Appleは2024年5月16日、iPhoneだけで対面での非接触決済に対応できる「iPhoneのタッチ決済」の提供を日本で開始した。中小規模の事業者から大型小売店まで、iPhoneを使ってシームレスかつ安全に、非接触決済のクレジットカードやデビットカード、Apple Pay、その他のデジタルウォレットに対応できるようになる。^[1]

iPhoneのタッチ決済では、事業者はiPhoneとパートナーの対応iOSアプリだけで非接触決済に対応可能だ。その他のハードウェアや決済端末は必要なく、会計時にお客様のiPhone、Apple Watch、クレジットカードなどを事業者のiPhoneにかざすだけで、NFCテクノロジーを利用して安全に支払いが完了する仕組みだ。

iPhoneのタッチ決済は決済プラットフォームやアプリ開発者のSDKで活用でき、GMOフィナンシャルゲートの「stera tap」アプリ、リクルートの「Airペイタッチ」アプリ、Squareの「Square POSレジ」アプリが日本で初めて提供を開始する。また、Adyenも今後数か月のうちに対応予定で、Apple Store店舗でも利用可能になる見通しだ。

モバイル決済の新時代到来、プライバシーとセキュリティにも配慮

iPhoneのタッチ決済により、国内のほぼすべてのiPhoneが追加のハードウェアなしに決済端末として使用できるようになった。事業者は電子決済への対応にかかる費用を削減し、お客様に簡単かつ安全でプライバシーが守られた非接触決済の体験を提供することが可能になる。

プライバシーはAppleの決済機能における設計と開発の根幹をなす基本理念だ。iPhoneのタッチ決済はSecure Elementを利用して暗号化の上処理され、Apple Payと同様に購入内容や購入者などの情報をAppleが把握することはない。

Appleは日本でiPhoneのタッチ決済を提供するために、GMOフィナンシャルゲートやリクルート、Squareなどの決済プラットフォームやアプリ開発者と密に協業している。iPhoneのタッチ決済はこれらのパートナーが事業者のビジネスの運営と成長を支援するために提供する堅牢なツール群を補完、強化するものになるだろう。

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trends編集部「K」の一言

日本の決済市場に非接触型のオンデバイス決済という選択肢が加わることで、事業者と消費者双方にとってより柔軟で利便性の高い決済体験が実現されることになる。ハードウェアの導入コストや手数料負担の軽減は中小規模の店舗にとって大きなメリットであり、キャッシュレス化のハードルが一段と下がるだろう。

一方でセキュリティとプライバシー保護の観点からも注目に値する。iPhoneのタッチ決済では取引情報の暗号化と厳格なデータ管理体制により、不正利用のリスクを最小限に抑えつつ、ユーザーのプライバシーを守ることができる。こうした仕組みはクレジットカード情報の流出や個人情報の不適切な取り扱いへの懸念が根強い中で、消費者の信頼を得るための重要な要素になるはずだ。

ただし、iPhoneのタッチ決済が本格的に普及するためには、対応する決済プラットフォームやアプリの拡充が不可欠だ。現時点では大手を中心とした限られたパートナーからのスタートとなるが、今後は中小の事業者向けサービスとの連携も期待したい。加盟店の開拓と利用者の教育にも時間がかかるだろうが、利便性とセキュリティのバランスを取った新しい決済スタイルとして、着実に浸透していくことを期待している。

iPhoneのタッチ決済はAppleが培ってきた技術力、日本の決済インフラを支えるパートナー企業のノウハウが結集した画期的なソリューションである。これを機にキャッシュレス社会の実現に向けた取り組みがさらに加速することを期待したい