太陽生命保険株式会社は、日本アイ・ビー・エム株式会社と共同で、生成AIを活用した給付金支払査定システムを開発しました。
太陽生命の給付金支払査定業務を自動化・高度化する仕組みの全体像
保険金・給付金の支払いにあたっては、診断書などの請求情報をもとに、契約内容と照らし合わせて支払額を決定する「査定」が行われます。太陽生命では年間約50万件の請求を受け付けており、正確な支払いを期すため複数の担当者による確認を実施してきました。今回のプロジェクトでは、実際に査定業務を担当する職員が主体となり、約720の査定ルールを洗い出したうえで自動化・高度化に向けた施策を検討しました。
太陽生命の業務知見と日本IBMの先端技術を組み合わせることで、査定品質の向上と業務効率化を同時に実現する構造です。判断根拠の透明性や説明可能性を確保できる点も、本システムの特徴として挙げられます。
給付金支払査定システムにおけるルールエンジンと生成AIの使い分け
新システムでは、業務の性質に応じて2つの技術を使い分けます。ルールエンジン(IBM Operational Decision Manager)は、不備点検や定型的な査定判断など明確な基準で判断できる業務に適用され、事前に定義した査定ルールに基づいて一貫した基準で自動判定し、判断根拠も記録する仕組みです。生成AI(IBM watsonx)は、診断書の自由記述の理解や文章間の整合性確認といった非定型業務に活用され、担当者の判断を支援します。
なお、最終的な支払可否は査定担当者が確認・決定する運用です。自動化の対象は定型的な判断業務に絞った設計となっています。
期待される効果は、以下の通りです。
- 約60名の査定担当者の業務時間を従来比4割程度削減
- 担当者がお客様対応などより付加価値の高い業務に注力できる環境の実現
- 給付金等の支払いにおける確実性および迅速性の向上
太陽生命 取締役常務執行役員 DX戦略本部長 中村 修一氏は、「実際に査定業務を担当する職員が主体となり、約720の業務ルールを可視化したうえで、現場目線で徹底的に分析した結果、『AIと人との融合』というシステム構想が生まれた」と述べています。年間約50万件の査定業務のうち、まず比較的定型的な判断業務を自動化し、限られた人的リソースをよりお客様対応や高度な判断が求められる業務へ集中させる狙いです。
太陽生命の給付金支払査定システムの概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 開発主体 | 太陽生命保険株式会社(プロジェクト統括)・日本アイ・ビー・エム株式会社(技術提供) |
| 対象業務 | 給付金支払査定業務 |
| 対象件数 | 年間約50万件 |
| 査定ルール数 | 約720 |
| 導入技術(ルールエンジン) | IBM Operational Decision Manager |
| 導入技術(生成AI) | IBM watsonx |
| 期待効果 | 査定担当者の業務時間を従来比4割程度削減 |
| 対象担当者数 | 約60名 |
| 運用開始予定 | 2027年1月より順次 |
| グループ | T&D保険グループ |
trends編集部の一言
年間約50万件という規模の査定業務を対象に、約720の業務ルールをすべて可視化したうえで自動化の設計に臨んだ点は、保険業界全体としても類を見ない取り組みとして注目されています。保険業界の文脈に置き換えると、査定業務のルール可視化とAI活用を両立させる動きは、業界横断的にも関心が高まっているテーマです。
ルールエンジンの透明性・説明可能性と生成AIの文脈処理能力を組み合わせるハイブリッドなアプローチは、AI導入時に説明可能性を重視する動きとして業界全体でも広がりつつあります。査定担当者の業務時間を従来比4割程度削減しながら、最終判断は人が担う構造は、現場の納得感を得やすい設計として業界の動向としても注目される取り組みです。
References
- ^ PR TIMES. 「太陽生命、給付金支払査定業務に生成AIを本格導入 | 日本アイ・ビー・エム株式会社のプレスリリース」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000716.000046783.html, (参照 26-05-22).
