日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS)は、生成AIを活用した医薬品開発・安全性業務向けの2つのAIソリューションの提供を開始しました。
日本TCSが解決を目指す製薬業界の安全管理業務の構造的課題
製薬業界では、文献およびデータ量の増加と各国規制要件の高度化により、安全管理業務の負荷が大幅に増大しています。専門性や正確性、一貫性、トレーサビリティを確保しながら、限られた期間で高品質な文書を作成する必要があり、業務の複雑性が増しました。
ファーマコヴィジランス(PV)領域では、専門人材への依存度が高く、人材不足も深刻化しています。従来の属人的な業務体制では品質のばらつきや業務の偏在が避けられず、業務拡大・負荷増大に耐えられない構造的な課題を抱えてきました。特に日本市場では、日本特有の規制要件への対応や日本語対応が求められることから、海外と同様の仕組みをそのまま適用することが難しく、本邦PV領域における自動化・効率化が進みにくい状況が続いています。
「AIメディカルライティングサービス」の機能と設計
「AIメディカルライティングサービス」は、生成AIを活用し、医薬品開発およびPV領域における各種レポートの一次ドラフト作成を支援するシステムです。対応する文書種別は多様で、再審査申請資料概要、安全性定期報告、治験年次報告などが挙げられます。このほか、DSUR(Development Safety Update Report:治験安全性最新報告)やPBRER(Periodic Benefit-Risk Evaluation Report:定期的ベネフィット・リスク評価報告)なども含まれます。
参照源として用いるのは、ICHガイドライン、CSR(Clinical Study Report)、プロトコル、テンプレートです。あわせて、Safety DB(Database)から出力された安全性情報一覧等のソースドキュメントを基に、規制要件・ガイドラインに沿ったドラフトを自動生成します。
生成したドラフトはWord形式で出力でき、セクション参照整合性チェック機能によるQC(Quality Control)時間の短縮と標準化も実現しました。主な特徴は以下の通りです。
- BPaaS(Business Process as a Service)による一次ドラフト自動生成・QC・修正
- Human-in-the-loop設計によるAIと専門担当者の協働品質担保
- 執筆・QC・校正・レビューまでの一連プロセス効率化
- 安全性報告・医学論文初稿など複数文書種別への対応
システム提供にとどまらず、運用のプランニングや運用フロー提案を含めたトータル支援を実施している点も特徴です。今後は、治療領域および文書種別の拡張を行い、より幅広い医療文書の作成を支援する基盤として、展開が予定されています。
「AI文献スクリーニングサービス」の機能と設計
「AI文献スクリーニングサービス」は、LLMと自然言語処理技術を活用し、医学文献スクリーニング業務を支援するシステムです。PDF文献を解析して有害事象(AE: Adverse Event)、臨床イベント、薬剤使用情報、研究報告候補などを自動抽出・整理します。
これによりPV担当者の業務効率化と品質向上を支援する仕組みです。主な機能は以下の通りです。
- 国内外の医学文献PDFを自動解析し、日本語・英語テキストを抽出
- Event × Drug関連づけによる安全性評価業務の支援
- ICSR(個別症例安全性報告)候補判定支援
- Special Situation(SS)の可能性があるイベントを自動検出
- 研究報告の該当性をAIが評価し、確認対象文献を自動抽出
AIによる網羅的抽出とPV専門担当者によるレビューを組み合わせたハイブリッド運用により、品質向上と高効率の両立を実現しました。AIや自然言語処理、Retrieval技術を活用した文脈解析基盤により、医学文献・添付文書・ガイドライン・安全性情報を横断的に解析し、根拠に基づく文献評価支援を提供します。将来的には、業界横断的かつ標準化された文献評価基盤の実現を目指しています。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社の概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS) |
| グループ | タタコンサルタンシーサービシズ(TCS) |
| デリバリーモデル | 日本企業専用デリバリーモデル(Japan-centric Delivery Model:JDM) |
| 専用センター | 日本企業専用デリバリーセンター(Japan-centric Delivery Center:JDC) |
| プロフェッショナル人材 | 総勢1万人(日本各拠点およびインドJDC) |
| ビジョン | Gateway to Globalization / Catalyst for Technology-led Business Innovation |
| 公式サイト | www.tcs.com/jp-ja/ |
trends編集部の一言
LLMと自然言語処理技術を組み合わせた文献スクリーニング基盤やHuman-in-the-loop設計による品質担保の仕組みは、医薬品開発の現場に限らず注目に値する取り組みです。マーケティング業界の文脈に置き換えると、大量の調査レポートや競合情報を担当者が手作業でスクリーニングする場面は業界横断で共通の課題として語られており、「網羅的な抽出はAIに任せ、最終判断は人が行う」というアーキテクチャには業界を超えた応用可能性があると捉えられます。
日本特有の規制対応を前提にGxP(Good x Practice)対応を前提としたソリューションとして設計されている点は、日本市場での実用性を強く意識した設計です。BPaaS(Business Process as a Service)として運用サポートまで含めたトータル支援を提供する形は、ツール単体の導入で終わりがちな課題に対する一つの解決モデルとして注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「日本TCS、AIを活用した医薬品開発・安全性業務向けソリューションの提供を開始 | 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000141669.html, (参照 26-07-03).
