DXを実現するには、デジタルを用いて現在の業務フローや組織構造を段階的に変える必要があります。この段階的なフェーズは、デジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションの3段階に分けられています。
本記事ではDXを実現するために必要な3つのフェーズと、各段階で実施すべきことについて解説します。
デジタル化が進んでいない状態を段階的に変えていくことで、最終的にDXを実現させることが可能。DX化の進め方で迷っている企業の指標にもなるので、ぜひ参考にしてみて下さい。
DX実現の過程には3段階のフェーズがある

DXを実現するまでの過程として、デジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションの3段階のフェーズがあります。
デジタイゼーション | 情報をアナログ方式からデジタル形式に変換するプロセス。紙の文書をスキャンしてデジタルファイルにすることなどが挙げられる。 |
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デジタライゼーション | ビジネスプロセスや活動、モデルをデジタル技術によって変革するプロセス。デジタルデータの使用や自動化ツールの導入などが含まれる。 |
デジタルトランスフォーメーション | デジタル技術を活用して全体的なビジネスモデルを根本的に変革するプロセス。新しいビジネスモデルの採用や文化的変化が含まれる。 |
DXを実現する過程として、デジタイゼーションからデジタルトランスフォーメーションへと進展するのが主な流れです。しかしこの流れでやることが必須というわけではなく、各企業の状況や目標に応じて柔軟に調整する必要があります。
また、上記の段階でDXを実現するためには、各企業の状況を把握し、最適なデジタルツールの選定や業務効率化を率先する人材が必要です。
このような人材を社内から発掘するにはDX研修の利用が最適です。

デジタイゼーションの基本と実施する順番
デジタイゼーションは物理的な情報をデジタルデータに変換します。たとえば紙の文書をスキャンしてPDFに変換することや写真や図面をデジタル化、手書きのメモをテキストファイルに入力するなどがあります。
これによりデータのアクセス性や検索可能性、共有の容易さが向上して効率的な情報管理が可能になります。
デジタイゼーションの実施手順は下記の通りです。
- データの選定
- 適切なツールの選定
- データの変換
- データの整理と保存
1.データの選定
デジタイゼーションを成功させるためには、まず適切なデータの選定が必要です。企業内に存在する紙の書類や手書きのメモ、アナログ資料などからデジタル化すべき重要な情報を特定します。
この段階では業務プロセスの改善や、顧客ニーズへの対応に関わる資料を優先的に選びましょう。また、社内の各部門と連携してデジタル化によって解決すべき課題や目的を明確にすることで、効果的なデータ選定が可能です。
2.適切なツールの選定
データの特性や目的に合わせた適切なツールの選定は、デジタイゼーションの成功に大きく影響します。文書のスキャンにはOCR(光学文字認識)技術を活用したスキャナーやアプリ、データの整理・管理にはクラウドストレージやデータベースシステムなど、目的に応じたツールを検討しましょう。
最近ではAI技術を活用した高度なデジタル化ツールも増えており、手書き文字の自動認識や画像からのテキスト抽出などより効率的なデジタイゼーションが可能です。
コスト削減と業務効率化のバランスを考慮しながら、自社のニーズに合ったツールを選定することが重要です。
3.データの変換
選定したツールを使用して、アナログデータをデジタルデータに変換するプロセスです。この段階ではデータの品質と整合性を確保することが重要です。スキャンした文書はPDFやテキストファイルに、図面や写真は適切な画像フォーマットに変換します。
大量のデータを扱う場合は、RPAなどの自動化技術を活用することで作業時間の短縮とヒューマンエラーを軽減できます。また、経済産業省のガイドラインなどを参考にしながら、法的要件を満たすデータ変換を行うことも重要です。
変換されたデジタルデータは、後の分析や活用を見据えた形式で保存することでビジネス価値の創出につながります。
4.データの整理と保存
変換したデジタルデータを効率的に活用するためには、適切な整理と保存が不可欠です。統一されたファイル命名規則やフォルダ構造を設計し、必要な時にすぐに検索・アクセスできる環境を構築します。
また、クラウドやオンラインストレージを活用することで、場所や時間を問わずデータにアクセスできるようになります。結果としてリモートワークなどの働き方改革にも対応することが可能です。
データのバックアップ体制を確立し、セキュリティ対策を講じることで重要な情報資産を保護しながら有効活用する基盤が整います。
デジタイゼーションは単なるデータ変換ではなく、企業全体のDX推進における重要なステップです。これらの手順を着実に実行することで、次のステージであるデジタライゼーション(業務プロセスのデジタル化)やデジタルトランスフォーメーション(ビジネスモデルの変革)への土台を築くことにつながります。
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デジタライゼーションの基本と実施する順番
デジタライゼーションは既存のビジネスプロセスをデジタル技術で再設計することを指します。
たとえば紙ベースの注文処理システムをオンラインシステムに置き換えたり、顧客データをクラウドベースのCRM(顧客関係管理)ソフトウェアで管理するなどです。
この段階ではデジタルツールの導入により作業の自動化と効率化が図られ、データ駆動型の意思決定が可能になります。
デジタライゼーションの実施手順は下記の通りです。
- ビジネスプロセスの分析
- デジタル技術の選定
- 実装と統合
- 継続的な評価と改善
1.ビジネスプロセスの分析
デジタライゼーションの第一ステップは、現状の業務プロセスを詳細に分析することです。各部門の業務フローを可視化し、非効率な作業や課題を特定します。この段階では現場の担当者と連携しながら、実際の業務状況を正確に把握することが重要です。
分析の過程ではデータの流れやボトルネックを明確にし、どの部分をデジタル化することで最大の効果が得られるかを検討します。業務プロセスの分析によって、レガシーシステムの問題点や人材のスキル不足などの課題も浮き彫りになり、効率化の機会を特定できます。
経済産業省のDXレポートなども参考にしながら、自社の現状を客観的に評価することが成功への第一歩です。
2.デジタル技術の選定
分析結果に基づいて業務改善に最適なデジタル技術やツールを選定します。具体的にはクラウドサービスやAI、IoT、RPAなど目的に応じた技術を検討し、ビジネスニーズと整合性のある技術やツールを選びます。
この段階では導入コストだけでなく、運用コストや将来的な拡張性も考慮することが重要です。
技術選定においては単に最新テクノロジーを導入するのではなく、自社の組織文化や従業員のリテラシーレベルに合わせた実現可能な技術を選ぶことがポイントです。複数のツールを比較検討し、効果的かつ効率的なシステム構築を目指しましょう。
また、データセキュリティや法的要件を満たす技術であることも確認する必要があります。
3.実装と統合
選定した技術やツールを実際の業務プロセスに実装し、既存のシステムと統合します。この段階では計画的なプロジェクト管理が不可欠であり、明確なタイムラインと実行計画を策定します。
従業員への適切なトレーニングを提供し、新しいデジタルプロセスへの移行をスムーズに進めることが重要です。
実装の際には段階的なアプローチを取ることで、リスクを最小限に抑えつつ成果を確認しながら進められます。社内の各部署やチームとの協力体制を確立し、変化に対する抵抗を軽減するための取り組みも必要です。
また、データの移行やシステム間の連携を確実に行い、業務の継続性を確保することが成功のポイントです。こうした実装プロセスを通じて、企業全体のデジタル基盤を構築していきます。
4.継続的な評価と改善
デジタライゼーションは一度の実装で終わるものではなく、継続的な評価と改善が必要です。導入したデジタルプロセスの効果を測定するためのKPIを設定し、定期的にその進捗状況を評価します。
収集したデータを分析し、さらなる最適化の機会を特定することで競争優位性を維持・強化できます。
評価の結果に基づいて、必要に応じてプロセスの調整や新たなツールの導入を検討します。市場環境や顧客ニーズの変化に対応するため、柔軟かつ迅速な改善サイクルを確立することが重要です。
また、成功事例を社内で共有して他の部門や業務プロセスへの展開を促進することで、組織全体のデジタル変革を加速させることが可能です。このような継続的な改善活動を通じて、真の意味でのビジネスモデルの変革、すなわちデジタルトランスフォーメーションへと発展させていくのです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の基本と実施する順番
デジタルトランスフォーメーション(DX)は組織全体のビジネスモデルや文化など、デジタル技術を使って根本的に変革することを指します。DXは技術を導入するだけでなく、新しいビジネスモデルや顧客体験の創造、イノベーションの推進を含みます。
たとえばデジタルプラットフォームを活用したサービスの提供やデータ分析を用いた顧客ニーズの理解などがあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実施手順は下記の通りです。
- ビジョンと戦略の策定
- 技術とリソースの確保
- 組織文化の変革
- 新しいビジネスモデルの実装
- 成果の測定と最適化
1.ビジョンと戦略の策定
DX推進の第一歩は明確なビジョンと戦略の策定です。経営層が主導してデジタル変革によって実現したい企業の将来像を描き、その達成に向けた具体的な戦略を立てます。
この段階では現状の課題を把握し、デジタル技術を活用してどのような価値を創出するかを明確にすることが重要です。
戦略策定においては顧客ニーズの変化や業界の動向、競合他社の状況などを分析し、自社の強みを活かしたDX戦略を構築します。経済産業省が提唱するDXフレームワークなども参考にしながら全社的な変革の方向性を定め、明確なロードマップを作成することで組織全体の理解と協力を得やすくなります。
ビジョンと戦略は単なる技術導入ではなく、ビジネスモデルの変革や新たな収益源の創出を見据えることが大切です。
2.技術とリソースの確保
DX実現に必要な技術基盤やリソースを確保します。クラウドやAI、IoT、ビッグデータ分析などの先進技術を活用するための環境整備と、それらを運用できる人材の確保が重要です。レガシーシステムの刷新や新たなデジタルプラットフォームの構築には、適切な投資と計画が必要になります。
技術導入に際しては単に最新テクノロジーを取り入れるのではなく、自社のビジネス目標達成に最適なソリューションを選定することがポイントです。また、DXを推進するための人材育成や外部専門家との連携も重要な要素となります。
デジタルリテラシーの向上に向けた社内研修プログラムの実施や、必要に応じて積極的な人材採用を行うことで変革を支える体制を構築します。限られたリソースを効果的に配分し、段階的に技術基盤を整備していくアプローチも検討しましょう。
3.組織文化の変革
DXの成功にはテクノロジーだけでなく、組織文化の変革が不可欠です。従来の慣習や価値観にとらわれず、イノベーションを促進する文化の醸成が必要です。
トップダウンとボトムアップの両面からの働きかけにより、全社的な変革マインドを浸透させることが重要です。
組織文化の変革には、経営層の強いコミットメントとリーダーシップが求められます。デジタル時代に適した意思決定プロセスの構築や失敗を恐れずチャレンジする風土づくり、部門間の壁を取り払った協働体制の確立などが重要です。
働き方改革とも連動させながら、柔軟で俊敏な組織への転換を図りましょう。また、社員一人ひとりがDXの必要性を理解し、主体的に参画できるよう継続的なコミュニケーションと小さな成功体験の共有が効果的です。
変革に対する抵抗を軽減し、全社一丸となってDXを推進する環境づくりが求められます。
4.新しいビジネスモデルの実装
デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルや顧客体験を設計・実装します。データ駆動型の意思決定や顧客ニーズに応じたサービス提供など、デジタルならではの価値創出を目指します。既存事業のデジタル化だけでなく、全く新しい事業領域への挑戦も検討します。
新しいビジネスモデルの実装ではアジャイル開発の手法を取り入れ、小規模なプロジェクトから始めて迅速に結果を検証・改善を繰り返すアプローチが有効です。顧客からのフィードバックをリアルタイムで取り入れながら、製品やサービスを進化させていきます。
また、デジタルプラットフォームを活用したエコシステムの構築や、オープンイノベーションによる外部リソースの活用なども競争力強化の鍵となります。従来のビジネスモデルの枠を超えた発想で、業界の常識を覆すような革新的な取り組みにチャレンジすることが重要です。
5. 成果の測定と最適化
DXの取り組みによる成果を定量的・定性的に測定し、継続的な改善につなげます。KPIを設定して効果を可視化し、投資対効果を評価することで経営判断の精度を高めます。
成果測定においては売上や利益などの財務指標だけでなく、顧客満足度や従業員のエンゲージメント、業務効率化の度合いなど多角的な視点で評価することが大切です。
データ分析を活用して各施策の効果を詳細に把握し、PDCAサイクルを高速で回すことで継続的な最適化を図ります。成功事例を社内外に積極的に発信し、変革の機運を高めることも効果的です。
DXは一度の取り組みで完結するものではなく、環境変化に合わせて常に進化させていくものなので長期的な視点での推進が求められます。日本企業の多くがDX推進に課題を抱える中、着実に成果を積み上げながら、真の変革を実現していきましょう。
DXにおける3段階のフェーズを推進する上での共通課題と解決策
DXにおける3段階のフェーズを推進する上での共通課題は下記の通りです。
- 外部パートナーとの協業
- 選定技術の策定
- 組織文化の変革とデジタルスキル向上
- DXプロジェクトの効果的な企画と管理戦略
各課題とその解決方法について詳しく解説します。
外部パートナーとの協業
外部パートナーと効果的に協業する場合、異なる文化やプロセスを持つ組織間での協力が必要です。これらがうまくいかないと、DXがスムーズに進まないことがあります。
外部パートナーとの協業において大切なことは、共通の目標と期待の明確化、定期的なコミュニケーションによる関係構築です。これにより異なる組織間での一貫性と協力を促進し、より効率的で成果に結びつく協力関係を築くことができます。
また、外部パートナーとの協業以外の選択肢として、自社でDX人材を育成する方法もあります。自社でDX人材を育成することで、自社文化の理解やプロセスを配慮した状態でのDXを実現できます。
自社でDX人材を育成する方法として、企業が提供している研修サービスの利用がおすすめです。

選定技術の策定
最適な技術の選定には現在のトレンドに偏りすぎる傾向と、長期的な視点の欠如が問題になることがあります。これは組織が短期的な解決策に焦点を当て、将来の成長や変化に対応できる柔軟性を損なう可能性があります。
技術選定には組織の特定のニーズと、将来の拡張性を考慮する必要があります。このアプローチにより組織は長期的な目標に対応しながら、現在の要求を満たすことが可能です。
組織文化の変革とデジタルスキル向上
組織文化の変革においては従来の働き方や、プロセスへのこだわりが大きな障壁となる可能性があります。また、職員が必要なデジタルスキルを持ち合わせていないことも一般的な問題です。
上記の課題に対処するためには経営層からの明確な方針とサポートが不可欠です。これにより組織内の意識改革を促し、変革への抵抗感を減少させられます。
また、職員のスキルアップを促すための継続的な教育も解決策のひとつ。デジタル技術に関する知識とスキルのギャップを埋め、職員が新しいツールやプロセスを効果的に採用できるようになります。
DXプロジェクトの効果的な企画と管理戦略
DXプロジェクトの企画と管理においては、明確な目標設定の欠如やプロジェクト管理の不備が挙げられます。これらの問題はプロジェクトの成果に直接影響を及ぼし、期待される成果の達成を困難にする可能性があります。
効果的なプロジェクト管理には、SMART原則(具体的、計測可能、達成可能、関連性、時間的に限定された)に基づく明確な目標設定が必要です。これによりプロジェクトチームは具体的な指標と期限を持って、進捗を追跡することが可能です。
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