Build with Gemini Tokyo参加レポート。世界を巡回するGoogle のハンズオン、2日間の全記録
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2026年9月3日と4日の2日間、高輪ゲートウェイ駅に直結するTAKANAWA GATEWAY Convention Centerで、Google Cloud主催のハンズオンイベント「Build with Gemini Tokyo」が開催された。参加者はノートPCを開き、その場で AI エージェントを作り、動かし、壊れたものを直す。座って聞くタイプのカンファレンスではない。
編集部は事務局の許可を得て、両日を取材した。この記事では、そこで何が行われ、何が語られたのかを、行けなかった方にも伝わる形でまとめる。
この記事の要点
- Build with Geminiは世界の主要都市を巡回しているGoogle Cloudの公式プログラムで、東京はアジア太平洋の初回にあたる。
- 公式に掲載されている東京の開催日は9月4日。前日のDay1 は、GoogleとKaggleの集中講座シリーズのコンテンツにあたる。
- Day2 のトラック番号は、東京だけ海外の開催回と入れ替わっている。他都市の資料を参照するときに効いてくる差分。
- 2日間を貫いていたのは、価値の重心が「作れること」から「確かめられること」へ移っているという認識だった。
目次
高輪ゲートウェイ駅の構内。芝生のような待合スペースが広がる
構内に置かれたピアノ
TAKANAWA GATEWAY Convention Centerのエントランス
受付はB2F。案内看板が来場者を迎える
このイベントは、どこから来たのか
このイベントは東京だけのものではない
まず押さえておきたいのは、Build with Geminiが世界の主要都市を巡回している公式プログラムだということだ。Google Cloudのイベントページには、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、サニーベール、シカゴ、マウンテンビュー、サンティアゴ、メキシコシティ、テルアビブ、ミュンヘン、ベンガルール、ハイデラバード、ソウルといった都市名が並ぶ。8月に北米で始まり、秋にかけて各地を回っている。
・Build with Gemini | Google Cloud東京の開催日として公式に掲載されているのは9月4日だ。つまり公式に本編とされているのは Day2 のほうで、Day1 は掲載されていない。ただし Day1 の中身も日本オリジナルというわけではなく、登壇者は冒頭でこう説明していた。
これは、GoogleとKaggleが共同開催している「AI/エージェント 5日間集中」シリーズのコンテンツの一部です。
Googleが世界で展開している2つのプログラムを、東京では2日間に束ねて提供した——というのが実際の姿ということになる。アジア太平洋では東京が初回で、このあとベンガルール、ハイデラバード、ソウルと続く。
東京だけ、トラックの番号が入れ替わっていた
Day2は参加者の役割別に3トラックが並行して開かれた。会場には、それぞれの部屋の前に案内看板が立っていた。
Track1 Platform Builders
Track2 App Builders
Track3 Business Builders
興味深いのは、この番号の振り方が海外の開催回と異なる点だ。サンフランシスコやニューヨークの公式ページを見ると、Track1がBusiness Builders、Track2が Platform Builders、Track3が App Builders となっている。内容の対応関係は同じだが、東京では番号だけが入れ替わっている。
| 内容 | 世界標準 | 東京 |
|---|---|---|
| ノーコードでの業務自動化 | Track1 Business Builders | Track3 |
| エージェント基盤の統制と運用 | Track2 Platform Builders | Track1 |
| コードファーストのアプリ開発 | Track3 App Builders | Track2 |
些細な違いに見えるかもしれないが、他都市の参加レポートや資料を参照するときには効いてくる差分だ。「Track 2 の話が面白かった」と言ったとき、東京と海外では指しているものが違う。
2日間で、何が行われたか
Day1 — 「雰囲気で書く」から「設計して検証する」へ
Day1 のセッションは英語で行われた。テーマは、AI にコードを書かせる開発が次の段階へ移りつつある、という話だ。
登壇者はまず、いま起きている変化を確認するところから始めた。コーディングエージェントとモデルが揃ったことで、少し前には不可能だった開発の進め方ができるようになった。そのうえで、自然言語で指示して「動けばよし」とするバイブコーディングは、ハッカソンには最適でも本番運用には向かないと指摘する。説明責任と品質チェックの所在が消えてしまうからだ。
開発者がそのコードを生成していない可能性さえあります。エージェントや LLM の出力に頼って、言っていることをただ信じるだけになる。ハルシネーションのリスクがあるにもかかわらず、です。
セッションでは、開発者の働き方を、IDEのなかでAIと並走するConductorと、タスクを分解して背後のエージェントに任せるOrchestratorの2つに整理していた。結論は「意図(intent)が新しいインターフェースになる」という一文だった。
開発者の役割の変化 ― ConductorとOrchestrator
セッションの結論。意図(intent)が新しいインターフェースになる
後半は「エージェントスキル」の話に移った。スキルとは、要するに SKILL.md というファイルを含んだフォルダのことだ。エージェントに特定の手順を決まったとおりに実行させるための、いわば業務手順書にあたる。
この設計で肝になるのが、段階的な情報開示(プログレッシブ・ディスクロージャー)という考え方だった。エージェントは最初、スキルの名前と説明だけを読む。ここは30〜80トークンしかかからない。実際に使うと判断してはじめて本文を読み、必要になってはじめて参照ファイルを読む。
なぜそこまで切り詰めるのか。登壇者の説明は明快だった。
本番環境でまず問うべきは、エージェントが失敗する最大の原因は何かということです。ハルシネーションではありません。第一の原因は、コンテキストのオーバーフローと劣化です。
コンテキスト予算の管理。巨大なプロンプトをスキルライブラリ化すると、使用中のコンテキストが15万トークンから2千トークンへ減るという
会場からは、日本の立ち位置についての質問も出た。登壇者は「日本ではまだエージェントエンジニアリングがあまり普及していないと聞いています。それが、このワークショップを開催している理由のひとつです」と答え、米国や欧州ではすでに多くの企業が移行しつつある、と続けた。世界を巡回するプログラムが東京にやってきた理由が、そのまま語られた場面だった。
Day2 — 3つの部屋で、3つの現在地
翌日の Day2は、午後いっぱいを使ったハンズオンだ。3つの部屋で同時に、まったく違う内容が進行していた。
Track1 Platform Builders — 統制のないエージェント基盤を、監査する
このトラックでは、新しくアプリを作るのではなく、すでに動いている基盤を点検する側に回る。参加者は架空の大手家電量販店「NovaCorp」のAIプラットフォームのセキュリティ責任者という役どころで、無秩序に増えてしまった環境を調べ、直していく。
調査を進めると、登録されていない野良エージェントが Cloud Run 上で動いていること、別のエージェント用のサービスアカウントを使い回していること、そのアカウントがプロジェクト全体の管理者権限を持っていることが次々と見つかる。
圧巻だったのは、プロンプトインジェクションを実際に成功させてみせた場面だ。攻撃用の文字列を送り込むと、値引き上限を突破させることに成功し、さらに顧客データを20件そのまま引き出すことができてしまう。そのうえで防御機能(Model Armor)を導入して再検証すると、値引きの攻撃は止められた一方、顧客データの流出は止められなかった。
登壇者は「自分の設定の問題かもしれない」と留保を置きつつ、止められなかった結果もそのまま画面に出したうえで、「すべてが完璧になるわけではない。何ができて何ができなかったのかを把握することが大事です」と締めていた。
Day2 Track1で登壇するKaz Sato氏
Track2 App Builders — 手を挙げた経験者は、1割だった
こちらは開発者向け。セッションの最初に「ADK(Agent Development Kit)でエージェントを作ったことがある人」と挙手を求めたところ、手が挙がったのは1割ほどだった。
今日はこのイベントが終わったら、ADKでエージェントを作ったよと言えるようになりますので、そこはご安心ください。
前半はガイドに沿って、エージェントを作り、ローカルでテストし、Google Cloudにデプロイするまでを全員で通す。後半は2人1組になって自由制作。そして最後の30分が成果発表だった。
Track3 Business Builders — コードを書かない人のための4時間
非エンジニア向けのトラックでは、Gemini Enterpriseを使って7つのシナリオを回した。企業サイトを読ませて要約し広告画像を作る、自然言語で問いかけてBigQueryを集計させる、監視カメラの動画3本と社内ガイドラインのPDFを突き合わせて違反レポートを作る、といった具合だ。
ここで扱われたワークフローエージェントは、取材当日に一般提供が始まったばかりの機能だった。登壇者が「ちょうど今日体験いただいたワークフロー、今日 GA なんですよね」と話す場面もあった。
受講姿勢についての言葉が、このトラックの性格をよく表していた。
そのユースケースが自分に当てはまるかどうかよりも、そのユースケースをどういう機能で実現しているのかに注目しながら触っていただければと思います。
「出来立てほやほやの、アツアツのコンテンツなんです」
Day2のTrack1を担当した、Google CloudのCloud AIチームに所属するStaff Developer Advocate、Kaz Sato氏に会場でコメントをいただいた。
このイベントはグローバルなイベントなんですよね。しかも結構短期間で作られて。今日取り上げられたテーマがすごく重要で、お客様にすぐ提供しなきゃ、という熱意に駆られて、アメリカのチームが率先してコンテンツを作って、我々もそれを日本語化したりという形で提供している。もう出来立てほやほやの、アツアツのコンテンツなんですね。
これからもこういう取り組みを継続的にして、Geminiだとか今回のAntigravityだとか——特に今日扱ったテーマというのは、ただ単にGeminiを使うだけじゃなくて、それをどうやって本当のITシステムとして、社会的責任を果たせる形にするか、というところがメインだったので。そういった形でお届けできる体制が整っていますよ、ということをお伝えするワークショップでした。これからもこういう内容をどんどん届けていきたいと思いますので、ご期待いただければ、またご参加いただければと思います。
開催都市の数についても伺った。「世界で100までは行かないですけど、数十都市でやっているんですよね。アメリカの同僚が、もういろんなところを飛び回って」。公式ページに並ぶ十数都市がすべてではない、ということになる。
取材に応じてくださったKaz Sato氏。Day2 Track1の会場にて
同氏が「冒頭にも申し上げたんですけれども」と言い添えたとおり、同じ趣旨はTrack1の開始直後にも語られていた。
このワークショップ自体、日本だけでやってるんじゃないんですよね。元々はアメリカで先月ぐらいから始まって、全世界で数十都市で実行しているプログラムでして。今日みなさんに触っていただくコンテンツは、もう出来たてほやほや、アメリカから届き立てのやつを機械翻訳してるんですね。
機械翻訳のままなので表現が硬いところがある、と断ったうえで、同氏は「その代わり、非常にできたばっかりの新しいコンテンツを体感していただければ」と続けた。実際、教材の一部はこの時点でまだ完成していないと説明されている。
巡回しているのはコンテンツだけではない。各都市でわかったことが、次の都市の設定に反映されている。
一番最初、Antigravityでワークショップをやった時、ロンドンとかでやった時に……コマンドを一個一個実行するために、許可、許可、許可、許可って、ただ参加者の人がひたすらボタンを押しまくりのワークショップというのが一回あってですね、数ヶ月前に。これはダメだということで、今回のみなさんの環境では許可なしで自動的に進むような設定になっているので、かなり改善しました。
数ヶ月前のロンドンでの一件が、この日の東京の設定に効いている。「出来立てのコンテンツをそのまま届けている」という言葉は、こういう形で裏づけられていた。
いただいたコメントで最も重いのは、後半の一節だと思う。Geminiを使うこと自体ではなく、それを社会的責任を果たせるITシステムとして成立させること——それが今回のテーマだった、という説明は、Track1で目の当たりにした光景とそのまま重なる。統制のないエージェント基盤を監査し、攻撃を受けさせ、防ぎきれなかった部分まで見せる。あの構成は、この言葉をそのまま形にしたものだったことになる。
会場で起きていたこと
参加者が、その日つくったもの
Track2の成果発表は7件。4時間前には9割がADKを触ったことがなかった、とは思えない振れ幅だった。
- トークン消費量を自然言語で問い合わせて可視化するエージェント
- 内容生成・チェック・動画化を3つのエージェントで分担する、動画とマンガの生成ツール(ベトナムからの参加者)
- プロポーズのプランを提案するエージェント。ホテルとレストランを運営する会社での実務が発想の元になっている
- 猫が何をどれくらいの速さで食べたかを伝えるとスコアを返す「猫まっしぐら度」測定エージェント
- 猫の食事記録ウェブアプリ。入力は裏側でデータベースに保存され、チャットで「何が好きだったか」を聞ける
- 商品レビューを取得し、サクラを除外してワードクラウドにするアプリ
- 参加者のペルソナを入れると、会場選び・席次・話題出しを3つのエージェントが並行して考える「懇親会プロデューサー」
「AI懇親会プロデュース提案書」を発表する参加者
クロージングで再び「ADKでエージェントを作ったことがある人」と聞くと、今度はほぼ全員の手が挙がった。
会場の空気
休憩は小まめに入り、後方にはドリンクと軽食が用意されていた。参加者どうしが画面を見せ合って話す、ほどよくガヤガヤした空気がある。
会場の一角にはSwag Stationが設けられていた。オリジナルのステッカーは来場者に配布され、GEARに登録するとバッグやボトルなどのグッズも受け取れる、という案内だった。
GEARは、Geminiを使ったエージェントの構築と運用を無料で学べるGoogle Cloud公式のトレーニングプログラムだ。当日その場で登録して、そのままグッズを受け取っている参加者が並んでいた。
GEARに登録すると受け取れるグッズ。ロゴ入りのステンレスボトルとバックパック
ワークショップを最後まで受講した参加者には、修了記念のデジタルバッジも用意されていた。Day2の終了後には懇親会があり、料理を囲んで会話が続いていた。
Swag Stationに並ぶ来場者
懇親会に用意されたビュッフェ
取材を通して見えたこと
2日間で繰り返し出てきた言葉は、3つに集約できる。
1つ目は人間がどこで確認するか。ハンズオンのラボ環境では、AIの提案をすべて自動承認する「ターボモード」が使われていたが、登壇者は繰り返し「これはデモ用です」と釘を刺していた。本番では実装計画を必ず読み、コメントを付け、納得してから進めること、と繰り返し念を押していた。Track 1の登壇者からは「人間がある程度責任を持つステップは、まだ2026年現在においては外せない」という言葉も出た。
2つ目は決定論に寄せること。ADKのワークフローエージェントで手順に条件を書けるのも、スキルという形で手順を固定するのも、生成AIの判断に委ねる範囲を意図的に狭める方向にある——と受け取れた。
3つ目は、コンテキストに何を載せるか。エージェントが失敗する第一の原因がコンテキストの膨張であるなら、限られた枠に何を入れて何を入れないかが設計そのものになる。
裏返せば、「作る」ことのハードルはもう下がりきっている。プロンプトを数文投げれば、プロジェクト構造も評価テストも生成される。だからこそ価値の重心が、作る側から確かめる側へ移っている——2日間の別々のセッションが、それぞれ違う角度から同じことを言っていた。
Kaz Sato氏の「本当のITシステムとして、社会的責任を果たせる形にするか」という一言は、その総括にあたるのだと思う。Track1の登壇でも「エージェントを作った場合も、これまでのITシステムと同じで、一番重要なのは Ops、オブザーバビリティ、運用、ガバナンス」と語られていた。
今回話を聞かせてくれたのは
2日間で登壇された方々を、公式の登壇者情報と当日のセッションをもとに整理した。
クロージングで発表された今後のイベント
クロージングでは、今後のイベントが案内された。
- 第5回 Agentic AI Hackathon with Google Cloud(Zenn 主催、Google Cloud Japan協力)。エントリー期間は、2026年8月20日~10月15日。応募を検討する場合は公式ページで最新の日程を確認してほしい。関連するミニハッカソンが、福岡・大阪に加えて渋谷でも開催予定と掲載されている
- Agentic AI Summit 26 Fall 10月29日・30日、ベルサール渋谷ガーデンとオンラインのハイブリッド。Day1がビジネスリーダー向け、Day2が開発者向け
第5回 Agentic AI Hackathonの案内
Agentic AI Summit 26 Fallの案内
この記事では2日間の全体像を追ったが、各トラックの中身にはまだ書ききれていないものが多い。稿を改めて、3本の記事で紹介する。
- 10月11日(日)公開予定:AIエージェントを本番運用する前に―権限・防御・評価の設計
- 10月14日(水)公開予定:Google ADK ハンズオン―未経験者が作った7つのAIエージェント
- 10月17日(土)公開予定:Gemini Enterprise ノーコード実践―4時間で回した7つの業務シナリオ
More to learn
- GEAR(Google Developer Program) — Google Cloudの無料トレーニングプログラム。当日のグッズ配布条件にもなっていた(特典の内容は公式ページを参照)developers.google.com/program/gear
- Build with Gemini — イベントの公式ページcloudonair.withgoogle.com/events/build-with-gemini26q3
-
第5回 Agentic AI Hackathon with Google Cloud
— 応募要項と日程zenn.dev/hackathons/google-cloud-japan-ai-hackathon-vol5 -
Agentic AI Summit 26 Fall
— 10月29日・30日開催cloudonair.withgoogle.com/events/agentic-ai-summit-26-fall
リンク先は公式ページおよび主催者による告知ページです(2026年9月時点)。
各トラックの中身は、3本の記事に分けて掲載しています
この記事では2日間の全体像を追いました。Track1のガバナンス、Track3のノーコード、Track2の開発者向けハンズオンについては、それぞれ稿を改めて詳しく紹介しています。
Google Cloud のハンズオンイベント
「Build with Gemini Tokyo」取材レポート
Google Cloud が世界各都市を巡回して開いているハンズオンイベント「Build with Gemini」が、9月3日・4日に東京で開催されました。参加者は NO-CODE・LOW-CODE・PRO-CODE の3トラックに分かれ、業務で使える AI エージェントを実際に作りました。
本特集では CodeCamp Trends 編集部が2日間を取材。Gemini Enterprise による業務自動化から、ADK を使ったエージェント開発、本番運用に向けた権限・防御・評価の設計まで、4本の記事で順次お届けします。
Build with Gemini Tokyo 取材レポート一覧
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―4時間で回した7つの業務シナリオ







