キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下キヤノンMJ)とグループ会社のキヤノンITソリューションズ株式会社は、農地の画像データや気象・土壌などの環境データをAIで整理・可視化し、日々の作業判断や技術継承を支援する実装検証を開始します。
Bind VisionによるAI実装の背景と概要
農業分野では、人手不足や高齢化が進む中で、作業の属人化や経験・勘に依存した判断が課題となっています。昨年度の実装検証では、映像・画像や環境データの取得・可視化により、遠隔から作物の状況を把握できる仕組みを実現しました。一方で、取得したデータをより幅広い農家や作業者が活用していくためには、データの見方や判断を補助する仕組みが必要であるという点も明らかになっています。
特に、栽培管理や作業のタイミング判断においては、経験差によってデータ活用の度合いに差が生じる場面もありました。本年度はAIを活用し、データから判断のヒントとなる情報を分かりやすく提供します。日々の業務に活かすための示唆や気づきを提示する取り組みを進めます。
Bind VisionへのAI機能実装と検証対象の拡大
本プロジェクトでは、キヤノンITSが提供する画像AI連携プラットフォーム「Bind Vision(バインドビジョン)」に、農家の作業判断を支援するAIを新たに実装します。このAI機能は、取得した画像や環境データに加え、灌水や防除などの栽培管理記録や栽培マニュアルなどをもとに、判断に必要な情報を自然言語による質問で簡単に呼び出せる仕組みです。
農家は、作物の生育状況や環境の変化、過去の栽培管理履歴などを踏まえながら、いま確認すべき状況や注意が必要な変化を把握しやすくなります。熟練者の経験や専門的な知見を補完する形で、現場での作業判断に活かせる仕組みです。また、実装先については、昨年度に実施したバラ・里芋の露地栽培、トマトのハウス水耕栽培に加え、新たにアスパラのハウス土耕栽培を対象としました。これにより、幅広い農業環境において有効性を検証します。
Bind Visionの昨年度実装検証における主な成果
「トライアングルエヒメ2.0」の採択のもと、愛媛県内の2か所の農家と連携し、バラ・里芋の露地栽培およびトマトのハウス栽培を対象に実装検証を実施しました。農地に設置したネットワークカメラや各種センサーから取得した高画質な画像や環境データを「Bind Vision(バインドビジョン)」で一元的に可視化・蓄積し、遠隔地からでも作物や農地の状況を把握できる環境を構築しました。
業務効率化・収量改善の面で、具体的な成果が確認されました。主な実績は以下の通りです。
- 相原バラ園:オーナーの労働時間を3か月で約300時間削減
- 相原バラ園:バラ収量前年同期比114%・歩留まり率9ポイント改善
- 日高農園:里芋収量133%・ミニトマト収量136%(前年同期比)
AXIS製ネットワークカメラを活用した定点映像の蓄積に加え、ウェアラブルカメラによるリアルタイム映像・音声共有により、熟練者が現地に赴かずとも状況判断や技術的な指導が可能となりました。本年度の継続採択プロジェクトには、キヤノンMJグループが提案する「ミライアングル」を含む16件が採択されています。
Bind Vision(バインドビジョン)サービス概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提供元 | キヤノンITソリューションズ株式会社 |
| サービス名 | Bind Vision(バインドビジョン) |
| カテゴリ | 画像AI連携プラットフォーム |
| 実装検証開始時期 | 2026年6月(愛媛県) |
| 採択プロジェクト | トライアングルエヒメ2.0(令和7年度に続き継続採択) |
| 対象作物・栽培形態 | バラ・里芋(露地)、トマト(ハウス水耕)、アスパラ(ハウス土耕) |
| 対応カメラ | AXIS製ネットワークカメラ |
| 採択件数 | 継続採択プロジェクト16件のうちの1件 |
| キヤノンMJ 代表取締役社長 | 足立正親氏 |
| キヤノンITS 代表取締役社長 | 須山寛氏 |
trends編集部の一言
相原バラ園で3か月の労働時間が約300時間削減され、バラ収量が前年同期比114%となった点は、農業分野に限らず注目に値する数字です。マーケティング業界の文脈に置き換えると、「データは取れているのに活用できていない」という状態は業界横断で広く見られてきた課題であり、画像・環境データと過去の作業記録をAIが整理して判断の目安を提示するアプローチは、業種を超えた実務示唆を含む取り組みと捉えられます。
生成AIの活用において、「データはあるが活用できる人が限られる」という課題は業界横断で共通しています。自然言語で質問するだけで判断に必要な情報を呼び出せる設計は、マーケティング業界においても「ダッシュボードはあるが読み解けるのは一部のメンバーだけ」というダッシュボード活用の属人化が共通課題として見られており、同種の構造的問題への応答として業界の動向としても示唆を含んでいます。愛媛県での横展開を通じてサービスの精度がさらに高まれば、農業DX領域におけるAI活用事例として今後の展開が注目されます。
References
- ^ PR TIMES. 「画像・環境データを活用したAIによる農作業判断支援サービスの実装検証を開始 | キヤノンマーケティングジャパン株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001417.000013943.html, (参照 26-05-22).
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