イベント概要
2025年11月13日、Ahrefs Japan Meetup Vol.2において、世界へボカン株式会社CEOの徳田祐希氏が、海外マーケティング歴18年の実績から得た実践的ノウハウを共有しました。
「日本初世界、海外SEOの勝ち方」というテーマで、海外SEOの具体的な課題と、それをAhrefsで解決する方法、そして何より「売上に寄与する」ための考え方について解説されました。
目次
- 徳田氏の経歴と世界へボカンの体制
- 海外SEOの悩みを解決する
- 【課題1】英語キーワードの発見
- 「英語のキーワードどうやって見つければいいのか?」
- 【課題2】コンテンツ作成
- 【課題3】多言語展開の注意点
- 重要:サブドメイン・サブディレクトリで日本語サイトとは分離が必須
- ビジネス上の注意点
- 【課題4】翻訳品質の管理
- 品質管理の考え方
- 【課題5】売上に寄与しているかのチェック
- Shopify Sidekickの活用
- 実際のデータ例
- 売上に寄与させるための施策
- 【内部チューニング】PNP(優先ランキングページ)
- Google広告でのテスト
- 【最重要】現地ニーズの徹底調査
- ケニアの中古車販売の事例
- ケニアの人の具体的なニーズ
- ホンダフィットの記事例
- 【デニムブランドの事例】買う理由・買わない理由を調査
- 課題
- 調査方法
- 解決策
- インバウンド戦略:海外のお客様をグラデーションで見る
- 4つの顧客層
- 【Google Lens活用】月間200億回検索を店舗売上に
- パネルディスカッションでの発言
- AI検索時代のSEO担当者のあり方
スピーカー
代表取締役CEO
徳田氏の経歴と世界へボカンの体制
徳田氏の会社にはアメリカ人、オーストラリア人、中国人、マレーシア人、スペイン人、フランス人、台湾人など多国籍メンバーが在籍し、海外SEOに特化した支援を行っています。
特筆すべきは、アフリカ向け中古車販売を行うクライアントへの支援体制です。徳田氏は本イベントの開催と同週にタンザニアとザンビアへ出張予定とのことですが、そのきっかけはクライアントからの「お店に来てください」という言葉でした。てっきり日本のオフィスのことだと思っていたところ、実はアフリカ現地の店舗への招待だったのです。このエピソードからも、同社の支援がいかに現場主義でグローバルなものであるかが伺えます。
海外SEOの悩みを解決する
徳田氏は、上司やクライアントから「海外SEOできますか?」と聞かれた際に「えっ…」と驚き、困ってしまう方のために自信を持って答えられるようになることを目的に、5つの課題と解決策を紹介しました。
【課題1】英語キーワードの発見
「英語のキーワードどうやって見つければいいのか?」
この課題に対し、徳田氏はAhrefsが非常に助かるツールだと紹介しました。 Ahrefsを使えば以下を可視化することができます。
- 自社の流入キーワードがわかる(サーチコンソールでもわかる)
- 競合の流入キーワードも見つけることができる
- どんなキーワードでユーザーが検索しているか
- どんなページが上位表示されているか
- どんなコンテンツを書けばいいか
また、トランスレート機能を使うと、日本語キーワードを英語にしてくれます。
具体例
「デニムジャケットコーデ」→「How to style denim jacket」のようなグループを提案してくれるので、自分でキーワードを見つけなくても、日本語のクエリや競合の検索を見てキーワードを発見できます。

また、自社のECサイトと海外の競合を比べた時に、自社になくて競合にあるキーワードを見つけることができるので、優先的に対策すべきキーワードを見極められます。
【課題2】コンテンツ作成
「海外SEOやってほしいと上司から言われました。コンテンツどうやって書こう?」 これもAhrefsで解決します。

AI Content Helperを使って、ターゲットキーワードや情報を入力してコンテンツを生成できます。ただし、徳田氏は重要な注意点を挙げました。
「コンテンツを書いた後にネイティブのメンバーにチェックしてもらって、リライトしたり、最終的にお客様のブランドのトーンに調整して公開している」
AI生成コンテンツをそのまま使うのではなく、一部の情報を参考にし、メインのコンテンツは自分たちで書くという使い分けをしています。
【課題3】多言語展開の注意点
重要:サブドメイン・サブディレクトリで日本語サイトとは分離が必須
徳田氏は、多言語展開における重大な落とし穴を指摘しました。
よくある失敗
日本語のサイトを同じURLで英語に切り替えてインデックスさせようとする。こうした基本的なことができていないケースが多いとのこと。
多言語自動生成の危険性
Shopifyなどの多言語ツールを使うと、日本語から英語、ロシア語、中国語など複数言語で自動生成できますが、これは非常に危険だと警告しました。
実際に起きる問題
- 日本語と英語はインデックスされているが、スペイン語、フランス語、中国語はインデックスされていない
- インデックスされないコンテンツの割合が高くなる
- 低品質コンテンツの割合が高くなるリスク
- ドメイン全体の評価が下がる可能性
対策

- サーチコンソールで各言語がきちんとインデックスされているかチェック
- 実際にユーザーに使われる言語のページを生成する
- 無作為に複数の言語を展開しない
ビジネス上の注意点
「その言語でページを作ると、その言語で問い合わせが来る」
ロシア語や中国語など、もし社内のリソースとして英語以外の話者がいなかったら、無理にその言語を目指す必要はありません。お客様と実際ビジネスを行える言語でページを生成すべきです。
【課題4】翻訳品質の管理

徳田氏は翻訳品質を6段階のレベルで管理していると説明しました。 ChatGPTやDeepLなどで記事は作れるが、完全にAIに任せられるかというと、そうではありません。
品質管理の考え方
- お客様のサイトの重要度に応じてレベルを分ける
- ABOUT USやトップページなど、お客様が多く見るページは、生成AIではなくネイティブチェックやローカライゼーションをしっかり行う
- 翻訳のレベルを使い分けてコストを最適化
社内にはコピーライティング専門のメンバー(ベリンダ、フィナンなど)がいて、生成されたものをチェックし、トーンやブランドとずれていないか、意図した通りにコンテンツが作れているかを確認しています。
【課題5】売上に寄与しているかのチェック

ここからが一番大事な話です。 生成AIを使って記事を書いたり、多言語サイトを作っても、売上にならないと意味がありません。
Shopify Sidekickの活用
Shopifyを使っている方向けのTipsとして、Shopify Sidekickを紹介しました。
マスクマンのマークがあり、チャット画面に以下のようなプロンプトを入力すると、
- 「直近1年間のブログページの自然検索のトラフィックとコンバージョンレート教えて」
- 「直近1年のブログページ以外のページの自然検索トラフィックとCVR教えて」
サイト内のデータを見に行ってデータを抽出してくれます。
実際のデータ例
あるサイトが以下のような状態でした。
- トップページ、コレクションページ、商品詳細: 数千セッション、110件のコンバージョン、CVR 0.6%
- ブログページ: 5000セッション超、コンバージョン数10件、CVR 0.2%
つまり、一生懸命生成AIで記事を書いてコンテンツを作っているけど、見られてはいるが全然コンバージョンに寄与していない。
重要なポイント
SEOで上位表示されたり、AIやLLMで取り上げられた後に、ちゃんと売上に寄与しているかをチェックする必要があります。 これはShopify Sidekickを使った確認方法ですが、GA4や様々な自社のECツールを使って、検索流入が取れていることと、コンバージョン寄与率は別の話なので、ぜひチェックしてほしいとのことです。
特に英語や多言語になった瞬間、こうした情報を見なくなってしまうので、ぜひチェックしてほしいと強調しました。
売上に寄与させるための施策
コンバージョンに寄与させるための方法として、以下の施策が紹介されました。
【内部チューニング】PNP(優先ランキングページ)

- ブログページで取れているクエリを、コレクションページ(商品一覧)で上位表示させるよう内部リンクを最適化
- タイトルタグの調整
- ブログページ内にショップボタンや内部リンクを入れて購入率向上
Google広告でのテスト

ブログページで取れているクエリを、あえてコレクションページやプロダクトページで広告配信してテストし、実際にコンバージョンにつながるかを検証する。
「SEOで上位表示されたり、LLMに取り上げられるだけじゃなくて、実際売上に寄与するためにどうしたらいいかをチェックしていただけると良い」
【最重要】現地ニーズの徹底調査
徳田氏が最も強調したのは、「売上に寄与させるために、現地でどういったニーズがあるのかをひたすら調査する」ことです。
ケニアの中古車販売の事例

アフリカ向け中古車を販売しているクライアントの支援で、実際にアフリカでどういったニーズがあるかを調査しています。
- 国ごとにデータを見る
- 場合によっては現地のライターにインタビュー
- 「アフリカの路面ってどうなの?」「どういう車が走っている?」など細かな情報を聞く
- 他社にない情報、お客様の知りたい情報を突き詰める
AIを活用する際の注意点
「日本語のコンテンツを生成AIでパッと翻訳して、英語でそれっぽい記事は書けるんです。ただ、それって全然外国人にとって刺さらなくて、コンバージョンにつながらなかったり、キーワードとして上位表示はされてるけど、あんまり意味がない記事が大量に量産されることがありえる」
だからこそ、自分たちのお客さんってどんな人で、どういう情報を知りたいのかをしっかり調べることが重要です。
ケニアの人の具体的なニーズ

ケニアの人は車に乗っていて、以下のようなニーズがあります。
- ガソリン代を節約したい
- 予算の手頃な車を探している
- 狭い道でも運転しやすい車が欲しい
- 長持ちする、故障しにくい車が欲しい
これらの細かなニーズにちゃんと応えるために、以下のような情報を極めて伝えることで、実際に流入が来た後にちゃんと読まれ、ちゃんとコンバージョンに寄与するサイトができます。
- 「燃費がいい車、これですよ」
- 「長持ちする車、これですよ」
といった情報を極めて伝えることで、実際に流入が来た後にちゃんと読まれ、ちゃんとコンバージョンに寄与するサイトができます。
ホンダフィットの記事例

「一般的な車の故障費用の平均は10万から30万程度と言われています。高価な支出になってしまいますね。そのため、リーズナブルかつ壊れにくい車を選ぶことが大切です。ガソリン価格も高騰が続いています。ホンダフィットは優れた燃費でガソリン代を大幅に節約できます」
このようにちゃんと英語で伝えると、「めっちゃホンダフィットいいじゃん」と思ってもらえます。
さらに、ホンダフィットの選び方やカテゴリ分けについても、検索しているユーザーに対して詳しい情報を提供することで、「この人たち信用できるな」と思ってもらえて選ばれます。
「一国一国、各国のユーザーさんが何を知りたいのかを調査して記事を書く。取れる検索キーワードは限られているので、そのキーワードでちゃんと優れたユーザー体験を提供できるように、一記事ずつ作り込むことが重要」
【デニムブランドの事例】買う理由・買わない理由を調査

もう一つの重要な事例として、岡山のデニムブランドの話が紹介されました。
課題
Instagramのフォロワーが1万人くらいいるのに、全然売上が立っていませんでした。
調査方法
- 買ってくれている人に「なんでデニム買ってくれてるの?」と聞いた
- 買ってくれない人に「何で買ってくれないの?」と聞いた
わかったこと
- 買っている人: 「このブランドのデニムは経年変化(色落ち)がめちゃくちゃいい。なので買っている」
- 買っていない人: 「色落ちがいいのは知っているけど、どんなデニムが自分に適しているのかわからない」
買ってくれている理由と買ってくれていない理由がわかりました。 もし皆さんが海外マーケティングをやっている時に、お客様にコンタクトすることができるのであれば、買ってくれている理由と買ってくれていない理由を把握していただけると良いとアドバイスしました。
解決策
経年変化が特徴だとわかったので以下3点の解決策を打ち出しました。
- 新品のデニムと3年後履き込んだデニムの経年変化の違いを可視化
・デニムごとに新品の状態だけでなく、3年間履き込んだ色落ち具合を表示
・「このデニム買ったらこういう色落ちするんだ」とわかる - 色落ちの特徴を詳しく説明
・「ここと、ここと、ここに色落ちの経年変化の特徴が現れる」と説明 - コーディネート例も提示
・「このデニムを履いている人はこんな風なコーデしてる」
「買いたい気持ちを作るために、お客様の検討を進めるような情報を一歩一歩作っていくことで、デニムのパフォーマンスを向上させました」
インバウンド戦略:海外のお客様をグラデーションで見る

徳田氏はインバウンドについても言及しました。
「海外のお客様って一言で言っても、本当にいろんなお客様がいる」
- 越境ECで海外にいらっしゃるお客様
- 実は日本に住んでいるお客様の方が自分たちの商品を買ってもらう可能性が高い
4つの顧客層
- 旅前(来日前の海外在住者)
- 旅中(訪日中の観光客)
- 旅後(帰国後)
- 日本在住の外国人
「自分たちの商材はどこの層に対してリーチすることで売上を伸ばせるか、グラデーションで見ることが大事」
- 食品やテイストものなら、インバウンドのお客様に手に取って試してもらいたい
- 大胆なもので日本の外でも売れるなら、越境もいい
どの環境が自分のお客様にとって手に取りやすい環境なのかを見ていただけると良いとのことです。
【Google Lens活用】月間200億回検索を店舗売上に
徳田氏は新しい視点としてGoogle Lensの活用を提案しました。
「Google Lensは月間200億回使われている」

ユーザーがお店に足を運んだ時に、Google Lensで日本語のパッケージを撮影して「何なんだろう?」と検索することがあります。 この時に自分たちの商材の情報を英語で用意しておけば以下3点の恩恵を受けられる可能性があります。
- お客様は何なのかを見つけることができる
- 自分たちの商品を理解して買ってくれるかもしれない
- 店舗に来店した時の購入率が上がるかもしれない
「SEOをすることによって、海外のお客様に買ってもらうだけじゃなくて、実際に店舗に来てくださったお客様が買ってくださる機会になる」
パネルディスカッションでの発言
AI検索時代のSEO担当者のあり方
データだけでなく、実際の顧客行動に基づいた解像度の向上が不可欠であると強調しました。
- 顧客解像度の深化:検索キーワードベースだけでなく、実際の顧客(例えば3人程度)にヒアリングし、実際に使っている媒体を確認しないと施策を誤る。
- 行動ベースのジャーニー理解:例えばアパレルなら「顧客のクローゼットの中身」まで想像できるレベルでブランドを理解し、ジャーニーを描くことではじめて施策が刺さるようになる。泥臭い情報収集が重要。
→ 詳細記事:【イベントレポート】Ahrefs Japan Meetup Vol.2で語られたAI検索時代の最新SEO戦略と実践ノウハウ パネルディスカッションセクションにて
世界へボカン株式会社について
「世界へボカン」は、「日本の魅力を世界へ届ける」ことをミッションとする、越境EC・海外WEBマーケティング支援の専門会社です。英語圏市場を中心に、日本企業の海外進出を包括的にサポートしており、海外市場調査、ウェブサイト制作、英語SEO、広告運用、コンテンツマーケティングなどのサービスを提供しています。
採用情報
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イベントレポート
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