Google ADKで4時間。未経験の参加者が作った7つのAIエージェント
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「ADK(Agent Development Kit)でエージェントを作ったことがある人はいますか」。2026年9月4日、Build with Gemini TokyoのApp Buildersトラック。セッションの最初に講師がこう聞くと、手が挙がったのは参加者のおよそ1割だった。
この記事の要点
- 開始時に「ADKでエージェントを作ったことがある」と手を挙げたのは、参加者のおよそ1割だった。
- Antigravityにプロンプト1本でスキルとAgents CLI を入れ、作成・テスト・クラウドへのデプロイまでを前半で通した。
- 後半は自由制作。7件の発表が並び、トークン消費量の可視化から懇親会プロデューサーまでが出そろった。
- 4時間で変わったのは知識ではなく、「作ったことがある」という一点だった。
目次
座学の途中でも、講師はこう言い添えている。
今日はこのイベントが終わったら、ADKでエージェントを作ったよと言えるようになりますので、そこはご安心ください。
4時間後、同じ質問がもう一度投げられる。この記事は、その間に何が起きたかの記録だ。イベント全体の様子はこちらの参加レポート(Build with Gemini Tokyo参加レポート。世界を巡回するGoogle のハンズオン、2日間の全記録)、運用とガバナンスの話はこちら( AIエージェントを本番運用する前に、権限・防御・評価をどう設計するか)、ノーコード編はこちら(Gemini Enterpriseでどこまでできるか。コードを書かない4時間で回した7つの業務シナリオ)にまとめている。
会場に立てられていたTrack2の案内看板
4時間の設計
座学 — なぜエージェントなのか
ハンズオンに入る前に、短い座学があった。出発点は素朴な確認からだ。
LLM自体は、1回会話したら前に会話したことも全部忘れてしまうし、質問した内容のことしか回答してくれないし、インターネットにもアクセスできない。だからLLMだけでは、あまり仕事にならないですよね。
そこを補うのがエージェントで、構成要素は4つ。モデル、ツール、メモリ、そしてオーケストレーション。図ではメモリがオーケストレーション層の内側に描かれていた。このトラックではオーケストレーション層にADKを使う。
興味深かったのは、エージェントの利点として非決定論的であることが挙げられた点だ。従来のアプリは同じ入力なら同じ経路を通るが、エージェントはその保証がない。それは欠点にも見えるが——
AIエージェントの場合は、想定外のユースケースにも対応できてしまう。そこが大きな違いかなと思います。
この「対応できてしまう」性質と、業務に求められる信頼性をどう両立させるか。それがエージェント設計の核心だ、という整理だった。
ハーネスという言葉
座学で繰り返し出てきたのが「ハーネス」だ。定義はシンプルで、AIのモデル以外はすべてハーネス。ツール、データ、メモリ、ガバナンス、オーケストレーション層。そのすべてを含む。
ハーネスの構成要素として説明されたなかで、実務に直結しそうだったのは次の3つだった。
- ループのコスト。AIを1回呼んで終わりではなく、結果を見て問いを変えながら何度も回す。ただし「何回も何回もループさせると結構コストがかかる」し、時間もかかる。精度・体験・コストのバランスを取る必要がある
- 短期メモリと長期メモリの分離。旅行エージェントの例が分かりやすかった。ニューヨーク行きの航空券やホテルはそのセッション限りの短期メモリ。一方、「ベジタリアン」「ビーチの近くのホテルが好き」といった好みは、沖縄旅行でもニューヨーク旅行でも使える長期メモリになる
- ガードレール。「エージェントに何でもかんでもアクセスさせると、結構大変なことになります」。プロンプトインジェクションでジェイルブレイクさせ、データを引き出す攻撃が増えているとして、読み書き権限の細分化とデプロイ後の可視化が強調された
エージェントのアーキテクチャ。メモリはオーケストレーション層の中に置かれている
非決定論的なエージェントを制御する「エージェント基盤(Harness)」
マルチエージェントの3類型
ADKで組めるマルチエージェント構成は3つに整理された。
| 型 | 用途 |
|---|---|
| Sequential | タスクを順番に実行する。決まった業務フローに向く |
| Parallel | 複数タスクを同時に走らせる。オープンな問題やアルゴリズム探索向きで、一般的な業務では出番が少ない |
| Loop | 結果を見て問いを改善しながら繰り返す。「すごく重要」と強調された |
あわせて、ADKのワークフロー(グラフ)機能についても触れられた。サブエージェントへの分岐を「プロンプトだけで解決しているケースが結構多い」が、明示的に条件分岐を書けば、非決定論的な動きをやや決定論寄りに戻せて信頼度が上がる、と。
ADK自体はオープンソースで、Google Cloudに限らずオンプレミスでも動く。中身を改変することもできる。
ADKのワークフローエージェント。LlmAgentを基本に、Sequential/Parallel/Loopを組み合わせる
Agents CLI — エージェントを作るための「スキルの塊」
このトラックのもうひとつの主役がAgents CLIだった。中身は、エージェントの作成やデプロイの手順書(スキル)をまとめたスキルの塊で、オープンソースとして公開されている。
講師の説明が腑に落ちる。人間だってデプロイするときはどこかのドキュメントを見る。それと同じで、コーディングエージェントが読むためのドキュメントを、スキルという形で用意しておく。GKEやCloud Runへのデプロイ手順もスキル化されている。
Agents CLIは、この日の開発環境(Antigravity)の専用ツールではない。他社のコーディングエージェント上でも使える、という説明もあった。
Agents CLIの紹介。開発・テスト・デプロイをコマンドラインから行う
良いエージェントを作る5つのコツ
座学の締めくくりに、実務的な指針が5つ挙げられた。
- プロンプトエンジニアリング。「これがエージェントの一番重要なところ」と明言された。実務でも十分にやられていないケースが多い、という指摘つき
- 仕事のスコープ設計。広すぎると失敗し、細かすぎるとサブエージェントが増えて不安定になる。バランスの問題
- ツールと、必要最小限のアクセス権限
- コンテキストエンジニアリング。適切なタイミングで適切なデータを渡す
- 評価を、構築段階から考える
AIエージェント構築を成功に導く5つのベストプラクティス
作る、試す、出す — 前半のハンズオン
座学が終わると、あとはひたすら手を動かす時間になる。前半はガイドに沿って全員で同じものを作った。
手順書は3種類用意されていた。英語版、手順が日本語でプロンプトは英語の版、そして全部日本語の版。プロンプトも日本語で打ちたい人向けに用意した、という説明だった。
Step 1 — スキルを一括で入れる
Antigravityにプロンプトを1本投げるだけで、必要なものがまとめて入る。ADKでエージェントを作るためのスキル、Developer KnowledgeのMCPサーバー、FirebaseのMCP、そしてAgents CLI一式。ダウンロードとセットアップに数分かかり、会場全体で待ち時間が生まれた。
Step 2〜4 — 作って、テストする
Agents CLI経由で、ローカルで動く簡単なエージェントを生成する。環境変数やプロジェクト設定は、エージェントが裏で勝手にやってくれる。
テストは2通り示された。ひとつはサーバーを立てずにコマンドラインから叩く方法。「ニューヨークの天気を教えて」と投げると、90°Fという答えが返る。もうひとつがADK Playgroundで、ローカルのlocalhost:8080をブラウザで開く。
前半でいちばん得るものが多かったのが、このPlaygroundだった。左のペインでルートエージェントからツール呼び出しまでの流れをトレースでき、右で個々のリクエストとレスポンスの中身を見られる。トークン数も出る。画面には1リクエスト356トークン、セッション合計766トークンと出ていた。
これぐらいだと、1円にもなっていないかな。
ガイドの「最初のエージェントの構築」。Playgroundの起動手順
ADKの開発UI。ツール呼び出しと応答をイベントとして追える
どのツールがどの順で呼ばれたかを追えるので、デバッグに使えるという説明だった。「めちゃくちゃ便利」という講師の言葉には実感がこもっていた。
Step5 — クラウドへ出す
デプロイも、プロンプトを投げるだけだった。所要2〜3分。
ちゃんとしたコマンドはあるんですけども、そのコマンドを覚えるのって大変ですよね。なので、こういうところはエージェントにやってもらうのが楽かなと思います。
デプロイ先はエージェント専用の実行環境で、完了すると3つのものが発行される。アプリから呼び出すためのID、マシン間のアクセス権限を担うサービスアカウント、そしてそのエージェントが何をできるかを外部に伝える「エージェントカード」だ。
この実行環境は ADK 製に限らず、他のフレームワークで作ったエージェントも受け入れるという説明もあった。デプロイ後のコンソールでは、アクセス数やモニタリング設定、セキュリティ機能の適用状況が確認でき、コンソール上でも動作テストができる。
ガイドの「Agent Platformへのデプロイ」。一行の指示でデプロイする
ここまでが前半。作る、ローカルで試す、クラウドに出す。多くの参加者がデプロイまで終えた時点で、休憩に入った。
後半 — 何を足すかは、自分で選ぶ
後半は2人1組での自由制作だ。ここで配られたのが、いわば機能のカタログだった。手順書に用意されたプロンプトをコピーして実行すれば、そのまま追加できるという形で9種類が並ぶ。
- メモリ(短期は標準で有効、長期は専用の仕組みをセットアップ)
- 永続ストレージ(データベース、ファイルストレージ。バケット作成まで自動)
- ツールの追加(何を使うべきかをエージェント自身に聞いてもいい)
- RAG(時間がかかるためオプション扱い)
- 画像生成
- サンドボックスでのコード実行
- 動的にカスタムUIを生成して返すプロトコル
- フロントエンドの構築
- GitHubへの公開(当日は任意)
講師は入力例として「手元にある材料から料理を提案し、お気に入りを保存するレシピアシスタント」を挙げていた。コツは、作りたいものをなるべく細かく書くこと。
後半の自由制作。ガイドの左の目次が、追加できる機能の一覧にあたる
参加者がつくったもの
そして、7件の発表が並んだ
最後の30分は成果発表。飛び入りを含めて7件の発表があった(うち2件は同じチームから)。
トークン消費量の可視化エージェント
バックグラウンドのエージェントに自然言語で問い合わせ、使用量を可視化する。UI はクラウドにデプロイ済み。発表者は「認証も気にせず簡単にデプロイできた。この辺りはやはりGoogleスイートの中でということで、とても便利だなと感じました」と話していた。
動画・アニメ・マンガの生成エージェント
ベトナムから参加した人の作品だ。内容生成・チェック・動画作成を3つのエージェントで分担する構成で、ボタンで選んで生成できる。マンガモードもある。
役割別エージェントのプロンプト設計(CriticAgentへの指示部分)
プロポーズプラン提案エージェント
「プールのあるレストランで、プールサイドでプロポーズしたい。12月24日は空いているか」と入力すると、空き枠とプロポーズのイメージ画像を提案する。ホテルとレストランを運営する会社に勤めているという発表者の、実務がそのまま発想の元になっていた。
猫まっしぐら度 測定エージェント
猫が何を何分で食べたかをチャットで伝えると、スコアを返す。「マグロの高級缶を3分で食べた」で100点。発表者の動機が具体的だった。
ちょっと奮発していいものを買った時にあまり食いついてくれなくて、無駄な在庫を作ってしまったことがあったので、そういう猫の好みを判定してくれる AI がいてくれたら嬉しいのかなと思って作りました。
猫の食事記録ウェブアプリ
上と同じチームのもう一人の作品。Antigravityが普通にウェブアプリを作り始めたのでそのまま仕上げたという。入力は裏側でデータベースに保存され、AIチャットで「何が好きだったか」「どれくらい食べたか」を聞ける。
猫の食事を記録し、チャットで問い合わせられるウェブアプリ
商品レビューのワードクラウド生成アプリ
商品を検索してレビューを取得し、サクラレビューを除外してから頻出語をワードクラウドにする。デモでは検索が何度か失敗したが、スマートウォッチで試すと成功し、「バッテリーの持続時間」が大きく表示された。
サクラを除外してレビューを分析するアプリのデモ画面
懇親会プロデューサー
トリを務めたのが、この日の懇親会そのものを題材にした作品だった。参加メンバーのペルソナを設定すると、会場と時間、席次と相性、話題とNGネタを3つのエージェントが並列に検討し、統合役がひとつの提案書にまとめる。最後はチャット形式で詰めることもできる。
3つのエージェントが並列に動く構成が画面に示されている
「AI懇親会プロデュース提案書」を発表する場面
並列実行が本当に効くユースケースはそう多くない、と座学では説明されていた。その少ない例のひとつに見えた。
もう一度、手を挙げてもらう
クロージングで、講師は最初と同じ質問を投げた。ADKでエージェントを作ったことがある人。
今度は、ほぼ全員の手が挙がった。
4時間で何が変わったか。 フレームワークの知識でも、コードを書く速さでもない。「作ったことがある」という一点だけだ。しかしエージェント開発において、その一点は思っているより大きい。作ったことがあれば、次に何を足すかを考える入り口に立てる。
記憶に残った成果物は、猫の食事記録であり、プロポーズの提案であり、懇親会の席次だった。どれも、作った本人が「あったら嬉しい」と感じたものだ。座学で語られた「想定外のユースケースにも対応できてしまう」という性質は、こういう形で現れるのだと思う。
本記事で扱ったセッションの登壇者:Haren Bhandari 氏(Google Cloud)。
今回話を聞かせてくれたのは
More to learn
- Agent Development Kit(ADK) — 本記事のハンズオンで使われた開発フレームワークの公式ドキュメント。オープンソースで公開されている adk.dev
- Google Antigravity — 参加者がエージェントを組み立てるのに使ったプラットフォームの公式サイト antigravity.google
- GEAR(Google Developer Program) — Google Cloudの無料トレーニングプログラム。当日のグッズ配布条件にもなっていた(特典の内容は公式ページを参照) developers.google.com/program/gear
- 第5回 Agentic AI Hackathon with Google Cloud — この日作ったものを提出できるコンテスト zenn.dev/hackathons/google-cloud-japan-ai-hackathon-vol5
- Agentic AI Summit 26 Fall — 10月29日・30日開催。Day2が開発者向け cloudonair.withgoogle.com/events/agentic-ai-summit-26-fall
リンク先は公式ページおよび主催者による告知ページです(2026年9月時点)。
2日間の全体像は、ハブ記事にまとめています
Build with Gemini Tokyoが世界のどの流れの中にあるのか、Day1とDay2で何が行われたのかは、参加レポート本編で通してご覧いただけます。







