し、Agent Passport が第三者認証の仕組みを持ち込んだ構成は、その問いに対する一つの回答として読み取れます。
Cisco が Agent Passport の最初の認定パートナーとして参画した点も見逃せません。セキュリティの文脈で Cisco が第三者評価機関として機能するという構図は、エンタープライズ向け AI 基盤の信頼性設計として、今後のスタンダードになりうるのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「Workday、人事・財務・IT 向け AI エージェントの構築・連携・検証を可能にする開発者向け新機能を発表 | ワークデイ株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000141802.html, (参照 26-06-24).
