Signal Yield Advisoryは2026年5月21日、不動産AIエージェント「土地価格査定クン」v1.4.2をClaude Skillとして公開しました。
「土地価格査定クン」の「白箱方式」と査定根拠開示の仕組み
「土地価格査定クン」v1.4.2は、国土交通省(MLIT)の取引価格情報CSVと地価公示GeoJSON(国土数値情報L01)を入力データとして活用します。ヘドニック対数線形OLS(最小二乗法)により、面積や駅徒歩、道路幅員などの回帰係数を市区町村単位で物件ごとに都度回帰する設計です。事前学習済みモデルではなく、地域ごとの取引データから係数を都度算定することによって、地域実態に即した個別格差補正を実現しています。
統計手法には、不動産経済学で標準的に用いられるヘドニック対数線形OLS回帰を採用しました。過去5年で係数を推定し、直近1.5年で比準事例を選定するハイブリッド期間設計を採っています。このアプローチは「統計比準」と呼ばれ、担当者の経験則と統計的裏付けが整合する場合は補強として、乖離する場合は再検討の論点として、機能する設計です。
査定根拠の開示範囲は、ヘドニック回帰の回帰係数(β・p値・標準誤差)と自由度調整済R²などの統計量に加え、比準表の内訳(採用した3事例の選定理由や補正率、各事例の試算値・査定価格の算出経路)まで及びます。査定根拠を顧客・上席・監査に対して説明・検証できる構造として実装した、本スキルの中核設計思想を「白箱方式」(white-box AVM)と位置付けています。
「土地価格査定クン」における3タブ構成xlsxの一括出力と導入方法
出力物は、同じ案件・同じ根拠データから用途別に3タブを生成するxlsxファイルです。主な構成は次の3点です。
- 業者用タブ(4ページ):査定価格サマリ・比準表の内訳・取引事例の概要・ヘドニック回帰サマリを収録
- 附属資料タブ:公示価格5年推移・ヘドニック係数βランキング・散布図のグラフ集を収録し、白箱方式の根拠を視覚的に検証可能
- 顧客用タブ(机上査定書・3ページ):査定結果サマリ・比準表・重要事項を「ですます調」かつ係数・統計用語を完全非表示で生成
顧客用タブは、売主提示用に「ですます調」かつ係数・統計用語を完全非表示で生成されます。本物判定の4条件として、ファイルサイズ40KB以上や3シート構成、A1セルの認証マーカー・「■ ヘドニック回帰サマリ」セクションの存在をSignal Yield AdvisoryがLP(公式サイト)に明記しています。
Claude CoworkまたはClaude Codeを起動し、1コマンドで導入が完了です。導入後は、自然言語で査定を依頼する形式です。「土地価格査定クンを使って、世田谷区赤堤の120㎡の土地を査定して」のような形で指示が可能です。利用料は不要で、Claudeの契約料金以外に追加費用はかかりません。
「土地価格査定クン」のApache License 2.0採用とGitHub Issues運用
ライセンスにApache License 2.0を採用した理由として、TensorFlow(Google)やKubernetes(CNCF)などの大規模OSSプロジェクトで広く採用されている業界標準ライセンスであることが挙げられています。特許保護条項を含むため、コントリビューターやユーザーが意図せず特許訴訟リスクを抱えることを防ぎます。企業による業務利用や改変、再配布の法務障壁を下げる設計でもあります。
v1.4.2の公開と同時に、GitHub Issuesには14本の論点が起票されました。また、2026年4月に公開した「重調クン」に続く今回のリリースでは、解決済バグ(closed)2件も含む形で運用が始まっています。その内訳は次の通りです。
- Good-first-issue 3本:30分〜2時間で取り組める課題、OSS初参加のエンジニア向け
- 不動産鑑定士レビュー受入Issue 5本:ヘドニック係数の地域別安定性検証や比準格差の補正率上限・下限ロジックの妥当性議論など
- Roadmap 1本:v2.0での国土交通省API連携への移行を予定
- Intermediate 4本・解決済バグ(closed)2本ほか
不動産鑑定士レビュー受入Issueには「needs-appraiser-review」ラベルと「discussion」ラベルが付与されており、レビューを受け付けるIssue群を専用ラベルで明示しています。v2.0では国土交通省API連携への移行を予定するIssueも起票されています。
「土地価格査定クン」v1.4.2の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供者 | Signal Yield Advisory(東京都港区六本木) |
| 代表・開発者 | 松田幸一氏(不動産鑑定士) |
| サービス名 | 不動産AIエージェント「土地価格査定クン」v1.4.2 |
| カテゴリ | オープンソースAVM(自動査定ツール) |
| 公開日 | 2026年5月21日 |
| ライセンス | Apache License 2.0 |
| 導入方法 | Claude CoworkまたはClaude Codeで1コマンド導入 |
| 利用料 | 無料(Claudeの契約料金以外に追加費用なし) |
| 動作環境 | Python 3.10以上推奨 |
| 主な依存ライブラリ | pandas、statsmodels、scikit-learn、openpyxl |
| 入力データ | 国土交通省取引価格情報CSV(不動産情報ライブラリ)・地価公示GeoJSON(国土数値情報L01) |
| 出力物 | 3シート構成xlsx(業者用4ページ・附属資料・顧客用3ページ) |
| 対象物件 | 日本国内の宅地(更地・所有権) |
| シリーズ | クロードコワーカーシリーズ(重調クン・決済クンに続く第二弾) |
trends編集部の一言
不動産価格の評価実務に20年以上携わった不動産鑑定士が、ヘドニック回帰の係数から比準表の内訳まで全開示するAVMをApache License 2.0で公開した点は、業界の外からでもインパクトを感じる発表です。生成AI業務ツール業界全体としては、「ブラックボックスで信頼できない」という懸念への対応が各社共通の課題となっており、根拠を完全に開示する「白箱方式」という設計思想は、AIの説明可能性を重視する業界全体の流れと軌を一にする動きと捉えられます。
係数も補正率も全開示し、本物判定の4条件まで公式サイトに明記する姿勢は、「AIに任せる範囲」と「人が検証できる範囲」を明確に分けた設計です。マーケティング業界の文脈に置き換えると、指標の出所や算出ロジックの透明性を求める声が高まる中で業界横断的に参照される設計思想と言えます。OSSとしてGitHub Issuesに14本の論点を起票し、不動産鑑定士レビュー受入Issueを専用ラベルで整備している点にも注目しています。業界ドメインの専門家がコードレビューに参加できる仕組みを最初から組み込んだ運用設計は、「AVM界のLinux」という目標が単なるキャッチフレーズではないことを示しています。今後のv2.0での国土交通省API連携の動向も、業界全体の注目が集まりそうです。
References
- ^ PR TIMES. 「不動産AIエージェント「土地価格査定クン」v1.4.2、Apache 2.0で公開する初のオープンソースAVM——業界歴20年超の不動産鑑定士が個人開発で「AVM界のLinux」を目指す | Signal Yield Advisoryのプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000182457.html, (参照 26-05-23).
