カラクリ株式会社は動画を撮影するだけでPC業務を自動化するAIアプリケーションを開発し、株式会社TENTIALのカスタマーサポート現場における実証実験で年間約200時間の業務削減効果を確認しました。
約1兆円規模のコンタクトセンター市場が抱える自動化の壁
国内コンタクトセンター市場は約1兆円規模とされ、現場の担当者はCRMやメール、チャット、社内ナレッジなど複数ツールを日常的に使い分けて業務にあたっています。定型的なPC操作を自動化するRPA等のツールはすでに存在するものの、導入にはエンジニアによるシナリオ構築やAPI連携の設定が不可欠であり、現場主導での自動化は困難な状況が続いていました。
カラクリ株式会社は「新人に教えるように、AIに教える」というコンセプトのもと、この課題に取り組みました。Google社の大規模言語モデル「Gemini」と、Qwen2.5-VLをベースにGENIAC第3期で独自開発した国産視覚言語モデル「KARAKURI VL2」を組み合わせた構成により、動画を撮るだけで業務自動化を開始できるアプリケーションの開発に至っています。
3ステップで完結する業務自動化の仕組み
本アプリケーションによる業務自動化は、3ステップで完結する設計です。現場担当者が通常の業務操作を画面録画しながら口頭で説明するだけで、以降の工程はAIが自動的に処理します。具体的な流れは以下の通りです。
- ステップ1:自動化したい業務を画面録画しながら口頭で操作説明
- ステップ2:Google社「Gemini」が動画を解析し操作手順書を自動生成
- ステップ3:「KARAKURI VL2」が手順書に基づきPC画面を認識して自律実行
業務動画の撮影とアップロードを含む初期設定の所要時間は約15分です。株式会社TENTIALとの実証実験では、カスタマーサポートにおける「お問い合わせの振り分け作業」を対象に検証を行い、年間約200時間の業務削減効果が確認されました。
国産視覚言語モデル「KARAKURI VL2」の技術概要
「KARAKURI VL2」は、経済産業省GENIAC第3期の採択を受けてカラクリ株式会社が開発した国産視覚言語モデルです。8B(80億)パラメータの軽量設計により、ローカル環境での動作が可能な点が特徴として挙げられます。
PC画面を認識して操作を自律的に実行する能力を持ち、機密データを外部に送信せずに運用できるため、セキュリティ要件の厳しい環境にも対応しています。アプリケーション全体はカラクリ株式会社が、ソリューション設計や開発、UI構築を担い、各工程に最適なAI技術を組み合わせたアーキテクチャで構成されています。
カラクリ株式会社のAIアプリケーション概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 開発元 | カラクリ株式会社 |
| アプリケーション種別 | PC業務自動化AIアプリケーション |
| 初期設定時間 | 約15分(動画撮影・アップロード含む) |
| 実証実験先 | 株式会社TENTIAL(カスタマーサポート現場) |
| 削減効果 | 年間約200時間 |
| 搭載モデル | Google社「Gemini」・国産視覚言語モデル「KARAKURI VL2」 |
| KARAKURI VL2パラメータ数 | 8B(80億) |
| 開発支援 | 経済産業省GENIAC第3期 |
| 所在地 | 東京都中央区 |
| 設立 | 2016年10月3日 |
| 代表者 | 代表取締役CEO小田 志門氏 |
| URL | https://about.karakuri.ai/ |
trends編集部の一言
約15分の初期設定だけで年間約200時間の業務削減が確認されたという数字は、投資対効果の観点から業界を問わず注目を集める水準です。マーケティング業界の文脈に置き換えると、MA運用やCRM操作など定型的なPC業務の自動化はエンジニア依存が前提とされてきた領域であり、「動画を撮るだけ」で現場主導の自動化を実現する設計は、業界全体における自動化の参入障壁を根本から問い直す動きと読み取れます。
8B(80億)パラメータの軽量モデルでローカル動作・外部送信なしという構成は、機密性の高いデータを扱うBtoBマーケや金融・医療系の業務現場において、生成AI導入時の検討対象になり得る可能性があります。「人に教えるようにAIに教える」というアプローチが対象領域をカスタマーサポートから複数業務へ拡大していく方向性は、マーケティング業界における業務自動化の設計思想にも影響を与える動向として示唆を含むのではないでしょうか。
References
- ^ PR TIMES. 「カラクリ、動画を撮るだけでPC業務を自動化する国産AIを開発 —コンタクトセンター現場で年間200時間の業務削減を実証 | カラクリ株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000155.000025663.html, (参照 26-05-15).
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