イベント概要
2025年11月13日、Ahrefs Japan Meetup Vol.2において、株式会社Hakuhodo DY ONE SXOソリューション局 局長の登章良氏が、10年以上のクライアント伴走経験から得た知見を共有しました。
競合相対で劣位な状況から業界最上位を実現した後、「その後何をすべきか」という問いに対する答えと、継続的な成功のための戦略が語られました。
※SEO業界最上位…検索意図/サイトタイプを考慮した対策可能なクエリ群(Know・Do・Go)における業界最上位のSEOスコア(ファインダビリティ)と定義
スピーカー
SXOソリューション局 局長 / ONE-AIO Lab 所長
登氏の経歴と業界横断監視データベース
登氏は、2010年から事業会社でSEOエンジニアとして、SEOを考慮したWEBサイトのエンジニアリングに従事。Webデザインやコーディング、プログラミング等の経験を得て、2014年に当時のアイレップ(現Hakuhodo DY ONE)に入社し、以降はSEOコンサルタントとして活動しています。
現在はコンサルティング領域に加え、R&D(研究開発)領域も担当しており、国内・海外におけるSEOのトレンド調査、情報発信、サービス開発などを推進しています。
特筆すべきは、Hakuhodo DY ONEが保有する「業界横断監視」というキーワードのデータベースの存在です。同社では国内・海外SEO市場における様々な業界の検索結果上に出現する全てのプレイヤーの動向をモニタリングする環境を構築しており、10年以上の継続的なモニタリングデータが同社のR&Dを支える基盤となっています。
10年以上にわたる長期の伴走実績
登氏は、5~10年以上にわたる長期的な伴走型コンサルティングの実績が豊富で、長いものでは10年以上の支援実績も複数あり、これまで毎月膝を突き合わせて検討を重ねてきたと語りました。
当初は競合相対で劣位な状況だったクライアント企業が、業界最上位を実現するケースが増えてきている状況で、それに伴いクライアント企業から求められる要件も変化してきました。
そして今、コンサルタントとして相談を多くいただく内容が「Google SEO業界で最上位を獲得した後、その後何をすればいいのか?」という問いです。
【近年のSEO評価軸】SEOからSXOへ
登氏はまず、業界最上位を実現させるまでの道のりについておさらいしました。 近年のSEO評価軸は変化しています。
従来のSEO評価(内部評価・外部評価)に加え、ユーザー行動のシグナルが大きく影響を及ぼしているという認識です。
それ故に昨今のSEOにおいては、「ユーザーファースト」の視点をもったSXO(検索体験最適化)が大前提のもと、「内部評価」「外部評価」「ユーザー行動」の3つの評価を高めていくアプローチが推奨されます。
業界最上位実現後の3つの戦略
登氏は業界ナンバーワン実現後の戦略について、答えがない領域としながらも、大きく3つの取り組みが重要だと見解を述べました。
- 攻め:SEOとコンバージョンを狙うための攻め
- 守り:コンバージョンのための守り
- 組織体制:攻め・守りにも関わる組織基盤の構築
攻めの取り組み
① 検索市場の白地開拓(Google)
Google SEOにおいてナンバーワンや競合相対で最上位だったとしても、それが対象業界のマーケット全面をカバーできているとは限りません。 検索市場の中で白地(未開拓領域)がないかを調査していく必要があります。
注意点として、競合相対で業界最上位があることと、対象とする市場が網羅できていることは異なるため、Ahrefsを用いて白地調査を実施する場合は、競合以外にもサンプルの競合を増やしつつ、また、ノイズキーワードへの配慮も踏まえた上で、極力市場全体をカバーできるように調査していく必要があると補足しました。
登氏は市場調査に際して、通常で数百万、多いもので数千万、億単位のキーワードを調査することもあり、市場の調査は高負荷な業務である一方、Ahrefsを用いることで手軽に膨大な多くのデータを抽出できる点についても言及しており、Ahrefsの利便性についても語りました。
② 検索市場の拡張(その他検索プラットフォーム)
少しマクロに視点を上げて検索市場を見てみると、ユーザーの獲得Googleチャネルは検索に限った話ではありません。
登氏は約2,000件のクエリの検索数を複数の検索プラットフォームごとに調査したサンプルデータを紹介し、その他の検索プラットフォームにおいても看過できない一定の検索市場が確認されている点について述べました。
複数の検索プラットフォームのクエリ別の検索数を調査出来るツール自体が少ない点から、データの信憑性の精査は必要であるとしながらもGoogleに匹敵する規模のマーケットが、その他の検索プラットフォームに眠っている可能性があると示唆しました。
昨今のAI検索についても、新しい市場として捉えることが可能です。
守りの取り組み
③業界モニタリング(新規台頭プレイヤーの早期発見)
守りの取り組みとして、業界の新規台頭プレイヤーを早期に発見するモニタリングが重要。
④ HTML/WEBページの定期監視(競合施策の把握)
競合の施策を把握するため、HTML/WEBページの定期的な監視が推奨されました。
組織体制の構築
⑤SEOスキルの継承・ナレッジの蓄積
登氏が特に重要視したのが、組織体制の構築です。
組織における人材は特定の企業に永続的に在籍し続けるわけではないため、企業のプロダクトを守り抜くためにはスキルの定着化や体制基盤の構築が非常に重要です。
担当者が変更となる場合、引き継ぎは一定ある一方で、新しいマーケ担当者が必ずしもSEOに詳しいわけではありません。以下のようなケースも出てきます。
- 広告が詳しい
- UXが詳しい
- SNSが詳しい
- ※つまり、SEOが詳しくない
登氏が懸念しているのは、社内におけるSEOの知見が形骸化するリスクについてです。
支援会社がいない場合、時期によってはSEOの知見を持つ担当者がいない状態に陥ると中長期目線でSEOのマネジメントが希薄化していくリスクがあります。
【実例】業界最上位プレイヤーの順位下落事例
続いて、登氏は実例を紹介しました。
10年前に業界ナンバーワンで、SEOのアップデートを最優先していたプレイヤーが、突如トラフィックが減少し、後退してしまったケースです。
実際の状況を見ると、テクニカルSEOの視点があれば実施しないような取り組みや施策が確認されました。
外部からではこれが意図的だったかどうかは判断がつきませんが、これまで積み上げてきた資産が崩壊してしまうようなケースもあるため、組織におけるスキルの継承や体制構築が重要だと強調しました。
パネルディスカッションでの発言
AI検索時代のSEO担当者のあり方
AI検索時代のSEO担当者のあり方 検索対応が多様化する中で、担当者に求められるスキルも拡張していく必要があると述べました。
- 戦略策定機能の拡大:Google SEOだけでなく、各種検索プラットフォームを踏まえた戦略策定能力を持つ必要がある。今話題のAI検索においても同様。
- PMスキルの重要性:SEOを推進する上で、様々な部署との連携が必須となるため、プロジェクトが複雑化することも想定される。可能であれば、プロジェクトマネジメント(PM)のスキルセットがあると望ましい。
- AIとの共生:業務プロセス全体を俯瞰し、AIを活用して業務を効率化していくスキルが求められる。
AI検索時代のKPI設定 ユーザーの検索プロセスが対話的になることを考慮し、同社では以下のKPIを設定・計測していると紹介しました。
- 認知フェーズ:「指名検索」関連のキーワード ┗理由: AI検索にはハルシネーション(誤情報)のリスクがあるため、ユーザーは最終的に従来の検索エンジンで再検索(裏取り)をする行動が想定されるため。
- 検索フェーズ:従来の「順位」等のSEOスコアや順位に加え、「言及数(シェアオブボイス)」、「回答の正誤情報スコア」、「ポジネガ(センチメント)スコア」を重視。
- 訪問フェーズ:トラフィックだけでなく、「CV」や「CVR」などの獲得指標も
┗理由: ゼロクリックの影響でトラフィック単体は下がる可能性があるが、AI検索経由のユーザーはコンバージョン率(CVR)が高い傾向にあるため。
KnowクエリとDoクエリへの影響(会場質問Q1) 「AI Overviews の表示に関して、Knowクエリの影響が大きい認識。Doクエリ(何かをしたい、買いたい等の検索)への影響は少ないのではないか?」という質問に対し、以下のように回答しました。
- AI Overviewsの調査見解:当社での定期調査によると、全体として表示率の高まりは一定確認しているものの、認識されている通り、相対的にKnowクエリの影響が大きい。
- 今後、AI Overviews の表示率は多少伸びるかもしれないが、売上に直結するDoクエリに関しては、急激にシェアを奪われるようなことはないのではないかと予測している。
どの事業フェーズで対策を始めるべきか(会場質問Q2) 現状のROIが合わなくとも、AI検索の利用ユーザーが増加している事実を考慮したシミュレーションを設計し、流入チャネルのポートフォリオとして見過ごせないラインに至る時期を見定めつつ、逆算しながらマーケティングポートフォリオの一部として予算化することが望ましいと回答しました。
- 将来予測:海外の研究では検索ボリュームが2025〜26年に約25%縮小する予測もあるため、将来的なシェア変動を試算に入れて意思決定。[1]
- 学習データのタイムラグ:AI(例:GPT-5)は過去(例:2024年9月末)までのデータを学習している。[2]
ブラウジング機能が備わっているものの、極力推奨されるためには「学習」の段階でデータに含まれている状態が望ましく、シェアが伸びてから対策を始めても手遅れになる(回答に出てこない)リスクは一定存在する。
株式会社Hakuhodo DY ONEについて
URL
https://www.hakuhodody-one.co.jp/
Hakuhodo DY ONEは戦略立案力やクリエイティビティ、高度な運用力と技術開発力を強みに、企業の事業成長を包括的に支援するデジタルマーケティング会社です。博報堂DYグループの「デジタルコア」として、グループ内のナレッジやリソースを集約し、国内外のクライアントに最適な統合型マーケティングサービスを提供しています。
採用情報
本イベントで博報堂DYグループのデジタルコアとして、業界随一のデジタルマーケティング事業会社の弊社へ興味をお持ちいただけた方へ。
株式会社Hakuhodo DY ONEでは、意欲のある方のご応募を歓迎しています。
参考文献
- ^ Gartner. 「Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents」. https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-02-19-gartner-predicts-search-engine-volume-will-drop-25-percent-by-2026-due-to-ai-chatbots-and-other-virtual-agents, (参照 2025-12-10).
- ^ OpenAI Platform. 「gpt-5 Model | OpenAI API」. https://platform.openai.com/docs/models/gpt-5, (参照 2025-12-10).
イベントレポート
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