2025年11月13日、10時30分からTHE CORE KITCHEN/SPACEで開催されたAhrefs Japan Meetup Vol.2では、Ahrefsプロダクトマーケターのコンスタンス・タン(Constance Tan)氏によるハンズオンワークショップが開催されました。
AI検索時代におけるブランドの可視性(ビジビリティ)を分析する新ツール『ブランドレーダー』と、自然言語でAPIを操作する『MCP Server』について、実際の画面を見せながら詳しく解説されました。
目次
- AI検索分析の課題を解決する『ブランドレーダー』
- データ収集の仕組み
- Brand Radarの主要機能
- Citations(引用)
- エンティティ(Entity)の編集
- フィルタとトピック分析
- 【ニッチ分析】ブランド名以外での活用
- 【検索需要】Ahrefs独自の指標
- 検索需要とは
- なぜこの指標が重要か
- 自然言語でAPIを操作する『MCP Server』
- MCP Serverとは
- MCP Serverの実践活用例
- 【活用例1】競合リサーチの自動化
- 【活用例2】従来検索とAI検索の比較
- 【活用例3】オーガニック競合の特定
- 15の活用例ガイド
- Claudeとの連携によるデータ分析
- ブランドレーダデータのエクスポート分析
- プロンプトのコツ
- Q&Aハイライト:AI時代の戦略的思考
- Constance Tan氏によるワークショップから得られる重要な知見
スピーカー
プロダクトマーケター
AI検索分析の課題を解決する『ブランドレーダー』
ブランドレーダ開発の背景

現在、マーケターが直面する最大の課題は、「人々がAIチャット(ChatGPT、Geminiなど)で何を検索しているか」の公式データが存在しないことです。
この課題に対し、Ahrefsは自社が保有するGoogleの膨大な検索キーワードインデックス(約280億キーワード)を「人々の検索意図の代理指標(プロキシ)」として活用しています。
データ収集の仕組み

これらのキーワードを毎月1回、各AIプラットフォーム(AI モード、AI Overviews、ChatGPT、Gemini、Perplexityなど)に投入し、「どのキーワードで」「どのブランドが」「どのように」言及されるかをデータベース化しています。
なぜグラフは日次で変わるのか
〜AIレスポンスの更新とグラフ表示について〜
AIチャットボット(ChatGPT、Perplexity、Gemini、Copilot)への質問は月1回のみですが、日次グラフで表示できます。これは以下の仕組みによるものです。
- 例えば、1月15日に質問Aを問い合わせて回答を取得
- この回答はデータベースに永久保存される(履歴として閲覧可能)
- しかし、レポートやグラフの集計対象となるのは90日間(1月15日〜4月15日)
- 4月16日以降、この回答は「メンション ○回」「引用 ○回」などの数値計算には含まれなくなる
- 3月15日のグラフを見ると、過去90日以内(12月16日〜3月15日)に取得されたすべての質問の回答が集計される
- 3これにより、月1回しかデータを取得していなくても、日次で連続したグラフが表示できる
- 毎月、検索トレンドの変化により約50%の質問が入れ替わる
- 取得された質問が3ヶ月間(90日)更新されなければ、その回答は集計対象から外れるが、同じ質問が再度取得されれば、その時点から新たに90日間集計対象となる
同じ質問を90日以内に複数回取得した場合は、最新の1回のみをカウント
この仕組みにより、実際に検索されている最新のキーワードに対するAIの回答のみを分析でき、かつ月1回の取得でも十分なデータ量を維持できます。
ブランドレーダーの主要機能
AI Share of Voice(AI SOV)
AI Share of Voiceは自社と競合他社のインプレッションを比較し、相対的な露出度を百分率で表現することで、競合他社に対する自社のシェアを測定する指標です。
AI SOV = 自社ブランドのインプレッション数 ÷ (自社 + 全競合の総インプレッション数)
「メンション」とは
メンションは、ユーザーの質問(クエリ)またはAIの回答(レスポンス)のテキスト本文内に、エンティティで定義された名前バリエーションが含まれているケースをカウントします。これはプレーンテキストでのマッチングに基づいており、リンクの有無は関係ありません。つまり、メンションはテキストレベルでのブランド言及頻度を測定する指標です。
「引用」とは

引用は、AI回答の末尾や横に表示される「この回答の情報源」として列挙されるソースURLのリスト内に、エンティティで定義されたドメイン(ブランドレーダーの設定で指定)が含まれているケースをカウントします。
これは、AIが「この回答を生成する際に参照した情報源」として明示的に提示する引用元リストを対象としています。ユーザーの質問(クエリ)には引用元リストが存在しないため、実質的にはAI回答(レスポンス)のみが評価対象となります。
つまり、引用はAI回答の根拠として指定ドメインが引用された頻度を測定する指標です。
「インプレッション」とは
インプレッションは、メンション(名前バリエーションのテキスト言及)または引用(ソースURLリストへのドメイン掲載)のいずれか一方、もしくは両方を満たすケースの総数をカウントします。
単一のクエリ/レスポンスペア(1回のやり取り)内で両条件を満たす場合でも1回としてカウントされ、重複は排除されます。これはメンションと引用の単純合計ではなく、重複を除いた総露出回数を示すもので、エンティティの総合的なビジビリティ、つまり何人のユーザーセッションで露出したかを測定する指標です。【重要な発見】AIは自社サイトを直接引用しにくい
セッションで最も注目すべき点として挙げられたのは、「AIは自社サイトのURLを直接引用しにくい」という現実です。
AIが好む引用元は以下の第三者サイトを引用元として好む傾向があります。
- YouTube
- 大手メディア
- ヘルプサイト
AI時代の新戦略
したがって、AI時代のビジビリティ向上には以下のような戦略が求められます。これは多くの企業にとって非常に重要なインサイトです。
- 「AIが好む引用元ドメイン」を特定する
- それらのドメイン上で自社が言及されるよう働きかける
- コンテンツの鮮度を保つ(【1,700万件の引用を分析】AI アシスタントは「鮮度の高い」コンテンツを好むことが判明!)
エンティティ(Entity)の編集
ブランドの「表記揺れ」を1つのエンティティとしてまとめて分析する機能です。
表記揺れの例
- 日本語の「ユニクロ」
- 英語の「UNIQLO」
- カタカナの「エイチレフス」と英語の「Ahrefs」
これらを1つのブランドとしてまとめることで、異なる表記で検索された場合でも、ブランド全体のビジビリティを正確に把握できます。
製品名も追加可能

ブランド名だけでなく、製品名やモデル名も追加できます。
例えば「YONEX」を分析する場合、ラケットの各モデル名も追加することで、ブランド名を含まないAIの回答(製品名のみの言及)も捕捉でき、全体的なビジビリティをより正確に把握できます。
フィルタとトピック分析
強力なフィルタリング機能

「競合は言及されているが、自社は言及されていない」といった特定の条件でAIの回答(レスポンス)を絞り込むことができます。
具体的な使い方
- 上部のクイックフィルターで「自社のみ」「競合のみ」「どちらも含まない」を選択
- 例:トップ競合(Head)が言及されていないが、他の競合(Prince、Wilsonなど)は言及されている回答を抽出
- これにより、競争が少ないトピックや、新規参入の機会を発見
ルールの組み合わせ
複数のルールを組み合わせて、非常に具体的なフィルタリングが可能です。
- 特定のブランドを含む/含まない
- 特定のワードを含む/含まない
- 複数の条件をANDで組み合わせ
トピックレポート
大量のレスポンスを個別に読むのは困難なため、トピックレポートでレスポンスをグルーピングして表示します。意味的に近い質問をまとめて表示することで、全体像を素早く把握できます。現在160トピック程度に分類されていますが、より関連性の高いグルーピングに改善中とのことです。
【ニッチ分析】ブランド名以外での活用

Brand Radarは、ブランド名を入れずにカテゴリ名や製品名だけで分析することも可能です。
【活用例1】ブランド内のサブカテゴリ分析

例えばユニクロの場合、以下の製品カテゴリを入力することで、ブランド内の異なるサブニッチの人気度推移を比較分析できます。
- 「ベビーウェア」
- 「インナー」
- 「ジャケット」
【活用例2】市場全体のトレンド分析
自動車ブランドの場合、以下のようにブランド名なしでこれらを入力すれば、特定の国や世界全体での市場トレンドを把握できます。
- 「マウンテンバイク」
- 「ロードバイク」
- 「カジュアルバイク」
【検索需要】Ahrefs独自の指標
ワークショップでは、Ahrefs独自の指標「検索需要」についても詳しく解説されました。
検索需要とは
検索需要は、キーワードエクスプローラーのデータに基づき、指定したブランド(エンティティ)名を含むクエリの検索ボリュームを集計した指標です。
つまり、一般的なキーワードエクスプローラーの検索ボリュームから、指定したブランドを含む検索に絞り込んだ合計を示します。この指標は、ブランドに対する検索需要(ブランドを含む検索のトレンド)を把握する上で重要です。
重要な注意点
この指標はブランド名が明示的に含まれる指名検索を測定するため、ブランドの検索需要が高いほど数値が高くなります。
これはAI可視性とは異なる概念です。真のAI可視性を測定したい場合は、検索需要を除外し、AIインデックスのみを使用する必要があります。
自然言語でAPIを操作する『MCP Server』
MCP Serverとは

MCP(Model Context Protocol)Serverは、ChatGPTやClaudeといったLLMに対し、自然言語(日本語のプロンプト)で指示を出すだけで、AIが必要なAhrefsのAPIを自動で呼び出し、データ取得・分析・レポート作成までを実行する機能です。
従来、APIの利用には技術的な知識が必要でしたが、MCP Serverにより誰でも簡単にAhrefsのデータを活用できるようになりました。
利用条件
すべてのAhrefs有料プランをご利用中のユーザーがMCP Serverにアクセス可能です。プランが上がるほど、より多くの利用回数が可能になります。
接続方法
Claudeの場合、コネクタがアクティブになっていれば「Ahrefs」のアイコンが表示されます。複数のMCP Server(Ahrefs以外も含む)を接続することも可能です。
【注意点】Geminiは未対応
現時点では、GeminiはMCP Serverのエコシステムに対応していません。対応しているのはClaude、ChatGPTなど一部のAIプラットフォームです。
もし使いたいAIがMCP Serverに対応していない場合は、Ahrefsにフィードバックすることで、優先度の判断材料になります。
MCP Serverの実践活用例
【活用例1】競合リサーチの自動化

プロンプト例
「Ahrefsを使って、競合A、B、Cのトップパフォーミングキーワードとページを分析し、SEO戦略プランを提案して」
結果
- AIがAhrefs APIを自動で呼び出し
- トラフィック、キーワード、ドメインレーティングなどのデータを取得
- 競合ごとの強み・弱みを分析
- 具体的な戦略レポートを生成
【活用例2】従来検索とAI検索の比較

キーワードエクスプローラー(Google検索データ)とブランドレーダー(AI検索データ)の結果をAIに比較させ、「Googleでは強いがAIでは弱い」といったギャップを分析できます。
【活用例3】オーガニック競合の特定

プロンプト例: 「Ahrefsのオーガニック競合を分析して、最も近い5つの競合を見つけて。そして、これらの競合のうち少なくとも2つがGoogle上位10位にランクインしていて、自社がランクインしていないキーワードを教えて」
15の活用例ガイド
AhrefsのGlenn Allsopp氏が15の活用例ガイド「SEO 担当者・デジタルマーケター必見!Ahrefs MCP活用法15選」を作成しており、日本語訳も公開されています。初級から上級まで様々なプロンプト例が紹介されているので、参考にすることをお勧めします。
Claudeとの連携によるデータ分析
ブランドレーダーデータのエクスポート分析

Brand Radarには現時点でセンチメント(感情)分析機能が搭載されていませんが、データをエクスポートしてClaudeで分析する方法が紹介されました。
手順
- Brand RadarからAIレスポンスデータをCSVエクスポート(例:18,000件)
- Claudeにアップロード
- 「このデータを分析して、人々がどのように回答しているか理解させて、センチメント分析をして」とプロンプト
結果
- Claudeがデータを分析
- 人々が求めているトピック(ツール改善、アナリティクス理解など)を抽出
- ポジティブ/ネガティブの分類
プロンプトのコツ
良い分析結果を得るには、具体的で詳細な指示が重要です。シンプルな質問では良い結果が得られません。何度か試行錯誤して、必要な分析を明確に指示することが大切です。
Q&Aハイライト:AI時代の戦略的思考
セッションの最後には、参加者からの質問に対して重要な示唆が共有されました。
Q1. AI Overview(AIO)でトラフィックが減るのでは?
A. AIOが検索結果の最上部に表示されることで、オーガニック検索のトラフィック(クリック)が減少する傾向は事実です。
しかし、Ahrefs自身の事例として、「トラフィックは減少したが、収益(サブスクリプション)は減少していない」ことが明かされました。
AIOによる認知や、他チャネル(ワークショップ参加など)からのコンバージョンが機能している可能性があり、トラフィック減少を過度に恐れる必要はない、という見解が示されました。
Q2. センチメント(感情)分析はできる?
A. 現状、Brand Radarに機能は搭載されていませんが、ロードマップには入っています。
多くのユーザーからリクエストがあり、チームは取り組んでいますが、何かが本当にポジティブかネガティブかを信頼性高く判定するのは非常に難しいプロジェクトとのことです。
現実的な代替案として、Brand RadarからAIの回答データをCSVエクスポートし、外部のLLM(Claude、GPTなど)にアップロードして分析する方法が紹介されました。
Q3. 季節性キーワードはどう扱われる?
A.季節性のあるキーワード(例:「夏用ジャケット」「クリスマスプレゼント」)は、検索トレンドの変動によりSERPが変わるため、質問セットから削除されたり再追加されたりします。
ただし、90日の有効期間があるため、シーズンオフになっても即座にデータから消えるわけではなく、最大90日間は集計対象として残ります。
一方、ビデオゲームのように年間を通じて検索されるキーワードは、継続的にデータが蓄積されるため、季節性を確認しやすくなります。
ただし、Brand Radarのデータは2025年5月以降のみであり、現時点では1年未満のデータしかないため、季節性の分析は限定的です。
Constance Tan氏によるワークショップから得られる重要な知見
ブランドレーダーの価値
- 280億キーワードをAIプラットフォームに投入してデータベース化
- AI Share of Voice:インプレッション(AI検索におけるブランドの抱括的な可視性)を考慮したAI検索のシェア分析
- エンティティ編集:表記揺れ、製品名を含めた包括的な分析
- ニッチ分析:ブランド名なしでカテゴリや市場トレンドを把
重要な戦略的インサイト
- AIは自社サイトを直接引用しにくい - 第三者サイト(YouTube、Reddit等)を好む
- AIが好む引用元ドメインを特定し、そこで言及されるよう働きかける
- 競合が出ていて自社が出ていないクエリを発見し、対策する
MCP Serverの活用
- 自然言語でAhrefs APIを操作 - 技術的知識不要
- 競合分析の自動化、レポート生成
- 15の活用例ガイド(日本語訳あり)で実践的に学べる
- Claudeとの連携でセンチメント分析など高度な分析も可能
AI時代のマーケティング思考
- トラフィック減少を過度に恐れない - コンバージョンは維持可能
- SEOページの量産だけでは不十分
- AIが引用したくなる「話題」や「理由」をクリエイティブに作り出す
イベントレポート
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2025年12月12日(金)【ワークショップレポート】Ahrefsが示すAI検索時代の新戦略『Brand Radar』と『MCP Server』活用術
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